例えば誰かの代わりなどではなくて | ナノ
 
「予想より長く粘ったなぁ」
「ははっ、でも結局追い出されたな」
「そういう時は、黙って彼等の言う通りにした方が良い」
「や〜、だって俺頭は最年少だし?」
「良く言うよ。半ば人生悟ってる癖に」
「そこまで浮世離れしてねぇって」
年若い5人の戦士が集まるテントの中から、終に追い出されてきたバッツへ。
小さな焚火を取り囲んでいた手練れの戦士から、笑いを含んだ声が掛かった。
因みに先程のやり合いは、始めから、フリオニール、クラウド、ウォーリア、バッツ、セシル、バッツである。
因みに夜である。
虫の音が耳に涼しい、ホームと呼んでいる森の中の野営地の夜。
小さな焚火の周りに集まった5人の戦士達は、日頃、仲間内で子供達、とされる歳下の戦士達の庇護にあたる歴戦の戦士達だった。
彼等は、それを子供達が不服…とまではいかないが、少なくとも、そんな彼等が自身を、実は多少情けなく思っていることを知っていて…。
しかし知っているなんてことは歳下の戦士達には言えない訳で…。
…更に、「じゃあ自分達だけでやってみろ」と、庇護の手を解いてどーにかなる程、今のこの世界は甘っちょろい環境ではない訳でもあり…。
そもそも、彼らが年若い戦士達を認めたとて、奴等の…混沌の…敵の目にはそれがどう映るか。
大体にして、此方を過大評価も過小評価もするような敵ではないのである。
庇護するものを、見ぬ振りをして実は隙を狙っている、なんて芸当をされてしまっていることを感じ取っているからこそ、成人組、なんぞと呼ばれて年若い戦士達に区別されてしまっていることを許容している訳で…。
…ティナが子供組に入っていて、同い年のフリオニールがこちら側なのは、この辺りが理由だったりする。
因みにフリオニールは、その直情的な性格から、急を要する場合に際しては「餓鬼」と叱咤を受けたりもしている。念の為。
…さて。
「…しかし予期していなかったこととはいえ、こうして5人で話が出来るのも久し振りだな」
クラウドが、焚火に小枝を放り込んだ後、立てた片膝を片腕で軽く抱えて、言った。
からん、と。
澄んだ音がして。
火の爆ぜる音と共に、火の粉が赤く光りながら、焚火に煽られて夜空へと舞い上がっていった。
焚火には、細い木の枝を支柱にして、湯を沸かす缶が掛けられていて。
火に掛けられた缶が、しゅう、と、音を立てていた。
「そういやそうだよなぁ。…あ。何か飲むもん無い?」
「蜂蜜湯で良ければ」
「おう、貰う」
皆の輪に入って、どっかと腰を下ろしつつバッツが言えば、バッツの隣に腰を下ろしていたフリオニールが短く応えた。
夜闇に明々と燃える、焚火の赤みがかった灯りに照らされた戦士達。
フリオニールは、焚火から缶を下ろすと、木をくりぬいて作ったカップに蜂蜜を落として湯を入れ、軽く揺すってからバッツに渡した。
バッツはフリオニールに目で礼を言って、口に含み…直ぐにカップから口を離した。
「うぶぇ…、フリオニール、甘いってこれ」
「む…嫌なら飲むな」
「いや、飲むけどね」
そんな2人のやり取りに、セシルが苦笑した。
「少し飲んだら、湯を足したら?」
「や! 自分の限界に挑む!」
「こんな所で挑むなよ」
思わず苦笑を深くするセシル。
そんなセシルに、クラウドが真顔で加勢した。
「そうだぞバッツ。それに自分に合っていない甘さのものを飲んでいると頭痛がしてくるんだ」
「…もしかして…経験アリ?」
「みなまでは言わない」
「…お湯足します」
「ちぇ、折角作ったのに。言ってろよな」
「感謝はしてるってば」
そんな4人のやり取りに。
ウォーリアが、立てた片膝の上に片腕を放った体勢で、くつくつと喉奥で笑っていた。
ひととおり。
じゃれあいの様な会話が終わった所で、ウォーリアが口を開く。
「確かに最近は、我々5人は例え1つ所に居たとしても、個々で役割分担がある以上、こうして話し合えることは稀だ」
その場に居た4人は、即座に話を止めてウォーリアを見る。
