彼女の地からは遥か彼方で




「これ、ありがと」

「あああいえいえっ!!」

トウヤさんからライブキャスターを受けとる。片手でほい、と効果音が付き添うなくらいかるーく返しているが、あのトウヤさんがここにいるというだけでもうどっきどきで緊張しまくりである。

震える手でうけとってこっそりと感動に浸る。このライブキャスター、もう洗わない、なんて洗ったらぶっ壊れるからそんなことするわけないんだけど、そういうことさえもなにも考えられないくらい頭のなかは感動と歓喜と喜びにみちみち溢れまくっているのだ。

「…なにさ。僕の顔に何かついてでもいるの?」

「……はっ何もないです!!」

気がつかないうちにずっとトウヤさんに熱烈な視線を送ってしまっていたらしい。少し顔を歪めていたトウヤさんはそう、と困ったようにふっとわらった。それと同時に後からあらかっこいいとメイの呟きが聞こえてくる。だまらっしゃい面食いメイめ。


少し会話が止まってしまったので会話になるネタを頭の箪笥からぽいぽいと引っ張りだしなげていく。しばらく考えたあとこれならいいかも、と質問をかけてみる。内容はパスカさんとは仲がいいんですか、だ。うん。自分でも結構馬鹿な部類だと自覚しているが我ながらたいぶまともな物をもってこれた。これはお昼はごほうびにポケセンでポーケンダッツ買えるレベルだ。よくやった、自分。

トウヤさんはこの質問に、ああ、パスカ姉さんがイッシュに来たときからの付き合いだからね、とさらりといってのけた。パスカさんがどれくらい前にイッシュに来たのかは知らないが言い方的にたいぶ古くからの付き合いなのだろう。さらにトウヤさんはパスカ姉さんに小さい頃に勉強みて貰ったこともけっこうあったし、仲はいいんじゃないかな、と続けた。これは、なんだかとても仲がよいようだ。いいこと聞いた。これはあとでヒュウたちと話をするときに持っていかなければ!

「…今度はなに?」

「あばばいえいえ!!!なんでもないです!!!!」

「……そ」

またもや熱烈な視線を送ってしまっていたらしい。何かあるわけでもないので必死に謝っておく。なんだか自分には無意識だがストーカーの素質があるのかもしれない。なんか危ない人じゃないかと思い両頬を叩いておいた。ちょっと強くやり過ぎてヒリヒリする頬を擦っているとトウヤさんは変な顔をしながらも大丈夫?と声をかけてくれた。うん、やっぱりメイうるさい。そんな腐女子みたいな言葉を連呼しながらこちらを向かないで。

「…?じゃあ僕そろそろ行くね」

「はっはい!!!!どうもありがとうございました!!!!」

「とってもお腹一杯ですっ!!!!!!」

「…いやあの、僕何もしてないし何も食べ物あげてないから」

「どうもありがとうございました!!!!」

「美味しかったです!!!!!!」

「……うん、そう。バイバイまた縁があったら」

トウヤさんはそう言い残すと絶対あの子達話聞いてないよとぶつぶついいながらこちらに背を向け歩いていった。後ろ姿を見つめながら何処からともなく取り出したカメラでそれを連写しまくるメイに早くいこうと声をかけ、ポケモンセンターを目指してあるく。

トウヤさんとも、パスカさんとも、なんだか意外なところで縁があるみたいだ。てか意外と運が良いのかもしれない。もしかしたらこのままいったら生きる伝説やボンジュールさんや謎のカントーのぼんきゅぼんの美人さんにも会うことが出来るかもしれない。そう考えるとなんだか元から大きかった旅への意欲がもっと肥大化したように感じられた。やっぱり、旅は素晴らしい!
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