予想の当たりは期待の外れ




「あっ!パスカ!!ちょうどいいところに!!」

「…へ?」


いつもの観測を終えて、お茶を入れようとキッチンに立った瞬間、アララギ博士にその言葉をかけられた。

…アララギ博士がこんなにテンションが高い時は危ない。おおかた、面倒くさい仕事が回ってくるのだ。

「ちょっとベルとお使い行ってきてくれない?」

「…どこまでですか?」

「ヒオウギよ」

「…内容は」

「新人トレーナーたちにポケモンを渡してくることよ」

ほうら、予想どうり。
これから優雅なティータイムを送ろうとしていたのにこんな様よ!!

「アララギ博士」

「なーに?」

「それは強制、ですか?」

「もちろん!!」

これだからこの人は恐い。
働かせてもらっている分際なので大きいことは言えないが、この人は人使いがとんでもなく荒い。
笑顔で人の傷口に消毒液を垂らすよ!まあ塩じゃないからいいのだが。

そんなことを頭の隅で考えながら出かける支度を始める。
腰にポシェットをつけ、中にジュペッタとシャンデラを入れる。

「あ、後で羊羮となんかおごってくださいよ?」

「羊羮ならもう準備してあるわよ!」

あとおごりは流石に無理よ!代わりといってはなんだけど、ベルにプレゼントを渡しておいたから後で受け取ってね!!とハイテンションで言うアララギ博士。
流石私のことをよく分かっていらっしゃる。
でも、これは…

「…最初からやらせる気、満々だったってことですか」

「ええ!…何か問題でも?」

「ありますん。」

「よろしい!」

どう足掻いてもこの仕事からは逃れられないようで。

はぁ、と短い溜め息をつき、扉の取っ手に手をかける。

「…で、ベルちゃんは?」

「もうヒオウギに向かってるわ」

「…飛行ポケモンは」

「もう外に出してあるわ」

「私には拒否権は」

「あるわけないじゃない」

「…ですよねー。じゃあ行ってきます」

「行ってらっしゃい!!」

楽しんでくるのよー、という声を聞きながら外に出ると遅いと言わんばかりに羽をバタバタさせ、大きな体を揺らすチルタリスがいた。

よろしくね、チルタリス、と声をかけて背中を跨ぐ。
まかせろ、と言う意味なのか一鳴きすると、勢いよく空に羽ばたいた。



目的地はヒオウギシティ!!
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