あれから一度も、先輩には会っていない。
季節は、完全に冬になっていた。

星だと思った。光るということ。星が光を増すということ、私は目を逸らしたのだ。
気付かないふりをした、そして先輩もそれを望んだ。
知らないなんて、嘘だ。尋ねなくたって、答えなくたって、わかることはあった。気付くことはあった。
ただ、お互い気付かないふりをしていた。

毎週水曜日、図書室に来なかった先輩。
あの帰り道に、私に星座を教えた先輩。
先輩が嘯いた、"昭和天皇の御心"の意味。
終わるとき、世界を変える星。
光を増す、星。

私は先輩に踏み込まなかったから、あの人は私を選んだのだ。
まったく縁もゆかりもない、ただの他人だったから。
それがわかるくらいに、多分、私たちは似ていた。

「先輩は、残したかったんですよね」

星みたいに、消えてなお誰かの世界を変えたかった。
家族でも友人でもない赤の他人が、古橋光樹を思い出すように。
図書室に行くたび、星を見るたび、本を開くたび、自分が生き返るように。


後葬、超新星

私の世界を変えた先輩は、確かに星だったのだ。

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