何か色々調子の良いこと並べ立ててけなしたりし てみたい訳だけどつまり結局要するに何が言いた いのかっていうとそれは… | ナノ

「何だよ〜、いつも頭が子供って言ってくるクセに〜。こーゆー時は仲間に入れてくれないのか〜」
「歳だ歳。ほ・ら・出・て・け・っ・て・!」
「歳ならティナだって〜…」
「ティナはこっち!」
「いけず〜」
「気持ち悪いっ」
ジタンは笑いながら叫んで、同じく笑いながら渋々とテントを出ていくバッツを、しっしっ、と手を振って追い払った。
因みに先程のやり合いは、始めからバッツ、ジタン、バッツ、オニオン、バッツ、ジタンである。
因みに夜である。
虫の音が耳に涼しい、ホームと呼んでいる森の中の野営地の夜。
1つテントに集まった5人の戦士達は、日頃、仲間内で成人、とされる歳上の戦士達の庇護下にある年若い戦士達だった
彼等は、それを不服…とまではいかないが、少なくとも、そんな自分達を、実は多少情けなく思っていた訳で…。
しかもそんなことは歳上の戦士達には言えない訳で…。
…更に、「自分達だけでやれる!」と、無理矢理庇護の手を振り払ってどーにかなる程、今のこの世界は甘っちょろい環境ではない訳でもあり…。
そもそも、いくら離れようとしたところで、奴等の…歳上の戦士達の…目からは逃れられない。
大体にして逃がしてくれるような相手ではないのである。
庇護するものを、見ぬ振りをして実は目を離さない、なんて芸当ができるからこそ、成人組、なんぞと呼んで自分等と区別している訳で…。
…フリオニールが成人組に入っていて、同い年のティナがこちら側なのは、この辺りが理由だったりする。
因みにティナの気配感知能力は秩序軍最広である。念の為。
…しかし。
「…ったく。何であんなちゃらんぽらんしてる奴に勝てねぇんだよ俺…。早さじゃ確実に勝ってんだぜ…?」
先程、バッツを追い払った笑顔とは対照的に、思いっきりの不満顔でジタンが不平を言った。
そうして、自分の敷布の上にどっかと腰を降ろした。
いつもより広くしつらえられたテント。
中央には、直置きのランプが1つ。
…今。このテントの中には、年若い戦士達が言うところの「成人組」は居ない。
居るのは、先程不平を言ったジタンをはじめ、オニオン、ティナ、スコール、ティーダの5人。
日頃、歳上の戦士達の庇護下に置かれている戦士達だ。
成人組の目を逃れられないなら、いっそ目の届くところでお前等について内緒話しちゃる! と、こういうことらしい。
それで先程、誤魔化し誤魔化し、テントの中に留まっていたバッツを強引に追い払った訳で…。
…いくらテント内とはいえ、あまりに大きな声を出しては、外にいる成人組に聞かれてしまうから、あまり大きな声は出せないが。
…そう。
そうなのだ。
常日頃別行動を取りがちな若年組同士で、話がしてみたかったのだ。
…しかし若い組同士が集まると、自然と現状や周りに対する不平が零れてしまうのは、物事の道理な訳で…。
いつもバッツと行動することが多いジタンの先程の不平には、こちらもいつもバッツ、ジタンと共に行動することが多いスコールが全力同意した。
「全くだ。見た目隙だらけなのに、剣が届いた例しが無い」
届いたのは奴が具合の悪い時ぐらいだ。と。
スコールが言えば、オニオンが呆れた表情でスコールを見た。
「わざわざ具合が悪い時に仕掛けたの?」
スコールはオニオンの言葉に、いつもの仏頂面で肩を竦める。
「具合の悪さを押してまで、俺と手合わせの約束を果すと言って聞かなかったから、全力で相手をした」
「勝てた?」
何故か少々期待をした表情でオニオンはスコールに問いを向けた。
スコールはにやりと笑った。
「勝った」
おおおおお、と、その場に居る皆から称賛の声と拍手が上がる。
くすり。
ティナが困った様に笑った。
「具合の悪い時に手合わせなんて、相当寝ているのが嫌だったのね、バッツ」
「あいつ心配されんの大っ嫌いだからなぁ」
きしし、と。
