novel | ナノ



一途な貴方を
 
「ねえ」
「なんや」
夜、お互い裸のまま布団の中で話す。
「あたしに、あたしのことなんか愛してないって言って」
「いきなりどないしたん?」
ギンは当惑したように言う。
「いいから、そう言って」
強情に言う名前に、ギンは渋々口を開く。
「名前のこと、愛せへん」
「乱菊が一番って言って」
「…乱菊が、一番や」
その言葉に、名前は満足したように頷いて、目をつぶって眠ろうとした。
「なして、そんなこと言わすん?」
とんだいけずやないの、と付け加えた彼に、いくばくか眠たそうな声が答えた。
「あたし、前にも言ったけど、ギンの二番目がいいの。一番でもなく、三番でもなく」
先を促す彼の沈黙。
「あたしは、乱菊に一途なギンを好きになったの。だけど、あたしのことも見てほしい、とんだ矛盾でしょう?だからね、あたしは常に二番目がいいの」
おやすみと彼女の声が話す。
ギンは納得できないという風に、だけど諦めたように眉をハの字にした。

「…ギン」
夢の中の彼女が、彼の名を愛し気に呼ぶのを聞く前に、ギンは眠りに落ちた。