…稀な中で。と。
ウォーリアは続けて言った。
「こうして集えたのは良い機会だ。何か変わった事などあれば、情報交換をしておいた方が良いだろう」
特に…と。
ウォーリアは、ちらと皆から視線を外す。
…その視線の先には、1つ。
先程、バッツが追い出されて出てきた、年若い仲間達の集う大きなテントが張ってあって。
何を話していたのか、称賛の声と共に、控えた拍手が聞こえた。
「変わったこと…か」
クラウドが呟いて、また1つ。焚火に枝を投げ入れた。
からん、と。
やはり澄んだ音がして。
火の着いた枝同士が擦れて、再び。
赤く光る火の粉が舞い上がり、夜の空に消えていった。
「こっちは特に問題無い。ティーダが駆け足で強くなろうと焦っているから、フリオニールが減速を掛けているくらいだ」
「掛けきれているか?」
ウォーリアの問い掛けには、フリオニールが肩を竦めて応じた。
「時折、掛けきれません。歳が近いからティーダにも多少俺に対して甘えがあるんでしょう」
甘やかす俺も悪いんですが…。
と、フリオニールは苦笑して浅く俯き、頬を軽く掻いた。
そうして、頬から指を離して顔を上げ、続ける。
「けれどそういう時はクラウドが、上から少しきつめに言ってくれると止まるので、正味問題ありません」
「俺とフリオニールであんまりきつく言うと、今度はセシルのところに行くんだよな」
フリオニールの言葉を受けて、クラウドがくつくつと苦笑した。
バッツが蜂蜜湯を1口飲んでから口を開く。
「セシルんとこ行ったって、セシルもフリオニール達と言うこと同じだろ?」
セシルは肩を竦めた。
「愚痴を言いに来るだけだから。僕は宥め役。ティーダはフリオニール達に止められたことを、僕のところでやろうとはしないよ」
僕にも止められるって解ってるだろうし。
と、セシルは言って、立てた片膝の上に頬杖を付いた。
そんなセシルに、でも…と、フリオニールは面白そうに言う。
「セシルに愚痴を言いに行くって、ティーダ、勇気あるなぁって思うんだよな、俺…」
「どういう意味だいそれは」
セシルは笑った。
フリオニールは言う。
「『止められる』ってことは、いけないことってことだろ? それに対して愚痴なんて、俺だったら叱られるとか思って絶対行けない」
クラウドは吹き出した。
「ははっ。セシルが本気で怒ると、ウォーリアの次くらいに怖いからな」
セシルも釣られて苦笑を浮かべた。
「バッツにくらいしか本気で怒鳴ったこと無いけどね」
「あれは怖かったなぁ…」
くすくす。
そんな会話の後には、こんな忍び笑いが付いていて。
控えた笑いが暫く。
辺りを満たした。
からり。と…。
焚火にくべていた枝が崩れ。
ウォーリアが傍に積んであった枝の中から、若干太い枝を引き抜いて、焚火の枝を高く組み直し始めた。
「君達の方が知っていることだろうが…」
そして、そう、話し始めた。
「ティーダは、天真爛漫だが聡い子だ。話を聞く限り、確かに大丈夫そうだな」
あまり甘やかさないように…。と。
ウォーリアが、あまり本気ではない視線を、ちら、とフリオニールにむければ、フリオニールも苦笑して頭を掻き、はい、と返事をした。
どこかで、虫が鳴いていた。
「甘やかすって言えば…」
バッツが、焚火から下ろしてそのままになっていた缶から、自分のカップに湯を足しながら言った。
「俺も注意しないとな」
「あんたはあの2人を甘やかし過ぎだ」
バッツの言葉に、クラウドが軽く顎をしゃくって応じる。
バッツは思い切りの苦笑を浮かべた。
「俺が普段、甘やかされてるからなぁ」
でもよ、と、缶を火に掛け直そうとしながら、バッツが言った。
「あの2人は、多少俺が甘やかし過ぎても平気だぜ? ちゃんと自己管理できるから」
「ティーダが自己管理できない訳じゃないんだが…」
と。
バッツが湯を沸かしていた缶を火に戻そうとするのを、フリオニールがやんわりと止めながら言った。
フリオニールは、どこに置いてあったのか、後ろの方から水袋を引いて、缶に水を足し、再び火に掛ける。
