「も、何なん、さっきの……」

身体の熱が落ち着いてきて頭も冷えてきたら、さっきまでの自分が恥ずかしくて仕方なくなってきた。横になったまま力なく呟くと、謙也さんの申し訳なさそうな顔に覗かれる。

「俺にもようわからん、けど、すまん」
「謙也さんが俺の心を読むときは、ああいう感じになったりしないですよね」
「あそこまではならへんけど、確かに、ちょっと気持ちええかなぁ」
「あ、だからいつも早漏気味なんですか」
「それや!…て、早漏言うなや!」

いつものノリのやり取りに安心して笑う。宇宙人でも何でも、謙也さんは謙也さんだ。俺が出会って好きになったのはこの謙也さんなのだ。

「何ひとりで笑てん」

髪に触れてくる指先はやっぱり謙也さんのもので、優しさを纏っている。その指先を掴まえて、謙也さんの目を見た。

謙也さんやなぁって思ったんです。

「はぁ?」

好きです。好き、です。

口から出るときには反対の言葉になっていたり、他の言葉に隠れてしまうことが多いけど、心の中では裸の感情が素直に存在している。心を読まれてしまうのは厄介だと思うけど、素直な気持ちを伝えるためだったら、たまには読まれてやっても良いかもしれない。

見つめていると、その顔がだんだん赤くなっていく。

「…あのな、さっき心読んだときちょっと気持ちええって俺言うたやん」
「言うてましたね」
「それ、言葉に含まれる感情の度合いに比例すんねん」

つまり、自分を想ってくれている感情が強ければ強いほど、身体に点る熱の温度が高くなるということらしい。だから、最初に謙也さんの心を読んだときは何も起こらなかった。そして二回目のときは―――、そのときに身体に流れた熱を思い出して、耳元が少しくすぐったくなる。

「光、」

名前を呼ばれて、熱っぽい瞳に誘われるままに、謙也さんの背中に腕を回して引き寄せた。

「そういう気分になったってことですよね」
「……正解」

謙也さんがへらりと笑う。

だらしない顔になってますよ。

つられて笑いながら、唇に噛みついた。









「んッ、…っ、」

中に突っ込まれた指が二本に増やされて、圧迫感に顔が歪む。お互いスイッチが入っているからか、いつもより急いたセックスで慣らしきれていなかったのだ。

「すまん、痛かった?」
「ん、へい、き、っす」
「一回抜こか」
「平気、ですって」
「平気ちゃうやろ」

身体に触れて目を合わせてる今、嘘は通用しない。多少の痛みは耐えようと思ったけど、謙也さんは優しいから。

「……ずるい」
「無理させたくないねん」

指がゆっくり抜かれる。はー、と深く呼吸をして体勢を整えて、そしてまた指一本から慣らしていく。今度は上手くいくように丁寧にしてくれて、謙也さんのものを受け入れられるまでにそこは解れた。

「力抜けるか?」
「ふ、……ぅ、大丈夫、です……うぁっ」

ゆっくり押し入ってくる熱いそれに、下腹部が苦しくなる。そして苦しいけど、気持ちいい。
ついに根本まで入って、両足を開かれて見下ろされている体勢で一旦呼吸を落ち着かせた。少し乱れた金色の髪とかじんわり汗をかいている額に触れたくなって腕を伸ばしたけど、微妙に距離が足りない。背中を起こそうとすると、謙也さんが腕を回して支えてくれた。
座って抱きかかえられる形になって、かえって手で触れるには近すぎる距離になったから、代わりに目の前の額にキスをして、ぎゅうっと抱きつく。

「謙也さんは、優しすぎる」
「そぉか?」
「心を読んでまで優しくするから、ただの中学二年生にそれがバレたんですよ」

それを聞いて、謙也さんが小さな音で笑った。

「好きな人のために何かしてやりたいって思ったら、つい動いてまうねん」

回した手で、背中を優しく撫でられる。

「恋なんて、人間特有のもんやと思うてたし、面倒なもんやと思うてたけど」

その手が腰の辺りを掴んで、上半身を離す。再び目に映ったのは、謙也さんの真剣で優しい顔だった。

「せやけど、光に出会って、人間でない俺にも恋ができることがわかったし、光に恋をしてよかったと思う」

おおきに、と言って優しい優しいキスをされる。心臓から溶けてしまうかと思うくらい、身体中甘くて嬉しくて幸せでいっぱいになった。

謙也さん、好き。大好き。

胸の中で言葉にして、伝える。受け取ってくれた謙也さんの嬉しそうな瞳が、真っ直ぐ俺を見る。

『俺も好きや、めっちゃ好き』

聞こえてきた言葉とともに、快感の波が全身を襲った。さらにゆっくり腰を揺さぶられて、頭の中が真っ白になる。

「あ、アカン…っ、け、んや、さ……あ、ッ」
『好きやで、ひかる』
「も、それ、アカン、って……ぅあ、あっ、ぁ、…!」

追い討ちで奥を突かれて、自分と謙也さんとの腹の間で勢い良く射精して、同時に謙也さんも俺の中で果てた。








セックス後の処理を済ませて、二人でベッドに横になる。お互いしばらく無言になって、俺は言わなくてはいけないことを思い出した。
謙也さん、と声を掛ける。

「あの、ああいうときに心読ますのやめてくれません?」

気持ちいいけど、わけがわからなくなるほどの快感に飲み込まれるのは怖いし、やっぱり恥ずかしい。

「すまん、つい」
「つい、て」
「ええやん、エロくなる光おもろ……可愛いし」
「おもろくないし、最低」

こっちは大変だったのに、おもしろいと思われていたなんて。
ベッドの上でできるだけ離れて機嫌の悪さを示すと、ひかるぅ、と情けない声が聞こえてきた。

謙也さんは謙也さんだ。それはこれからも変わらない認識。






宇宙ができて137億年、人間だけでなく宇宙人も恋をする、ということを知ったのは、きっと俺たちが一番最初なのかもしれない。





おわり




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