Worst reunion
あれから2年が経って、私は一般企業で普通の仕事をしている。あれから特に何事もなく、日本に帰ってきた時は両親に心配されたけど問題ないことが分かればホッとしていた。
いつものように仕事が終わって家に帰ろうと帰路に着いていたら、ちょっと広い交差点に戦闘機が降りてきたかと思うと、大きな機械生命体に変身した。あ、目が赤いってことはちょっとやばいかも。
「……っ、」
その赤目の戦闘機は私をかっさらうとすぐに戦闘機になってものすごい勢いで空を飛んでいく。あ、これは…やばい。
「……っ!」
私は我慢できずに戦闘機の中で気絶してしまった。最後に戦闘機から死んでんじゃねー!と怒鳴られたけど、死ぬわけではないから勘弁してくれ…。
ここまでのGを体験したこともないし、こんなに揺れるとは思わなかったんだ…この中で吐くよりもマシだろう…。
<おい、起きろ!>
あの戦闘機の声がして私は目を覚ました。結構寝てたみたいだ。でも全然休まってなくて、むしろ身体が痛い。
<やっと来たか、スタースクリーム。遅いぞ>
<いっ、いや…こいつのいる場所が結構遠く手ですね…!>
夜だったのに今昼になってるよ。本当にアメリカに着いたのか…。眠い目をこすりながら辺りを見回してみると、ここはどうやら古い倉庫らしい。
「んーっ!んーっ!」
そして倉庫の下の方には男の子が2人何かに縛られてモガモガしている。あれは…ちょっとどういうことなんだろうか。よく分からずに降りようとすればヒョイッとつままれた。
「げ…」
<ほう。知能の低い虫ケラでも俺様の顔は覚えていたみたいだな>
目の前には忘れもしない恐怖の象徴が。赤目の凶悪な顔をした金属生命体だ。2年前の仕返してもやるつもりだろうか…。なにそれ怖い。
「……、」
あのときの恐怖が蘇ってきた。血の気がサーッと引いていって、心臓がきゅうっと掴まれたようになっている。
私なんであの時あんなことしちゃったんだろう…。おじいさんマジ許さん。
<フン。それほど恐怖するならなぜあの時俺様に歯向かったか…。貴様をなぶり殺してやろうと思ったが興ざめした>
私もあの時の自分に聞きたい。っていうか、私なぶり殺される予定だったのか…!超怖い…!
赤目の機械生命体はフン、とまた鼻で笑って今度は男の子の方に向かう。私も連れて行くのか。
<今からこいつの頭を割いて脳に詰まっている情報を引き出す>
え、そんな事できるのか。っていうか、中々にグロいことを言ってるんだが…。私これ見ないといけないの?
頭を割かれるっていう男の子には可愛そうだけど、私それよりも何よりもそんなグロい光景見たくないんだけど。
「んんーっ!」
小さい箱型の金属生命体がメスを持って彼の頭を裂こうとしている。え、ちょっと待って、本当にやるの?
「え、ちょっと待ってください。待て待て待て待て、」
<チッ。何だ>
「そ…そんな事して彼の持っている情報って抜き取れるんですか?」
<お前ら虫ケラの技術と同じにするな>
一蹴されたけどここで引き下がるわけにはいかない。彼のためにも…何より自分がグロい光景を見なくても良いように。
「いや、でも…」
<虫ケラ一匹が死んだ所で何も変わらんだろう>
そりゃあ、そんだけ大きい金属生命体からしたらそうなのかもしれないけど…!でも私の心の安寧とか色々あると思うんだよね!っていうか私このあとお前の番だ!とか言って殺される…?
<サム!助けに来たぞ!>
その時だった。赤と青の機械生命体が倉庫の壁をぶち破って入ってきた。その後ろには黄色い機械生命体もいる。サムと呼ばれた男の子はぱぁっと顔を輝かせてガツガツと動く。
そうすればガチャンと彼を縛っていた拘束は解けてサムくんは口に巻かれている猿轡的なのを取って、すぐに私の方に駆け寄ってきて手を取って助けに来てくれた機械生命体のもとへ行く。
「オプティマス!助かったよ!」
<あぁ。そっちの人間は…?>
「とにかく今は逃げよう!」
サムくんの言葉にオプティマスと言うらしい機械生命体は頷いて彼と私を乗せて森の中を走る。だけどその後ろから赤目の機械生命体が追ってきた。めちゃくちゃ怖い…!
<サム、その少女のことを聞いても良いだろうか?>
「僕も詳しくはわからないけど、スタースクリームが連れてきてたみたいだよ」
<ふむ…どういうことか聞いてもいいだろうか?>
そう言ってオプティマス氏はこちらに話しかけてきたようだった。そのため私は一応経緯を伝えたのだが…。
<そうか。君がジャズを救ってくれたのか>
「ジャズ、ずっと君のこと探してたよ」
どうやら私が助けたバイザーの小さい機械生命体は無事に生きていたらしい。良かったというべきか、こんな事になって…と思うべきか。
「とりあえず、私日本に帰りたいんですが…」
<すまない。今その願いを叶えてあげることはできない。メガトロンに目をつけられてしまったのであれば私達が匿おう>
「……はい」
まぁ…そうするしかないよね。とりあえず私は彼らと行動をともにすることを決めた。っていうか…私不法入国したんだけど、大丈夫だろうか。
<サム、すまない。降りてくれ!>
そう言ってオプティマス氏は私達を外に放り出して変形した。それから追ってきた敵と戦いだした。あの大きな赤目の機械生命体と戦っている。
「とにかく、行こう!僕らが踏み潰されてしまう!」
そう言ってサムくんは私の手を引いて走り出す。後ろではオプティマス氏が戦っている音が聞こえてくるけど、彼の方が劣勢らしい。そりゃあ、2対1だから辛いだろう。彼がどのくらい強いのか知らないけど。
黄色い機械生命体は私達を守っているらしくて、オプティマス氏の援護に行けないらしい。
<ぐあああああ!>
その時だった。オプティマス氏の悲鳴が聞こえて、私達は思わず振り返った。目の前には胸を貫かれて膝をつくオプティマス氏がいた。
「オプティマス!」
サムくんが彼の名前を呼ぶけど、オプティマス氏は全く答えてくれない。私は思わず彼の方に走り出した。彼はきっと死なせちゃいけない。
『死んじゃダメだ!死ぬな…!』
オプティマス氏の胸の方を触れれば私の身体から水色の光が出てくる。そうすれば彼の身体は治っていく。治っていくけど、彼の身体から命が溢れていくことを止められない。
<君、は…>
「喋らないで!まだそんな状態じゃないはずです…!」
その時だった。オプティマス氏の上にいる私は赤目の機械生命体につままれてしまう。
<貴様、面白い。殺すには惜しい>
そう言って赤目の機械生命体は私をつまんだまま大きなタンクトラックになると、そのトラックの中に私を入れると木々をなぎ倒しながらどこかに向かっていた。
死亡フラグは回避できたけど…これは、絶望的な状況かもしれない。私家に帰ろうとしただけなんですけどね。
Worst reunion
(最悪の再会)