しゅう、と。
熱された缶が、再び音を立てた。
どこかでまた虫が鳴き、からんと崩れた焚火から火の粉が散って、炎に煽られて暗い空へ舞い上がって行った。
皆の姿が、焚火の赤色を受けてぼんやりと赤み掛かって見えていた。
「や、そういう意味じゃねぇよ」
バッツは苦笑を深くして、フリオニールに応えた。
そうして、言った。
「あいつらさ、甘やかされ慣れてないから。俺がふらふらしてた方が、かえってしっかりすんだよ。俺がふらふらしてんのに手綱掛けてた方が安心するんでない?」
ま、あいつらも偶〜にふらつく時があるから、そんときゃ声掛けるけど、と、笑う。
「スコールに至っては、ウォーリアが1人歩き認めてるから、俺も好きにさせてるところがあるしな」
「ああいう性格の奴には、逆に1人の時間を許してやらないと、早い段階で潰れるからな」
今度はクラウドが焚火に小枝を差し入れながら言えば、皆一様に頷いて応えていた。
そんな中、バッツが茶化した様子で言う。
「それって、経験談?」
「言ってろ」
クラウドは苦笑した。
そうして、続ける。
「…ただ、支えられて立っている奴と、支えることで立っている奴、というのが居るってだけだ」
クラウドのその呟きに。
バッツは苦笑して頷いた。
「そそ。まぁ俺はどっちでもいいんだけど、あの2人は支えて云々の方だからさ。特にジタンがそう。あいつ、自分の所為で誰かが怪我したって思っちまうと、途端にドン底まで凹むからさ」
にしたって、ちょい甘やかし過ぎだから、反省はしてる。と…。
言葉に反して、あまり反省をしていないような表情でバッツが言った。
それに対し、頷くだけで誰も何も言わなかったのは、あまり反省をしていない表情であったとしても、言葉は嘘ではないと、皆知っているからだ。
皆知っている。ということを、バッツも知っている。
故にバッツは、誰からも言葉が無いことに対して、何も言わなかった。
ウォーリアは再度、頷く。
「あの2人は、歳若い戦士達の中では、精神的に最も成熟している。君のところも、大丈夫そうだな」
任せとけ! と。
バッツは片手を上げて応じた。
そうして次に、ウォーリアにむけて、くきりと首を傾げた。
「ウォーリアもさ」
「うん?」
「ティナとオニオンは、どーよ?」
ウォーリアは、立てていた片膝を、反対の足に替えた。
膝の上に放っていた腕も替え。
…どこかでまた、虫の音が聞こえた。
「…ティナは外見に反して、心はれっきとした戦士だ。いざともなれば、皆の背を預かり戦える。過度な庇護を彼女は好まない。悩み苦しむ時は支える手を必要とするだろうが、現状では必要ない」
ウォーリアのその言葉に、フリオニールが若干面白そうな表情でウォーリアを見た。
「普段から過度な庇護をしたがる小さい戦士が傍に居ますしね」
その言葉に、ウォーリアは困った様子で僅かに笑い、他の者は好意的な様子で軽く吹き出した。
ウォーリアは言う。
「オニオンも、あれは本当に賢しい、聡い子だ。自分の中での切り替えも早いし学習・吸収も早い。ティナの為にならない庇護はしないと信じている」
それと…と、ウォーリアはクラウドに目を向けて言う。
「彼等については、私よりも君の方が詳しそうだ」
クラウドはその言葉に深く苦笑し、片手を上げ緩く振って否定した。
ぱちん、と。
焚火が鳴って、炎が大きく揺らめいた。
揺らめく炎に合わせて、焚火から放射状に伸びる皆の影も、ゆらゆらと揺れていた。
クラウドは言う。
「ティナに関してはウォーリアと同意見だ。だがオニオンに関しては正直解らない。聡いのは解っているが、あれは俺やウォーリアの前では意地を張るだろう」
寧ろセシルの方が知っているんじゃないか、との問い掛けに。
セシルは立てた自身の膝の上に頬杖をつき直して若干苦笑した。
「ティナの為にならない庇護はしない、というところは同意するし、確かに頭が良くて聡いけれど。クラウドが言ったように、自分が『凄い』って思った人の前では格好付けたがるよ。まだ誰かに甘えたい歳でもあるしね」
