愉快に軽く、日常に


「…ってことでニビに到着っ!」


ほんの数分の楽しい空中散歩を終え、たどり着いたのは鈍は灰色岩の色なニビシティだった。

へいへいレッドくん、さっきしたばっかりだけどハイタッチやろうぜと意気揚々と右手を上げれば、レッドくんも右手を上げて軽快な音を鳴らしてくれた。きちんとグーでのごっつんこも忘れずに。よし、これからの恒例にしようか。そうしよう。




「で、ここはジムに行っていいんだよね?」

先ほどのトキワのジムは行けなかったため、ちょっとの期待を込めて私がそう聞けば、レッドくんは軽く頷き肯定を示したが、けど今日はジム戦は出来ないと思うと続けた。…よく分からん。

レッドくんに何故かと理由を問えば、暫くジムリーダーはPWTのためイッシュに行っているという。ああ懐かしや、PWT。確かに彼処では今ワールドトーナメントをしているはず。それではジムリーダーは不在のはずだ。

ではどうやってジム戦をすればいいのか、妙案も浮かばず頭を悩ませているとレッドくんはじゃあポケモンセンターに行くよ、と言い私の手を掴んでそちらの方向へ足を進めた。


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「パスカ様、ですね。ご予約承りました。では明後日の10時にジムの方までお越し下さい。」

「あっ、はい。」

結構強引に連れてこられ、どうなるのかと思ったが何故だか手慣れている様子のレッドくんのおかげで比較的早くジム戦の予約を終えることが出来た。何はともあれ、明後日にはジムに挑戦できる。とりあえず一安心だ。

レッドくんの用事も済んだしどうせなら宿もとってしまおうという案のもと私たちは同時に宿の方の予約も済ませた。今日は部屋にも空きがあったらしいので勿論二部屋で。

でもジム戦に予約が必要だったなんて盲点だった。教えてくれたレッドくんにはまずは感謝を捧げよう。でもポケモンセンターに着く前に説明してくれるとありがたかったなぁ。なんだかジョーイさんを通じて予約が完了する直前まで状況が理解できず、終止おろおろしていた気がする。まあ結果よければ全て良しってことなんだろうけど。



とりあえず昼食が二人してまだだったため、ポケモンセンター内で昼食をとる。ちなみに私は普通のミートスパゲッティ、レッドくんはピカチュウ型の卵に包まれほっぺのところにケチャップがかけられている可愛らしいオムライスを注文した。

少し言うとそのレッドくんが頼んだオムライスは小さい子を対象とするお子さまセットのようなものだ。別に文句があるわけではないが…うん。本人が嬉しそうなので何も言わないことにしておこう。

「…で、何か対策は考えてあるの」

「えっ?なんのこと?」

「…ジム。岩タイプの対策のこと」

「あぁ。それかぁ」

大きな口を開けて美味しそうにピカチュウオムライスを頬張っていたレッドくんにいきなり振られたもんだから少々驚いてしまった。

でも対策かぁ。具体的なものは何も考えていなかった。うーむ、どうしたもんか。タイプ的にいえばシャンデラは弱点を突かれてしまうしユキメノコも同様だ。ジュペッタではサポートがメインなので攻撃力には欠けるしなぁ。…ここはやっぱり

「…ごり押し、かな?」

「…ふーん」

反応が薄かったかったため、思ったような返答ではなかったのかと少し心配になったが、続いた面白そうじゃん、という言葉によりその思考は中断された。

面白そう、か。理由はよく分からないが別に悪くない戦法ってことなのかな。よかったよかった。実を言うと私はあまりタイプ相性を気にしないタイプなのだ。別に普通にタイプを気にして対策練ったりできるし、私の戦い方はいつも力押しってって訳でもないけどね。

「でも、レッドくんならタイプ相性とか気にしてると思った」

「…僕、力で攻めるの嫌いじゃないから」

おおお。実にかっこいいお言葉を頂戴いたした。なんだか貫禄がある気がするぞこれ。むしろこのお言葉があればPWTも優勝できちゃうくらいの気分になれるぞ。魔法の言葉だ魔法の言葉。さぁ皆の者、このごり押しのレッド坊やを崇め奉れ!今なら特別にレッド坊やが飛び跳ねるたびに効果音であるぽぽぽぽーんの音がついてくるぞ!


…なーんて一人で恥ずかしいことを考えている私とは違ってレッドくんはもう食べ終わったらしくジョーイさんにピカチュウオムライスのおかわりを頼んでいた。やっぱり男の子って食べるのが早いなぁ。私も見習わなければ。

とりあえず、このミートスパゲッティを完食しなければと思い3分の1ほど残っていたそれの皿を左手で持ち、右手に持ったフォークで勢いよくかき込んだ。それのせいで咽、レッドくんからおそらくなにやってるの?という意味が込められているであろう少し冷たい視線をいただいたのはきっとご愛嬌である。
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