いけないまま訪れたゲルテナ展最終日、これほど虚しいことはない。
特に変わったこともなく、あと一時間で営業終了というところまできた。
そろそろゲルテナ展は終わったころかな?
そんなことを思いながら客も来ない花屋でストックしていたお菓子をほおばる。
今日はこっそり買ってきたマカロンだったり、やっぱマカロンにかぎるわ・・・
そうもしているうちにお客さんがやってきた。
・・・はじめて見た顔だった。
ぼろぼろのロングコートを着て、薔薇をひたすら見続けているお兄さん
すごくきれいな顔をしていて、三白眼が印象的な美人さんだった。
お兄さんと分かるのも一苦労
まぁ、胸がないからきっとあたってると思うが・・・
「ちょっといいかしら?」
声を、かけられた。
「あっ、はい!」
・・・半端なくびびった。
だって、男だとおもってたのに女って・・・
うん、気にしちゃ負けだ、負けるなクラリス!営業スマイルだ!
「この赤と青と・・・、それと黄色の薔薇。
一本ずつくれるかしら?」
「はい、包装はいかがいたしましょう?」
「新聞にくるむだけでいいわ。代金はこれで」
「ありがとうございます!」
私は黙々と新聞に包む作業を開始する。
でも、無言はいけないよね。 一応商売だし・・・
ということで、気になっていたことを聞くことにした。
「お客さん、ずいぶん中性的ですけど・・・どっちなんですか?」
「ずいぶん直球ねー、嫌いじゃないわ。名前はなんていうの?」
「クラリスっていいます。お客さんは?」
「ギャリー、正真正銘の男よ。変なのは口調だけで
そっち系に興味があるわけじゃないから心配しないで」
「そ−なんですか。できました、はいどうぞ」
ありがとう、と一言いい薔薇を受け取るギャリーさん。
「あんなことがあった後だからあんまり薔薇は見たくなかったけど
やっぱり薔薇はきれいよね、思わず買っちゃったわ」
「あんなこと?何かあったんですか?」
意味ありげに呟くギャリーさんにそう問いかけると
なんでもないの、こっちの話よといって誤魔化されてしまった。
気になるがお客さんの気を悪くさせたくないのでやめておくことにした。
「ねぇクラリス。ここ、気に行ったわ。また今度きてもいいかしら?」
「もちのろんです!あたりまえだのクラッカーです!」
やったよ!常連さんゲット!ひゃっふーい!
「ふふふ、随分元気ね。でも、もちのろんは古いわ。たぶん最近じゃ通じないわよ。あ、そうだ、どうせ歳近いんだし敬語要らないわよ」
「マジすかっ!やった!じゃあこれからよろしくね、ギャリーさん!」
「ん、よろしくねクラリス・・・あっやばっ!時間がないんだった!
じゃあね、クラリス!また今度くるわね!」
そういい残し、ギャリーさんは嵐のように去っていった。
・・・なんだか不思議な人にあったなー
ま、ゲルテナ展にいってったらあの人にも会えなかったしいいことにするか、という自己完結をだし仕事に戻った。
その後もぼちぼちと薔薇を買いに来るお客さんがいた。
やっぱり精神の具現化を見た後だからかな、なんて想像しながら座っていたら閉店時刻をまわっていた。
急いで店を閉め、帰路に着く。
またギャリーさんに会えるといいな、なんて考えたりしたりして
今日一日は幸せな気分で終わりました。