空間に響く落石音が抉る
「イシツブテ!たいあたりだ!!」
「左に避けて!!」
両者とも雄叫びをあげ威嚇して数秒。始めに動いたのはタケシのイシツブテだった。その小柄ながらも岩のようにごつごつとした体を一直線にシャンデラにぶつけようと突進してきた。それを左に避けたシャンデラはバックステップのようなことをしてこちらに戻ってきた。
「やはり肝の座っているお嬢さんのようだ。」
「えっやはりってどゆことですか…っと」
「それはあいつが連れてきた子だからな。何となく察していた」
「それはありがとうございます」
わーい誉められたーなんて馬鹿言っている暇もなく、話している間も攻撃を仕掛けてくるイシツブテを避けるのに必死だった。岩を飛ばして来ようものなら全力で避けないと致命傷になる危険も合ったので此方とも気を抜けない状況だ。
しかし、ずっと防戦一方で同じような指示を出していると集中力も切れるものである。段々その指示でさえも億劫になってきてこれでは駄目だと思い両の手のひらで気合いをいれるため頬をバチンと叩いてみた。
「…よしっ!シャンデラ、上に上がって!!」
そう指示をたせば任せたと言わんばかりに上に上がるシャンデラ。一方でジムリーダーの方は意図がよく分かってないらしくこいつ馬鹿じゃねえの目線を浴びせてくる。ちなみにレッドくんはこいつもう適当だろといった哀れみの視線を送ってきやがった。くそう、どいつもこいつも。
「そっからでっかい岩に向かってシャドーボール!!」
「……!?イシツブテ!下がれ!!」
ジムリーダーの指示はシャンデラのスピードを下回り、イシツブテには砕けた岩がクリーンヒットする結果となった。
そこから指示を飛ばし、シャンデラをイシツブテの後ろに回り込ませる。イシツブテに岩の攻撃がきくとは思わない。むしろ思っちゃいない。多少の目眩まし、というやつだ。
「シャンデラ!!イシツブテに向かって逃げられないように四方にエナジーボール!!」
「っ!!!!イシツブテ!!!!」
土煙と細かい岩が飛び散る。衝撃の大きさを物語っていたそれは2、3秒すれば辺りに散らばっていった。
そうして視界が開けたとき、目にはいったのは目をぐるぐると回すイシツブテだった。
「……イシツブテ、戦闘不能」
「…あのイシツブテが一撃で、だと…」
「やったね!シャンデラ!!家族はふえないけど!!」
「……っイワーク!!頼んだぞ!!」
「シャンデラ!連戦よろしく!!」
二人の声に呼応するようにポケモンたちが叫ぶ。たしかこの前聞いた話だと持ちポケモンは二匹だから…あと一匹。つまりこのイワークのみだ。
そういえばシャンデラが以外に強くて驚いた。ポケルスすげえなおい。あれならばあんなに最初避けなくても大丈夫だったかも。まあシャンデラが怪我をしないっていう保証はないからそれで良かったのだが。
「イワーク!!いわおとし!!」
「シャンデラ!!まもる!!」
「…やはり強いな!いやなおとだ!!」
「ちいさくなるで避けて!!そのまま後退!!」
回避率が上がったことにより今までよりも素早く動けるようになっていたシャンデラはイシツブテの攻撃を軽々と避けた。そしてその身軽さで後ろに飛び退くと私の近くまで戻ってきた。
「シャンデラ!エナジーボールを相手の足元に!!」
「下がれ!!イワーク!!」
土煙の中、指示に従いイワークは後ろに下がる。別に当たらなくてもよかったので避けられたのは気にしない。
「シャンデラ!あやしいひかり!!」
「なっ!?避けてにほんばれ!!」
混乱状態に陥ったイシツブテはなす術もなく、日の光を浴びている。
その間にシャンデラは日の光を身体に溜めていた。意図が分かっているレッドくんはニヤリと笑い、なんとなく分かったタケシはイワークの混乱をどうにかしようと必死で、決まる。
「ソーラービーム!!!!!!」
翡翠の閃光が目の前を横切った。
―――――――
―――――
―――
―
「おめでとう。これがグレーバッチだ」
「あっありがとうございます」
「……」
「しかし驚いた。この俺のポケモンたちが守る暇もなくやられるとは。…本当に君は強いな」
「不意をつく、結構卑怯な技ですからねぇ…。」
「これが初めてのジム戦と聞いたが」
「はい、一応。どうでしたか?」
「初めてなのに隙がない。立派な戦いかただった」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
結果、私の勝利に終わったジム戦。シャンデラも特に怪我もなく、自分ながらに良くできた試合であったと思う。
とりあえず、貰ったグレーバッチをバッグに付けておく。なんかバッグ可愛くなったかしら。
でもタケシさんには誉められたが、レッドくんにはお小言言われそうだなぁ。こう、なんで最初避けてたのかとか、もうちょっと技をうまく使えよとかエトセトラエトセトラ。
「とりあえず…バッチゲットだぜ!!」
初戦、無事終了致しました!!