兄のことはよく知らない。僕が物心つく前にどこかへ行ったからだ。
話に聞く兄は道を踏み外すために生まれてきたような外道だったという。
じゃあなんで会いたいんだと問われても、多分答えられない。
兄について聞けば僕に甘い両親もあからさまに苦い顔をした。親戚連中の集まりでたまに出てくるアレ、という言葉が兄を指すのだと知ったのは十を越えたあたりだった。
皆が口を揃えて兄は最低の人間なのだという。それでも僕は兄に会いたいと思う。
家族なんてそんなもんじゃなかろうか。居るなら一度は会ってみたい。似ているのか、似ても似つかないのか。僕のこと、覚えているのか。
それに関しては期待はできなさそうだけど。

「だからほら、早く連れてきてね」
すっかり居ついた猫が今日も僕には目もくれず餌を食っている。

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