She is surprisingly popular.
とりあえず、1日目は特に何も起こらずに(夕飯時にレノックス大佐の娘ちゃん自慢を聞かされたくらいだ)終わった。エップス氏にはお前地雷踏んだなって呆れられたけど。
どうやらレノックス大佐は少しでも家族の話になると終わらないらしい。ずっと離れてるから恋しくなるんだろうな。まぁ、子供が娘さんだったら恋しくなるかもなぁ。
ちなみにエップス氏は3人位のお子さんがいるらしい。みんな元気な子なんだとか。アナベルちゃんもエップス氏のお子さんも見てみたい。
「詩織はそういう子供がほしいとかはないのか?」
「子供の前に相手ですね。いらないですけど」
「お前…冷めてるなあ」
そんなことを話しながら朝ごはんを食べていると(1人で食べていたはずがいつの間にか2人が来た)、別の隊員の人が話しかけてきた。
「えっと、詩織、だよな?」
「はい。初めまして」
「お、おう。えっと、外でジャズが待ってるらしいんだが…」
「……?」
何故、という疑問がわきあがったが、今目の前にいる彼に聞いてもきっと解決できるわけではないだろうということで、私はご飯もそこそこにトレーを持って返却口に持っていく。
「すみません、ごちそうさまです。すべて食べなくてごめんなさい」
「わざわざそんなこと言いに来たのかい?あんた律儀だねぇ!」
食堂にいる隊員さんがケラケラ笑いながらトレーを受け取ってくれる。私はもう一度謝罪して食堂を出て、それから出入り口へと向かう。外に出ればジャズ将校がいた。
「どうされたんですか?」
<ラチェットがな、詩織に話があるって言ってるから迎えに来た>
「分かりました。すぐに向かいましょう」
ジャズ将校はすぐに車になると助手席を開けてくれた。私は助手席に乗ると、すぐに発進した。っていうか、これって…。
「レノックス大佐呼ばなくてよかったんですか…?」
<とりあえずお前に話があるらしいぜ>
ジャズ将校はそう言ってトランスフォーマーたちのいる格納庫までやって来た。格納庫までやって来たら、ドアが開いたので彼から下りる。
<やぁ、詩織。待っていたよ>
「おはようございます、ラチェット軍医」
<ジャズから話があるということは聞いているかね?>
「はい」
<それなら話は早い。君にわたしたちの手伝いをしてもらいたいんだ>
「手伝い、ですか?」
手伝いと聞くと楽そうに聞こえるけど、ラチェット軍医の話を聞いてみると戦闘があったときなどは損傷が激しい状態になるから少しでも全員を早く治すためにラチェット軍医とジョルト氏をサポートする専用の人間が欲しかったらしい。
<もちろん、その分レノックスに掛け合って働いた分の対価は出してもらうつもりだ>
「はい」
<それで、だな。私が教えたいのだが、時間が開いていない可能性もあることを考慮すると、ジョルトに教育を一任しようと思っているのだが、大丈夫だろうか?>
「私は構いません。彼がそれで良いのであれば」
<えっと、僕もまだまだですけど…教えられることは全力で教えます!>
ジョルト氏はそう言って手を差し出してきた。これは握手、ということで良いのだろうか。
ジョルト氏の指を握れば、彼のフェイスパーツが柔和な表情を示した。うん、これで合ってたみたいだ。
<よし、あとはレノックスに打診するだけだな>
ラチェット軍医の言葉にそれを格納庫で聞いていた他のトランスフォーマーたちは何だかちょっとウキウキしているみたいだ。
「これからジョルト先生、ですね」
<何だか、その言い方は照れますね>
<普段ジョルトも私に向かってそう言っているじゃないか>
<いざ、自分がその立場になるとやっぱり照れます>
ラチェット軍医の対応を見る感じ、ジョルト先生はまだまだ若いトランスフォーマーらしい。それでもわたしたちからしたらものすごい長生きだけど。
