無題 | ナノ

 スコールと、クラウド。
 アイコンタクトで頷き合う。口下手同士、心はひとつ。
(似合わない…!)
 口に出さないのは失礼であるからではない。直接言うのが失礼なら失礼でないように言い方変えればそれで済む話で。
 その「言い方を変える」というのがクラウドもスコールも苦手だから、言おうとすれば必然的に失礼になる。結局黙っているしかない。ちなみに何が似合わないのかというと、次元城のセシルである。
 残された断片の世界の中で唯一「太陽」を臨める世界。陽光と青空がセシルの頭のあのなんか解らない宝石とかふわふわした白い髪などに当たって煌いている。眩しい。鎧も白いものだから、光はセシルの全身に纏わりついているようだ。目の周囲がふんわりビーズに彩られていると思ったら睫毛に陽光が乗っかっているのだった。普段は見えないが意外と睫毛は長かったらしい。なぜ普段気づかなかったのかというと、頭髪が銀なら当然睫毛も白いわけで、目立つわけがない、と。
 綺麗ではあるのだ。
 顔が綺麗なのはまあ今更だとしても、白い鎧の聖騎士が太陽の光を全身に集めてたたずんでいるなんて言うのは、ただそれだけで(たとえ本人がぼーっとしているだけだったとしても)絵になるはずなのだ。何この似合わなさ。
「…違和感が…」
 本人に聞こえない程度の声でクラウドが呟いた。スコールも微かに頷く。
「イメージというだけの話じゃ…あるんだろうが」
 使う技が月に因んだものが多い。そこから生まれた、セシルといえば月のイメージ。それと合致しないから似合わない。それだけの話なんだろうが。
 …それだけの話か?
(ならば…アレだ…ほら)
 クラウドは曖昧な言葉を心の中でだけ重ね、目を閉じて指を胸の近くまで持ってきて、出てこない言葉を出そうともがいた挙句、やっと口と目を開く。
「スコール、お前はあそこにいたのがセシルじゃなくあの人だったとしたら、似合わないと思うか」
 あの人。
 名前は言わないが、教えてくれないので言いようもない(本人も知らないなんて知らない)。スコール曰く眩しい奴。青い鎧のリーダー。輝く騎士。
 スコールはしばし難しい顔をした後、きっぱりと答えてきた。
「あいつは恒星の光にせよ衛星の光にせよ、そういうのを受けるより自己発光してるようなイメージがある」
「なるほどな」
 恒星の光は殺菌にも効くそうだ。となると、どちらかというと「滅ぼす光」である。となればあの人は確かに自己発光した上恒星の光すら弾き飛ばしそうだ。
「結局のところ、人間のための輝きなんだな、太陽は」
 クラウドはため息混じりに呟いた。
 光の戦士、と仮称するあの人が人間に見えたことなど一度たりとてないし、セシルの衝撃波的というより魔法的な剣技はどちらかといえば魔物(言い方が悪ければ異種族)じみている。二人の度が過ぎた優雅さと美貌も「育ちがいい」だけで片付けられるものではない。太陽は人間のものだ。あの二人のものではないのだ。
 単に日向ぼっこしているだけだろうに、纏う陽光が笑い出したくなるような違和感を醸し出しているセシル。平和といえば平和なその絵を見て、思い出すのはなぜか戦っているときのセシル。
(月に惑え)
 月に惑え。
(あんたは太陽に惑うのか)
 月影の騎士の、その白い輪郭は太陽の光に思い切り溶けている。




妹がのウォーリアさん好きすぎてのたうちまわっていたので、負けじとセシルセシル言ってたら書いてくれました(←)
通常、自分は簡単に妹の萌えを満たせます。
萌えポイントが解りやすいから、ちょっと萌えさせてやろうと思って何か言うと直ぐに萌えてくれる。
この文はその礼らしい。
でも逆に、妹が私の萌えを満たすのは難しいらしくて、これを書くにも苦労したそうな。
妹曰く、「るての萌えポイントは特殊」。
……。
ちなみに感想を聞かれたので「こういうの好き」と答えたら「ほら、萌えてはないじゃん?」と勝ち誇られた。
うぬぬ…。
でも良いんだ! セシルが読めればそれでいいんだ!
ありがとう妹! 誕生日にはコート買ってあげるから!


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