Salvage.


What a day!



アメリカは小さころに住んでいた場所だから特に大変な目に遭うこともなく、滞りなく旅行は終わると思っていた。

「きゃあああ!」

「一般人は逃げるんだ!」

だけど、これは何だ。フーバーダムからそこまで遠くない場所にホテルを取っていた私はフーバーダムを観光しようと外に出た。

なのに今さっきまで堂々とそびえ立っていたビル群は大きな金属生命体によって木っ端微塵にされて、発展していた街があっという間に瓦礫の街になってしまった。

『何、これ…!』

アメリカの軍人さんっぽい人たちが武器を持って金属生命体と戦いながら民間人を避難させようとしている。

私が旅行する時にこんな事しなくてもいいじゃないか。そう思いながら私も軍人さんたちに従って避難していた。

「……っ、」

もちろん初めて体験する命の危機だから、中々うまく身体が動くわけじゃないけど。危機的状況なのにそんなふうに冷静に考えられていることに驚きながらもふと上を見れば2体の機械生命体がもつれ合っている。

一体は赤目で、もう一体は銀色のバイザーをしている小さいロボットだ。それを見た瞬間、私のおじいさんの言葉が蘇った。

ーーワシはなぁ、ディセプティコンっちゅー悪い奴じゃったが、ディセプティコンに従っとるとアサちゃんを殺さんといけんくなるけんのう!詩織も赤目のロボットが他のロボットを殺そうとしちょるのを見た時ゃあそのロボットを助けちょくれな!

「すみません、それ貸して!」

「は?おいちょっと…!」

私は近くにいた軍人さんのロケットランチャーみたいなのを無理矢理かっさらって赤目の機械生命体に標準を合わせる。

「お前、それ撃てるのか?」

「撃てるか撃てないかじゃない…撃たなきゃならないんです!」

そう言って私はロケットランチャーを赤目の金属生命体に向かって撃った。初めて使ったけど…これは火事場の馬鹿力ってやつだな…。ミリオタの友人に感謝せねば…。

「ひゃっほう!ナイスショット!」

弾は赤目の金属生命体に当たったみたいで、バイザーをしている小さい金属生命体は彼から解放されたらしい。うん、とりあえず良かった。

そう思ってたけど、私の身体は全然大丈夫じゃないみたいだ。軽く肩が脱臼したみたいで、ガシャンとロケットランチャーみたいなのを落としてしまった。

<虫ケラめがぁぁぁああ!>

赤目の金属生命体がこっちを認識したらしくて、こちらに来てしまった。みんなごめんなさい。

「下がってろ!」

軍人さんがそう言って前に出てきてくれたけど、すぐに大きな赤目の金属生命体に弾き飛ばされてしまった。

「あっ、」

思わず声を上げてそっちの方を見たけど…一番危ないのは私だ。めちゃくちゃ凶悪な顔がこっちを睨んでらっしゃる。超怖い。

「っ、」

<フン。俺様に歯向かってくるからどんな奴か面を見てやろうと思えば、脆弱そうな虫ケラのメスか>

何という言い草だ。そう思ってるけど全然言葉にならなくて、ただただ身体がきゅうと縮み上がっていることしか分からない。

<だが、お前のような奴をペットにするのも良いな>

そう言ってこっちを睨みつけながらも私をつまもうとしている。これは…終わったかもしれない。そう思っていたら、後ろで赤と青の大きなロボットが出てきた。

<メガトロン!>

<チッ!プラアァァァアイム!>

赤目の金属生命体は私のことなど最初から眼中になかったかのように赤と青のロボットへと向かって行った。何とか命だけは助かったらしい。

とりあえず、ここから逃げて早く日本に帰ろう。そう思って何とか脱臼した肩を戻して(泣き叫びそうなくらい痛かった)、この街からはなれることにしたのだった。

もちろん、後ろから聞こえてくる(多分)私を呼び止める声を無視して。

ただ、まさかここで私が彼らを助けたことにより、ディセプティコンにも地球にいる彼らにも目をつけられるとは思ってもみなかった。

What a day!
(なんて日だ!)


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