ジタンが笑って言えば、ティナも「そうだったね」と、困った様に笑って頷いた。
「へぇ、バッツって心配されんの嫌いなんスか?」
ティーダが、興味津々といった様子で身を乗り出す。
スコールはきょとん、と、ティーダを見た。
「…あ…言ってなかったか。済まん…」
「何だよ〜、俺だけ仲間外れっスか?」
「僕も初耳なんだけど…。そうなの、ティナ?」
「そうなの」
「意外…。じゃあ思いっきり心配して嫌がらせの悪戯してやろ…」
「乗った! それ俺もやるぜ!」
オニオンのちょっとした悪戯に、ジタンが乗り、2人は顔を見合わせて、悪意のあまり感じられない悪い笑みを浮かべる。
「うわ〜、バッツかわいそ〜」
なんて言うティーダも、言葉の割に全く可哀想がっていない様子で。
「嫌がったら止めてあげてね」「加減は判ってるよ、ティナちゃん」なんていうティナとジタンの会話に、ティーダは笑いながら、計画実行の際には是非呼んでくれと言った。
そうしてふと、あ、と。
思いついた様な声を上げた。
「嫌いなものって言えばさ。クラウドが蛙嫌いなの、皆知ってたっスか?」
「マジで!?」
ティーダのこの発言には、ジタンが目を剥いて食い付いた。
皆も、ティーダのこの発言は意外だったか、身を乗り出してティーダを見る。
「あれ。皆知らなかったんスか? …これ言っちゃ不味かったかな…」
きまり悪そうに頭を掻くティーダにジタンは首を振った。
「いや、そういう情報は大歓迎」
「そうだね。この際、いつも涼しい顔して僕等の上を行ってるあの人達に、仲間に対する情報量くらいでは勝たせてもらってもいいんじゃない?」
同意したのは、いつもは割と年長組に従順なオニオンで。
「おお! 言うじゃねぇか」
「まぁね」
なんて。
わざと大人の戦士達の情けない部分を引き出してみようとしたりして。
「…しかし…あのクラウドが蛙が苦手とはな…」
心底意外そうに呟いたスコールに、ティーダが言う。
「イメージ、崩れたっスか?」
「…若干」
「そうっスよね〜! 俺も最初びっくりしたっスもん。いっつも黙〜ってさくさく敵倒して涼しい顔してんのに。この前歩いてる先にさ、でっかい蛙が居て。そこんところだけ跨げばいいのに、わざわざ大回りで回って歩いてったクラウド見た時はびっくりして爆笑した」
「クラウド、ご機嫌斜めにならなかった?」
ティナがくきりと首を傾げるのに、ティーダは「全然!」と、首を振る。
「何か、あんま隠そうとしてなかったっス。俺が爆笑してたら、何か若干照れて苦笑しながら頭掻いてた」
「そっちの方が意外だろう!」
ティーダの言葉に、思わずスコールが声を上げれば。
今更の様にティーダは身体を硬直させた。
「そう、いえ、ば…。そっス、ね…」
「何だ。意外に人らしいじゃん?」
硬直したティーダを尻目に、面白そうにジタンが頭の後ろで手を組んで言えば、オニオンが呆れたように笑う。
「ジタンはクラウドを何だと思ってたのさ。…けどまぁ、そう思うよね」
「クラウド、可哀想」
くすり。ティナが笑った。
「でもクラウドは、蛙を食べるのは平気みたい。だから蛙が嫌いなんじゃなくて、蛙になったり、蛙にさせられる可能性のあるものが嫌いなんじゃないかな?」
「そうかもしれないけどその前にティナ! 今迄の飯に蛙入ってたことあるんスか!?」
ティナはくき、と首を傾けた。
「お肉と言えば、犬かチョコボか蛙でしょう?」
「まぁ、その話はこの際後にしよう」
それより…と、スコールは顔色を青くしたティーダを目で留めた。
「ティナは何か無いか? そういう…外の奴等のは」
そうして、今度はティナに話を振った。
「あるよ」
ティナはスコールの問いに、悪戯に笑って膝を抱える。
「ウォーリアね。氷属性の攻撃が大っ嫌いなの。セシルは磁力・麻痺系の状態が嫌いみたい」
「ああ…ウォーリアのは知ってる。この前バッツが俺とジタンにバラしてくれた」
スコールはそう言って、ジタンにも同意を求める。
