懐かしきは正義である


「へいへいレッドくんハナダでっせ!」

「うんパスカキャラが定まってないよ」

「突っ込むなやい」


お月見山をぬけ、眩しい光とともに視界いっぱいに広がったのはハナダシティだった。お月見山で長らくピッピ探すぜと意気込んで中で屯っていたので、お日様の光が目に痛い。

「…そういえばパスカ、ハイタッチは?」

「あ、忘れてた。よしやるか」

うぇーい、と右手をあげればレッドくんも乗ってくれ、しっかりとハイタッチとグーでこつんとやる。恒例にするとかいってたのに忘れそうになるなんて危ない危ない。心なしか腰のジュペッタのボールも頭の心配をしているような気がする。うん、これは考えすぎか。



前回のジムがあったニビでの経験を生かし、なんだかんだ考えながらもポケモンセンターへと足を進める。吹いてくる風は潮風でベタベタするが諦めるしか方法はない。

「あ、そういえば」

「?」

「ハナダは水タイプのジムなんだっけ」

「うん。ジムリーダーが水着きてでてくるよ」

「…突っ込みどころがありすぎるが、さぞかしスタイルのいい女の子なんだろうね」

ジムリーダーが水着着て出てくるなんてすごいジムだなハナダジム。それでいいのか。でもまあ旅に疲れた親父たちの目の保養になるのだろうな。てか水着って何きてるの?ビキニ?まさかスク水はないだろうなおい。だったらマニアックすぎるだろう。

「パスカ、水着の話はもういいから。ついたよ」

「あ、本当だ。」

一人で水着談義をしていればいつのまにかポケモンセンターに着いていたらしい。まさか気づいてなかったのとでも言うような目線を向けてきたレッドくんにごめんごめんと軽く謝り、自動ドアを通る。

「ジョーイさん、ジムの予約お願いしまーす」

「はい。かしこまりました。何日後をご所望ですか?」

特に急ぐこともないけど、折角レッドくんに付き合ってもらってるんだから早く出来ることに越したことはない。なんだかんだでモンスターボールの中の皆様もやるき満々で地味に小刻みに揺れているみたいだし。

「んー、なるべく早くでお願いします」

「そうなりますと…丁度明日ジムリーダーがカントーに戻ってくるそうなので明日の夕方なら大丈夫ですよ」

「じゃあそれでお願いします」

「ご予約受け付けました。では、明日の17時にジムのほうまでお越しください」

「あ、部屋の予約はできますか?」

少々お待ちください、と急いで予約帳を確認するジョーイさん。なんだかジムの予約を頼んだばかりなのに宿の予約を確認してもらうだなんて迷惑な客に成り上がっている私。うわはやジョーイさん申し訳ないでも嫌な顔せず対応してくれるジョーイさん素敵です。

「一部屋なら空いていますよ。お二人様のようなのでもう一人のかたは相部屋となってしまいますが…」

「あ、じゃあそれで」

「かしこまりました。では、こちらがお部屋の鍵になります。相部屋のほうはどちらになさいますか?」

「あー、どうするレッドくん」

そう投げ掛け後ろをみればんーと何やら悩んでるご様子のレッドくん。なんだかんだでボールに入らないのが日常なピカチュウはその上で呑気に欠伸をしていた。

「じゃあ僕でいいよ」

「え、本当に?」

てっきりレッドくんのことだから一人の部屋がいいのかと思った。なんかあるの、と問えば女の子に性別も分からないのに相部屋押し付けるだなんて真似出来ないから、とさらりと真顔でいわれてしまった。

なんだか申し訳ない気持ちもあったが折角なので譲ってもらうことにし、レッドくんが相部屋、私が一人部屋になった。相部屋のほうの人に電話をし終わったジョーイさんから鍵を受取り、それぞれの部屋へ向かう。私が109、レッドくんが102のところをみると少し離れていうようだ。


「…ここだ」

レッドくんが呟き扉をふとみれば102の文字。レッドくんの部屋に着いたようだ。じゃあまたあとでね、と言葉をかけ、そのまま一人で進む。なんだか嫌な予感がする、と別れ際に呟いていたレッドくんだったが大丈夫だろうか。

