Salvage.


I will live here


結局私はこのままNESTというアメリカ軍のお世話になることになったらしい。両親も身内だからということで、一応詳細を伝えておけば2人とも以外なことにあちゃー…という感じの反応だった。意外と軽い。

『それじゃあ、私達は帰国しても問題なさそうね』

『そうだなぁ。1人でアメリカなんて大丈夫か?』

『アメリカには住んでたし、町中にはあまり出ないと思うから大丈夫だよ』

不安そうにしているお父さんにそう言えば心配そうにしながらもうなずいていた。すると、レノックス氏に呼ばれた。

「詩織、ちょっと良いか?」

「はい。ちょっと行ってくる」

そう言ってレノックス氏に着いていくと、目的地は機械生命体(トランスフォーマーというらしい)の格納庫だ。入っていいものかと悩んでいると、レノックス氏は着いてこい、と手招きをする。

「……、」

少し緊張しながら入っていけば、オプティマス司令官がいた。この前私に爆弾発言をしたトランスフォーマーのボスだ。

<わざわざここまで来てもらって済まない。君のご両親を驚かせるわけにはいかなくて>

「はい。大丈夫です」

<遅くなってしまってすまない。ジョルトから聞いた。オートボットの為に命を投げ打ってくれたジェットファイアーは君の祖父にあたる者の仲間だと聞いた>

「はい。私の祖父は彼と同じシーカーでした」

<同郷の者が埋まっている墓に入れたいと君が言っていたと聞いたから、我々で話し合った結果、彼のためにもぜひそうしてほしいと頼みたいのだ>

「もちろんです。ありがとうございます。両親に頼んで同じ墓に入れてもらいますね」

ジェットファイアーおじいさんのフェイスパーツをもらって、それから布をもらってゆっくりと包んでいく。それを大事に抱えて彼らの格納庫から出る。

それから両親のいる自分の病室へと行けば両親は私の抱えている布を見て驚いているようだった。

『詩織、なにそれ』

『おじいさんの仲間』

お母さんにそう言われて、正直に返せばお父さんが興味深そうにこっちを見てきた。2人に分かるように布を外せば、お父さんもお母さんも驚いているようだ。

『これ、おじいさんと一緒に墓に入れてほしい』

遠い星で同郷の人と一緒に眠らせてあげたい。彼らにそんな概念があるかどうかわからないけど。

『分かった。責任を持って同じ墓に入れておくよ』

お父さんにそう言われて、お礼を言えばお父さんはそれを大事そうに抱える。そうして両親は日本に帰ってしまった。

「……、」

それにしても、私はNEST預かりになったんだけど…何か仕事を任せてもらえるんだろうか。ニート状態は辛い。

「詩織、今からお前の部屋を案内するぜ!」

そう言ってやって来たのはエップス氏だ。私は自分の荷物をまとめて彼についていく。彼に案内されたのは広めの一人部屋だった。

「一人部屋ですか?」

「おう。NESTはそこまで人が多いわけじゃないからな。基本的に一人部屋だ」

「……好きなように使っても?」

「おう、大丈夫だぞ」

みんな漫画とかゲームとか、あとは楽器とか持ってきてるやついるぞ。と言ってエップス氏は笑う。意外と自由なんだな。

「あと、基地はワシントンですよね…?外出しても大丈夫なんですか?」

「おう、みんな非番の時は外出してるぜ」

「そうなんですね」

「詩織もいつでも外出していいからな」

「はい。それと…私はNESTで何をすればいいんでしょうか…?」

「あー…それについてだがな、」

とエップス氏は少しだけ困ったように笑って、今ラチェットが君を教育してあいつらの整備をさせたいらしいぜ。と言った。

確かに、それなら妥当だ。まぁ、面倒なことは余り好きじゃないけど、彼らのことは嫌いではないから少しでも役に立てるように頑張るか。

「まぁ、今はとりあえずここに慣れるのが先だな」

「はい」

エップス氏とそう話していたら、部屋についたらしい。ここだ、と言われて部屋に入れば意外と広い部屋だった。

「この部屋は好きに使っていいからな!」

「ありがとうございます」

今はベッドと机、それからクローゼットがあるくらいで、後はガランとしている。それならラックを買って実家にある漫画を入れようかな。

「んじゃ、後は時間になったら食堂に案内するからゆっくりしといてくれ」

「分かりました」

そう言ってエップス氏は部屋を出ていく。とりあえずは自由時間がもらえたということなのだろう。何をしようかとぼんやりと考えていると、コツコツと窓を叩かれた。

「……えっと、アイアンハイド殿」

窓の外には真っ黒なトランスフォーマーがいる。どうかしたのだろうか、と首をかしげながら窓を開ければぶっきらぼうな返事が返ってきた。

「どうかされたんですか?」

<いや…その、だな…>

アイアンハイド殿はそれ以上何も言わない。気になって来てみたけど、話題が見つからないと言ったところか。

「そうだ、私これから食事の時間まで自由時間みたいなんですが、見ての通り部屋はがらんどうでして。少しの間、アイアンハイド殿が良ければ話し相手になってほしいです」

<あ、あぁ。俺もそのつもりで来た>

「ありがとうございます」

アイアンハイド殿はあまりそういうことをしなさそうに見えるから、意外だった。しばらく彼と話していると、レノックス大佐がやって来た。

「アイアンハイド、何やってるんだ?」

<ウィルか。詩織と話していたんだ>

「詩織?」

アイアンハイド殿の足元にレノックス大佐がいたから、聞こえるようにお疲れ様です、と言えば片手を上げてくれた。

「おう!そろそろメシの時間だが、食べに行くか?案内するぞ」

「ご一緒させていただきます」

レノックス大佐の言葉にそう返せば彼はニカッと笑った。笑顔が眩しい人だ。アイアンハイド殿にお礼を言えば気にするなと大きな指でツン、と突かれた。きっと人間でいう頭をなでた時の仕草なんだろう。

「アイアンハイド殿はずいぶんと人間に慣れていますね」

<あぁ…アナベルの相手をしていたらいつの間にか慣れた>

「アナベルさん、ですか?」

「俺の娘だ!かわいいんだぞ!」

あぁ、アナベルちゃん。レノックス大佐がデレデレと鼻の下を伸ばしながらそう言った。娘バカってやつだな、これは。

結局その後レノックス大佐とエップス氏と一緒に食堂で御飯を食べていたらレノックス大佐の娘自慢を延々と聞かされた。


I will live here.
(私はここで生きていく)



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