本人に指摘したことはないけれど。と、補足して。
ぱちん。
また、焚火が爆ぜた。
セシルは赤い光の中、立てた膝に頬杖をつき直す。
そうして、続けた。
「それに自分の気持ちを管理するのがまだ下手だ。…あの子、結構焼きもち焼きなんだよ」
「へえ…!」
セシルの言葉に、フリオニールが興味深そうに声を上げた。
からり、と。
音がして。
焚火が僅かに崩れた。
くすり、と。
クラウドが笑う。
「ああ、見たことがあるな。『ティーダは大人3人も独り占めしてて狡い』だったか? オニオンに気付かれたら色々まずいだろうと思って、早々に退散したが」
それを聞いたバッツが、好意的な苦笑をして肩を竦める。
「ティナに自分以外の奴が構ってる時のあいつの不機嫌は、そーゆーことかぁ」
「でも…」
と、セシルは続ける。
それが悪い、ということじなくて、と、前置いて。
「…オニオンだけじゃなくて、皆――僕等もね、そういうところは少なからずあるんじゃないか?」
独占欲に近いものが、と。
その言葉に。
皆、思い当たる節があるのか、一様に深く苦笑して応えていた。
自覚があるのか、それを言った本人も思いきりの苦笑を浮かべていた。
どこか。近くで、虫が鳴いた。
緩く、風が流れて彼等の髪を拐った。
ぱちりと焚火が爆ぜ、赤く光る火の粉が、炎と風に煽られて、黒い空へと舞い上がり見えなくなった。
5人の影が下草の上に映り、炎の揺らめきと同じ調子で揺れていた。
ウォーリアが、静かに口を開く。
「年若い戦士達については、その嫉妬心…独占欲は好意と受け取って差し支えないだろう。だが我々の場合、彼等――」
と、言葉の途中でウォーリアは、年若い戦士達の集まるテントへと視線を向けた。
皆、釣られてテントを見やる。
何の話をしていたのか。
テントからは、笑い声が聞こえていた。
ウォーリアは続ける。
「――彼等を、彼等としてみているなら問題は無いが、彼等のことを少しでも、昔、自身が護り切れなかった誰かと、重ねてはいない、と言い切れるか?」
重ねていたなら、それは年若い戦士達に対して相当に酷いことをしている、との言葉に。
クラウドは苦い笑みを零して、降参とでも言いたげに、両手を僅かに挙げ…直ぐに下ろした。
「はは…」
洩れる、苦い笑い。
そうして、言った。
「ウォーリア。そこは見くびらないでくれ」
ウォーリアは軽く目を見開き、クラウドを…皆を見る。
皆、苦い笑みを浮かべてウォーリアを見ていた。
クラウドは、同じ様に苦い表情でウォーリアを見、言った。
「極稀に記憶と被る1場面が無いとは言わない。でもこの…」
…独占欲にも似た…。
「…思いってのは、個々に対するもので、誰かと重ねて生じるものじゃない」
「同じくっ!」
「同意」
「そういうことですね」
クラウドに続いて、3人も。
苦い笑みを浮かべたまま、クラウドの言葉を肯定した。
苦い笑みは、ウォーリアの杞憂に対してか。
ウォーリアは皆の答えに、暫く僅かに目を見開いていた。
…が、ややあって。
ウォーリアは、彼に慣れた者だけがそれと判る苦笑を溢した。
「済まない。要らぬ心配だったな」
高く…虫の音が通り過ぎた。
ぱちん。
焚火から火の粉が舞った。
「だから…」
フリオニールが、ぱちぱちと不規則に、僅かに鳴る焚火と同じ声量で。
ふと。
そう、切り出した。
「こういう俺等の勝手な考えを、もしあいつらが解っていなくて…」
皆、フリオニールに目を向けた。
フリオニールは焚火の火元に視線を落としていた。
「気づかれたとして…」
火の粉は、ゆらゆらと揺れ動きながら、空へ舞い上がって見えなくなった。
「誰かに重ねているとか勘違いされたら」
フリオニールは苦笑して髪を掻き毟った。
「正直…怒らない自信が無あ痛っ!?」
突然。
すぱんっ! と、軽快な音がして。
フリオニールの言葉は、途中で途切れた。
隣に座っていたバッツが平手でフリオニールの後頭部を叩いたのだ。