ジタンが1つ頷いてみせると、スコールは視線をティナに戻した。
そうして、しかし…と首を傾げてみせる。
「俺とジタンはバッツ経由として…ティナはどうやって知った?」
「手合せ…かな」
ティナは、何かを思い出す様に、上を見上げた。
屋根の部分の厚布には、ランプの炎が揺れる度に、ゆらりと波打つ灯りが映っている。
その揺らめきを見ながら、ティナは言った。
「ブリザドコンボをね。ウォーリアに仕掛けたの。そしたら牽制…かもしれないんだけれど、飛んでくる赤い剣とか、菱形に見える技で上に飛ばされたりとか、凄い連続で攻めて来られて」
「全力攻撃じゃないか!」
オニオンが青くなって叫ぶと、ティナも上を見上げていた首を戻して頷いた。
「うん。びっくりしちゃった」
「それを『びっくりしちゃった』で済ませられるティナにもびっくりなんスけど…」
「…で、その後ウォーリアは何だって?」
顔を引きつらせたティーダに続き、ジタンも多少青くなってティナに言った。
ティナは言う。
「ウォーリアも自分でびっくりしてたみたい。珍しくどもりながら謝ってきたよ」
「反射で全力攻撃か! これは本気でウォーリアは氷が嫌いだな」
そう言って、腕を組み唸るスコールに、オニオンはジタンと同じように、頭の後ろで手を組んだ。
「でも意外。あの人でも苦手とかあるんだ」
「そう思うと可愛いよな」
そう言って悪い笑みを浮かべるジタンには、ティーダが同じく悪い笑みを浮かべて言った。
「可愛いっつか、意外と情けない?」
「氷嫌いで、氷の攻撃に全力反撃とか、完全に駄々だもんな」
続くジタンの返しで、密やかに会話が流れるテントの中に、どっと笑い声が溢れる。
「で、ティナ。セシルが磁力・麻痺系嫌いってのは、それも手合せっスか?」
「うん。というより…」
ティーダの問いに、ティナは頷いて見せた。
「『動けなくなる状態』がすっごく嫌みたい。磁力・麻痺系の状態異常だけじゃなくて、大怪我したりした時とかも」
「あ。それ僕知ってる」
頭の後ろで組んでいた手を解いて、オニオンが声を上げた。
「何かね。『嫌い』っていうより、『怖い』の方が近いよ、あれ。理由は笑ってごまかされたけど」
「騎士が『怖い』かよ!? こりゃいいや」
ジタンが嬉しそうに笑う。
オニオンは頷いた。
「まぁ、自分が動けなきゃ、何されても何にも出来ないしね〜。気持ちは解らなくもないけど」
「今度セシルが痺れて寝ていたら、擽っちゃおうかな…」
くすり。ティナが再び、悪戯な笑みを浮かべて言った。
「どんな反応するのか、見ものっスね! こう…手をわきわきさせながら近づいてみたりとかして」
「うわ〜、絶対慌てそう」
「見てぇ〜!」
けらけらと。
悪意のない悪戯な笑いは取り留めも無く…。
「フリオニールはどうなの?」
ティナがふと、誰にともなく問えば、ジタンが思いついた様に手を叩いた。
「そう! あいつさ、レディのカッコした召喚獣にたじたじだったから、女の子に弱いのかと思いきや! 娯楽とか誘惑ってもんに全く耐性が無ぇでやんの! だから露出の多い女の子系召喚獣が駄目だったんだよ見慣れてないから!」
「本当!? 楽しいこと苦手じゃあつまらなくないのかな…」
「いやマジで! 楽しみって言えば腕試しぐらいしか思いつかないんだってあいつ!」
「真面目なのかな」
「真面目ってゆーか」
ティナとジタンの会話に胡坐に片手で頬杖をついたティーダがやんわりと割って入った。
「耐性が無い以前に、知らないんスよ、のばら。この前小さい頃やった遊びは何かって訊いたら、狩りとか弓の稽古って答えられて若干引いたっスもん」
「文化的な相違って片付ければそれまでだけど…」
オニオンは、ティーダの言葉に、若干フリオニールを哀れんだ様な溜息を吐いた。
「遊んだことが無いっていうのは、ちょっと深刻かもね、人として」
「俺達の集団の頭も、遊んだことはなさそうだがな」
ぼそり。呟いたのはスコールで。
「イイ歳になってもまだ遊んでいられるってのも相当深刻だけどな。誰とは言わないけど」