<朝早くに呼び出してすまなかったな。あとは自由にしていて良いぞ>
「はい。失礼しますね」
ラチェット軍医にそう言われて格納庫から出ていこうとしたら、ヒョイッとジャズ将校につままれた。一瞬で地面が遠ざかって鳥肌が立つ。
「あの、いきなり持ち上げるのは怖いのでやめていただきたいのですが…」
<ん?悪い悪い。なぁ、一緒にドライブでもしないか?>
「そう、ですね。寮の中もまだ把握はしていませんが、まだまだ多くの施設があるので説明もしていただけると助かります」
<かてぇなぁ。ま、いっか。じゃあ一緒にドライブだ!>
そう言ってジャズ将校は車にトランスフォームしてドアを開ける。わたしは来たときと同じようにジャズ将校に乗ってNESTの施設を紹介してもらった。
その間にも色んな隊員さんとも話して少しだけここがどういう軍隊なのかっていうのも何となく分かった。
「ありがとうございます。大体、覚えられたと思います」
<おう、それなら良かったぜ。今度は基地を出てドライブしようぜ>
「そう、ですね。もう少し先になりそうですが」
<ずっと待ってるから大丈夫だぜ!>
そう言ってジャズ将校は軽やかなポップスを流しながら寮の前まで来てくれた。寮の前までくれば私は彼から下りる。
<じゃあ、おやすみ詩織>
「おやすみなさい、ジャズ」
<お、おう…!>
ジャズ将校は少しばかりどもってたみたいだったけど、何かあったんだろうか。そう思っていると、丁度今日何かしらの当番があった隊員さんが戻ってきた。女性ばかりだ。
「あら、ジャズと詩織、だったかしら」
「はい。初めまして」
「ふふっ。礼儀正しいのねっ。そんなに堅苦しくしないで仲良くしましょう?」
「あ、はい…」
女性隊員たちは楽しそうに笑っている。ジャズ将校はちょ、とかおい、とか必死に女性隊員たちをかき分けようとしていた。
「あ、そうだ。私達このあとご飯を食べに行くんだけど、一緒に行かない?」
「はい、ぜひ」
<ちょ、ちょっと待てって!まだオレ詩織と話してたかったのに!>
「えーっ、ジャズったらここ最近ずっと詩織と話してるじゃない」
「そうよ。昨日と今朝はレノックス大佐とエップス曹長と一緒にご飯食べてるし!」
何だか、申し訳ないなぁ。そう思いながら聞いていると丁度レノックス大佐とエップス氏が戻ってきたらしい。
「お前たち何やってんだ?」
「ジャズが詩織を独り占めするんですよっ!」
「私達だって詩織と話してみたいのにっ!」
「アーシーたちだってずっと詩織と話したがっていたんですよ!」
「お、おう…」
女性陣の剣幕にレノックス大佐もエップス氏もドン引いてる。私も苦笑いでその様子を見ることしかできない。
「あの、とりあえず皆さん今からシャワーを浴びたり…」
「そうね。私達ちょっとシャワーを浴びてくるわ!」
「それまでちょっと待っててくれる?」
「はい、もちろんです」
女性陣がシャワーを浴びている間はジャズ将校と話そうと思う。女性陣は行ってくるわ!と意気揚々とシャワーへと向かって行った。
「詩織、人気者だな」
「……珍しいだけだと、思うんですが」
「まぁ、日本人なんてそうそういないからなぁ。かくいう俺も日本文化には興味があるんだけどな」
「で、詩織はあいつらを待ってるのか?」
「はい。ご飯を一緒に食べようと言われまして」
「そういうことか。今日もお前にアナベルのこと聞いてもらおうと思ったんだがなぁ…」
<「やめてやれよ…」>
ジャズ将校とエップス氏の声が重なった。結局その後は彼女たちが戻ってくるまでジャズ将校やレノックス大佐、エップス氏と一緒に色々と話していた。
She is surprisingly popular.
(彼女は意外と人気者)