そのままバッツは、フリオニールの肩へ腕を回して固定する。
反射でバッツを見たフリオニールは、至近距離でにまぁっと笑ったバッツの表情に顔を引き攣らせた。
「お前なぁ…」
バッツはわざとらしく溜息を吐いた。
そうして、言った。「何だよそりゃ。恋か!?」
「こ、恋!?」
「自分の世界入ってんじゃねーって。あいつらはそんな妙な勘違いしないからさ」
人一倍他人の気持ちに敏感なお年頃ってのもあるし。と、バッツが言えば。
フリオニールは照れたように笑って頭を書いた。
…嗚呼、本当に。
誰かの代わり等ではなくて、彼等個人として見ることが出来たことを、今、誇りに思う。
何故ならば、以前なら――もっと心が未熟だった時ならば。
ウォーリアの杞憂の通り、救えなかった誰かに、護りたかった誰かに。
彼等を重ねてしまっていたと思うから。
しかし、こうして記憶の片隅に残る誰かと、庇護下に置いている彼等を重ねていないこの現状は、けっして自分達で確立したものではなく…。
「…格好良いよなぁ…」
ぼそり。フリオニールから離れ、片膝を抱えた姿勢に戻ったバッツが呟いた。
ぱちん。
焚火が大きく鳴って。
一際明るく輝く火の粉が、一斉に夜空へ舞い上がっていった。
…確かに。
確かに身体は、命は。
今テントの中で談笑している彼等を庇護しているかもしれない。
だが精神を、心を、庇護されているのは果たしてどちらか。
バッツは言う。
「俺等、あいつらのお蔭で強く成れたんだよな。『老いては子に従え』って、こーゆーことか」
それを聞いたクラウドは、危うく同意して頷きそうになった。
が、慌てて首を振り、呆れた表情で訂正する。
「それを言うなら『負うた子に教えられ』だろう」
「だって俺あいつらおぶったことないし」
即座にバッツから切り返しが来た。
丁度蜂蜜湯をあおっていたセシルとフリオニールが同時に噴き出す。
「ちょっ…何で言葉をそのままで捉えるんだい」
「バッツ…お前真面目なのか抜けてるのか、はっきりしてくれ」
「えぇ〜、俺頭から爪先まで自然体なんだけど」
「策士がその口で良く言うよ」
バッツの言葉を発端に、じゃれ合いの様相を呈してきたその会話から。
いつもの通り傍観することで会話から外れたウォーリアは、珍しく傍目にも判る笑みを浮かべ、蜂蜜湯のカップをあおることで笑みを隠した。
焚火は明々と燃えている。
薪とする木がなければ炎は炎として存在できず、また薪も、薪を燃やす炎が無ければその存在は無意味だ。
つまり――そうなのだろう。
そういう…ことなのだろう。
老いては子に従え。
負うた子に教えられ。
どちらでも良いではないか。どちらも的を射ている。
願わくは。
庇護下に置く彼等からの想いも、同じであって欲しい。
誰かの代わり等ではなくて、自分達自身への思いであって欲しい。
…等と声に出して言える筈の無い自分達と。こういったじゃれ合いで誤魔化すしかない自分達と比べれば。
やはり、恐らく。
言えてしまうであろう子供達の方が。
「もうさ、どっちだっていいじゃん。あいつら格好良いってことだけ判れば」
「…そうだな」
ふと。
横合いからバッツに同意したウォーリアの声に。
意外だったか、驚いたのか。
当のバッツ含む4人が、軽く目を見開いてウォーリアを見た。
何事もなかったようにカップを傾けるウォーリアに。
皆、胸の内を見透かされたような気がして、苦笑を浮かべつつじゃれ合いの会話を止めた。
照れ隠しか。
フリオニールが薪を1本、焚火に投げ入れた。
綺麗な音がして。
再び。赤く輝く火の粉が舞い、夜空にふわりと上がって消えた。





リクエストありがとうございました!
遅くなりまして、申し訳ございませんっ…!!
ご希望に添ったものが書けているか解りませんが、少しでもお気に召して頂ければ幸いです。宜しければどうぞお持ち下さい。

リクエスト主様へ。精一杯の感謝を込めて。


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