思い出すのは、君の


いつの間にか、居眠りをしまっていたらしい。近くにあったベンチに腰を掛け、迎えを待っている間だったのでよかったが、立ちっぱてあったら危うく地面とこんにちはをしているところだった。危ない危ない。

そういえば、どれくらい寝てしまったのだろうか、と近くにあった時計で確認してみればまだ五分ほどしかたっていなかった。辺りを見回してみるが目立った人影はとくになかったので一安心だ。



思わず出る欠伸をかみ殺し、座ったままで空を見上げる。程よく肌を掠める風が非常に心地よい。膝の上に乗せたままのジュペッタも、心なしか気持ち良さそうだ。

見上げた空はとても透き通っていて、見つめていれば吸い込まれてしまいそうなほどであった。暫く見つめていれば、ゆったりとした眠けに襲われた。あぁ、眠い。その欲に逆らう気力もなくその波に従い、ゆっくりと重くなった瞼をおろす。

こりゃお迎えの人にあったら謝らなければなぁと思いながら静かに眠りへの道を歩み始めたとき、私の顔面を照らしていたあたたかな陽射しはどこへやら。完全に陽射しが無くなり、日陰と化してしまった。

私の安眠を妨げる奴は何処のどいつだ、と怨みを込めて瞼をあげる。その視線の先にいたのは赤色の帽子が特徴的な、見知らぬ男の子だった。


「…あの、どなたですか?」

「……パスカ、だよね」

「いや、あの、どなたですか?」

「……」

えー、黙りですかいな。てか、この人が私の迎えの人なのかなぁ。だったらこの状態で話すのは凄く失礼なことじゃないか。そう思い、力なく後ろに垂れさせていた頭を上げ、ベンチを立とうとする。




その瞬間だった。

ベンチから腰を浮かせ、黙りな彼から視線を外した瞬間、後ろからぎゅっと自らの腹に腕が回ったのだ。それの反動で、少し後ろに身体がそれた。

「…え、あの、どうかしました?」

「……」

あれ、なんで私見知らぬ人に後ろからぎゅってされてるんだろう。しかも無言だし、なんか怖、と現状把握にいろいろと戸惑っていると、腹に回っている腕に力がこもった。背中にとん、と額をのせられる。そこから伝わってくる温もりがなにか懐かしかった。


…どこかで、感じたことがある。だから懐かましのだ。何処だろう、何処なのだろう。もしかしたら、私はこの人に会ったことがあるかもしれない。いや、会ったことがあるはずだ。

思い出せ、思い出せ。そう、あれはきっとイッシュに行く前のことのはずだ。ということは必然的にカントーで会ったことになる。でも私がカントーにいた頃の行動範囲なんてたかが知れている。



では、いったい何処だろう。お手伝いをやっていた期間は、仕事をした後にさっさとおじいちゃんのもとに帰って羊羮食べてたし、寄り道なんてするわけがない。

…そうなると可能性は1つ。あの、病院だ。あの病院で、会っているはずた。でも、彼の記憶なんて欠片一つも思い出せない。それでも、思い出さなければ。あぁ、思い出すだけで包帯のしたの古傷が熱と共に痛み出す。ずきずきと痛みに歪んだ顔を察したのか、腕を回す彼はゆっくりでいいよ、と少し腕の力を緩めてくれた。


そうだ、あのときもそうだった。あいつが恐くてしかたなかったあのとき、ずっと温もりをくれた人がいたんだ。もしかしたら、彼は彼のときの男の子なのかもしれない。思えば赤を基調とする服も、少し無口なところも似ている。


たしかあのときの男の子の名前は…、



「…マサラタウンの、レッドくん」

「……あたり。おかえり、パスカ」

随分美人になったね、と腹に回していた腕を片方とり、その手を頭に乗せて軽く撫でる。どうやら急に爆弾発言をする彼は健在のようだ。

一頻りなで終わると満足したのか、レッドくんは両腕を私の身体から離した。身体の拘束が解放されたのを確認してから、レッドくんに向き合う。


「ねぇレッドくん。」

「……?」

「迎え、ありがとね」

「……どういたしまして」



じゃあ、研究所までいこっか!と私はレッドくんの手をとり、研究所までの道を歩きだした。短い道のりだが、その道中はたわいもない世間話で盛り上がった。レッドくんの笑った顔は、世の中の女の子一人残らず落とせちゃうんだろうなぁってぐらい、綺麗なものだった。



―――いつの間にか、あの熱と痛みは消えていた。









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