少し歩けば109の数字が見えた。やはり近かったらしい。ジョーイさんから渡された鍵を鍵穴に差し込み中に入る。いつ来てもやっぱりポケモンセンターの部屋はしっかりと掃除されていてぴかぴかの効果音がつきそうだ。さすがジョーイさんお嫁に来てください。



「よっ、と」

窮屈そうだったのでジュペッタとユキメノコをモンスターボールから出してやる。シャンデラは流石に頭の火が危ないので出してやれないが。部屋にでた二匹はやはりそうだったのか二人で追いかけっこをして広い空間を楽しんでいるようだ。うん、楽しそうでなにより。


一息着いたところでお茶でも飲もうと立ち上がろうとしたとき、腰のポシェットが揺れた。中を確認すればイッシュから持ってきたはいいもののカントーでは使いどころのなかった旧式ライブキャスター様だった。

「…キョウヘイくん?」

どうやらキョウヘイくんからの着信のようだ。キョウヘイくんといえばイッシュを旅し始めたばかりの子だったはず。たしかメイちゃんと一緒にいた気がする。ボタンを押せば、うわっメイ、ほんとにできたよ!!なんていう声が聞こえてきた。

「…あのーもしもし?」

[あ、パスカさんですよね!!そうですよね!!]

「あ、うん。そうだけど」

てかそりゃ私にかけてきてるのだから私以外のやつがでたら色々とまずいだろう。てか何故にそんなにハイテンション。

「で、どうかしたの?」

[あのですね!!あのトウヤさんとトウコさんにあったんですよ!!すごくありません!?]

「あーすごいすごいね。うん。とってもすごいや!」

[ですよね!!で、その二人にパスカさんに電話してみたら?って言われたんですよ!!]

だから話せたことに嬉しくて!と矢継ぎ早に次の言葉を繋げるキョウヘイくん。なんだか奥でメイちゃんがまったくもうキョウヘイったらなんていってるのが聞こえてきそうだ。

「だから私に電話してみたー、と」

[はい!!それだけなんですけどね!!じゃあきります…え、ちょっ…!]

なんだかライブキャスター様からキョウヘイくん以外の声がした。言ってる言葉はいいからかして。どゆことですかキョウヘイくんの感じから想像すれば完全にライブキャスターぱくったよねおい。

[あーあーパスカ姉さん聞こえる?]

「…バリバリ聞こえてるよトウヤくんや」

やはりこんな強引なことをするのはさっきの会話的にも行動的にもジャイアン度てきにもこいつしかいなかった。ライブキャスターぱくられたキョウヘイくんよ可哀想に

「んで、どうしたの?」

[いやあカントーに旅立っていった全然連絡もよこさないパスカ姉さんは元気かなぁとおもって]

「たかがそれだけのために偶然私を知っていたキョウヘイくんにふっかけて電話させるようにいったのか。」

それ、知っていたから良かったものの、しらなかったらキョウヘイくん大迷惑被ってたでしょう、といえばあはは、ごめんごめんと誠意のない声で謝られた。うん、はなから期待はしていなかったよ。

[まあ正確には繋がるか分かんなかったからかけさせたっていうのも入るんだけどね]

「うわあ酷い。試したのかいな」

[そゆこと]

それぐらい自分で確かめればいいのに、なんていう言葉は胸にしまっておこう。なんかいったら論破されそうで怖い。

「とりあえず現状報告、元気。以上。」

[うわ短っひどっ]

「これも愛情だよ。うん。じゃあちゃんとキョウヘイくんに返しなよー」

じゃあね、と相手に口を挟む隙を与えずに通信を切る。報告もしたし、なによりさっさとキョウヘイくんにライブキャスターを返してあげるべきだと判断したからだ。


ふう、と息を吐けば会話中も遊びまわっていた二匹は動きを止めた。どうやら私が疲れていると勘違いしたらしい。大丈夫?とでもいうように二匹は私のまわりまできて、ジュペッタに至ってはそのまま膝の上まで乗ってきた。なんだか可愛かったので頭を軽く撫でておいた。
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