なんて切り返しはジタンだった。
皆吹き出し、一様に笑ってみせる。
「何だ。結構穴だらけじゃないスか」
「黙っていれば完璧に見えるのにな」
「見えるだけ見えるだけ」
「でもかえって安心しちゃった」
「寧ろ細々と話題取り上げていけば、僕らの方が勝ってるとこ一杯ありそうだよ」
「違いない」
なんて。
それぞれ好き勝手に笑ってみたりして…。
…。
…しかし、何故だか。
ややあって…。
その笑いは、徐々に引いていったのだった。
…笑いは刻々と小さくなり…。
…やがて消え…。
…元気の良かった笑い声は、何時の間にか、皆息の揃った盛大な溜息になっていた。
オニオンが、先程の楽しそうな様子とは一変、恨みとも取れる不満顔になって膝を抱える。
「そんなにさぁ…」
ゆら、と。
ランプの火が、1度大きく揺らめいた。
オニオンが苛立たしげに言った。
「…そんなに情けないところとかある癖にさ、何であんなに格好良い訳あの人達!? 腹立つなぁ…」
全くだ…と、こちらは寧ろ憎しみかと取れる表情のスコールが同意した。
「普段は寧ろ面倒を見てやっている感じなのに、いざとなると何でいつの間にか世話を焼かれているんだ…! 詐欺か!」
そうそう、と、こちらもやはりジタンが悔しそうに同意する。
「普段は全っ然何でもない風なのが余計卑怯くせぇんだよ、畜生…」
でも…と。
眉尻を下げて、口角も下げて、呟いたのはティナだった。
「…強くて格好良いのよね…。何度助けられたか解らないわ…」
だああぁっ…! と。
ティナの呟いた言葉に、皆溜息か悲鳴か解らない声を上げ、各々の敷布にひっくり返った。
「やめやめ! これ以上話しても、もう褒め言葉しか出て来ねぇもん」
「…何だ。僕達それくらいには憧れてるってことじゃんか…ほんっと腹立つ…」
「…俺は認めない」
「…あの、ね、スコール。多分、そうやって言ってる時点で――」
「待った! …解ってる言うな」
「寝よ寝よ。あ゛〜、不貞寝しよ」
「何で格好良いなぁって思うのかはっきり解らないところがまた凄い腹立つ」
「それだけ気付かれないように護られちゃってるのね、私達」
「無理無理、もうほんっと無理! 惚れるムカつく死ぬ」
「止めだ、止め! もう終わり! お休み!」
なんて会話は、誰が誰やら。
誰からともなく打ち切られる形となったこの話は、それでもまだ尾を引いてはいたが、スコールが直置きのランプを吹き消すと共に、完全に打ち切られた。
「…いつかああ成りたいっス〜…」
…と思ったらそうでもなかった。
薄暗闇になったテントの中、ティーダの哀れっぽい声がソロで響く。
「あの5人の中なら誰でもいいから、ああ成りたい〜…」
「…ティーダそれもう一回言ったら腹に倒れこみの肘鉄打ち込むからな」
「…」
ジタンの早口での牽制に、ティーダが沈黙して辺りは静かになった。
外からは、涼しげな虫の音色が聞こえている。
その音に耳を済ませば、虫の音に混じって、密やかな、穏やかな、会話が聞こえて。
ぎりぎりで聞き取れないその声は、恐らく外の、大人達のもの。
何を話しているのだろうか。
ティナは目を開けた。
隣のオニオンと目が合った。
何話してるのかな。
口だけで、オニオンがティナに言った。
だからティナも口だけで返した。
私達の、こと?
途端にむくれるオニオンに、ティナは1つ笑って彼の頬をつつき、目を閉じた。

…どれだけ貶そうがこきおろそうが、1度格好良いと思ってしまったものは、何時まで経っても、やっぱり格好良いのだ。





リクエストありがとうございました!
遅くなりまして、申し訳ございませんっ…!!
ご希望に添ったものが書けているか解りませんが、少しでもお気に召して頂ければ幸いです。宜しければどうぞお持ち下さい。

リクエスト主様へ。精一杯の感謝を込めて。


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