旅立ちを羨む、私。




「あ!パスカちゃん!もうお仕事終わっちゃった!!」

てへぺろ、と言わんばかりの声でそういい放ったベルちゃん。
…え、ここまで来てすることないとか。
マジで?と聞けばまじだよーと可愛らしく現実が返ってきてしまった。
…あれ?これは仕事を押し付けたことに…

「ってうわぁ!!ごめんねベルちゃん!!」

「ううん、大丈夫だよ!」

「ほんっとうにごめんね!!何かすること、残ってたりしない!?」

「んー、じゃあお願いしてもいい?」

「本当!?ありがとう!!」

気を使ってくれたのか、残っていた仕事をくれたベルちゃん。
ありがとう!君は私の神様だ!!

そんな彼女が私にはいっ!と元気よく渡してきたものは…

「トレーナーカード?」

「うん。さっきポカブを貰っていった男の子が落としちゃったみたい」

「で、これをその子に届ければいいと」

「そうなの!」

まだヒオウギにいるはずだからよろしくね!私はここで待ってるから!と言った声を聞き、分かったと返事をして見晴台をおりる。


「とりあえずっと…」

やっぱりポケセンかな、向かおうとすると何処からか若い男女の声が聞こえてきた。とても元気なその声。耳を澄ましてみると、ジムのほうから聞こえてきた。…まさか。ポケモン貰ったばっかりでジムにいくなんて・・・、ねぇ?

…一応、ジムのほうに向かってみる。
幸いにも私がいるところからは意外と近かった。

小鳥の囀りが聴こえる。足はだんだんと遅くなっていく。とても気持ちのいい春だ。旅をするのにもってこいの季節。旅なんて私はしたことがないからどれぐらい大変か分からないけどきっとそれよりも楽しさが勝るのだろう。

私も旅はいつかはしてみたい。信じあえるこの子達と一緒に、自分の足で。私はジムに一度も挑戦したことがないからちょっと不安だけれども、一度だけでいいからしてみたい。

これから旅をする子たちはどんな子たちなのだろう。きっと幼くまだあどけない顔の子たちなんだろうなぁ。

そんな想像をして歩いているとジムが見えてきた。まあ、どうせいないんだろうけど。そんな期待もむなしく、ジムの前には若い少年少女がいた。貰ったばかりと思われる、小さなポケモンを抱いて。

「すっっげぇぇぇえ!!!!メイ!!ジムだって!!」

「…そうだね、キョウヘイ」

女の子は若干ひいて見えるような気がするのは気のせいなのだろうか。そして少年。迷惑を考えよう。元気なのはいいことだが。

「君たちがさっきポケモンを貰った子達?」

「あ、はい!!」

「私はベルちゃんと同じアララギ博士の助手です」

はいこれ、こいいベルちゃんから預かったトレーナーカードを渡す。男の子は目をぱちくりさせると何かを察し、バックのなかを漁り始めた。

「あ…落としちゃってたんだ」

「もうキョウヘイったら!」

ちゃんとお礼言わなきゃ!!とせかされ、キョウヘイと呼ばれた男の子はお礼を述べた。私が見つけた訳じゃないからベルちゃんに言ってねと言えば、分かりました!とこれまた元気はつらつで言ってくれた。

こんなに元気な子達を見ていると何だか自分が歳をとった気がする。まあ実際に私のほうが歳をとっているのだが。なんてこんなことを考えていると自分がババくさく感じられた。

「じゃあ今度からは気を付けてね」

「はい!」

「あ、ライブキャスターの番号って教えてもらえます?」

「別にいいよ」

ポシェットからメモ帳を取りだし、ライブキャスターの番号を書く。そうして一枚破ると、メイと呼ばれていた女の子のほうに渡す。そうするとメイちゃんはとても喜んでくれた。俺も欲しいなんていい始めたキョウヘイくんは後で送ってあげるから!とメイちゃんに言われていた。

「じゃあそろそろいくね」

「ありがとうございましたっ!!これからは気を付けるようにします!!」

「キョウヘイがお世話になりました!こんど電話しますね!!」

彼らに手を小さく振り、その場を後にする。

彼らはあの目で、この世界を見るのだろう。そしてそれから、沢山のことを学ぶのだろう。彼らはきっと、強くなる。それを羨ましく思う自分がいた。

仕事が済んだため、ベルちゃんがいる見晴台へ戻る。先程歩いた道はやけに長く感じられた。

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「ありがとねパスカちゃん!!」

「いやいや、もとから仕事を押し付けちゃった私が悪かったしね」

それでも!とかたくなにいい続けるベルちゃんにじゃあ、どういたしまして。と非常に 不本意ながら言った。そうするとニコニコ笑顔に変わったベルちゃん。ま、いって良かったかもなんて思ってしまった。

「あ、そうだ!!」

「どうかしたの?」

「パスカちゃん。これ、一緒に行かない?」

ベルちゃんがそういって取り出したものは遊園地のチケットだった。遊園地かぁ…。まだイッシュにきた頃は建設中で行けなかったんだよね。その後、ずっと手伝いと助手やって来たから行く機会もなかったし。

もしかしてアララギ博士が言っていたプレゼントってこれかな?…まあベルちゃんと遊園地に行くなんて夢のようなお誘いなのでOKする。

「ほんと!?…よかった!じゃあ今から行こっか!! 」

「あ、今日だったんだ」

「何か用事あった?」

「ううん、大丈夫!早く行こっか!」

アララギ博士が楽しんできてね、と言った訳はこのことだったのか。アララギ博士、ありがとうございます。あとでお礼にコーヒーかなんか淹れますから。そんなことを考えている時間も惜しくなり、私は急いでベルちゃんとライモンへ向かうことにした。
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