「…舐められるん初めてやんな?人に触られるんも初めて?なぁ?」
「……っ…ぅ…!」
「気持ちええなら我慢せんでええよ。」
「ッ…ん…んんーー!!」

根元まで口に迎え入れて、優しく手で袋を揉んでやると、先っぽからしょっぱいような苦いような先走りの汁がとろとろと溢れてきた。
それは決しておいしいと言える味ではなかったけど、ちっとも不快ではない。もっと味わいたいとさえ思う。

「…はっ、ん…あ、あかん…!」

唇で扱くスピードを上げると財前はピンと足を伸ばして、俺の頭を慌てて引き剥がそうとした。
その所作から達しそうなのだと分かったけど、俺は唇を離す気はさらさら無い。
程なくして口いっぱいに生温かくて、生臭い味のする液体が広がって。俺は迷うことなくそれを飲み干した。

「うぇ、うーーにがっ!」
「…は、はぁっ…信じられへん…!の、飲んだん…!?」
「あんまうまいモンやないな。せやけどこれで信じてくれた?俺はお前をちゃんと男やって認めた上で、えっちしたいって言うてるんやけど。アカンか?」
「………アカン……です。」
「ん?何やって?」
「……アカン訳…ないです。」

こんな風に赤い顔で、色っぽく息を乱しながら言われたら、もう拒否されていても関係なかった気がする。
幸いここにはローションなんてものも備え付けてあったし、聞いたことあるかもしれないくらいのあやふやな知識ではあったが、手探りで男同士でセックスをするための下準備をしてみた。
やってみるまで俺も信じられなかったが尻の穴というのは滑りさえ良ければ指くらいのものなら案外するすると抵抗なく入っていくのだ。
やられている本人にしたらそう簡単なものではなかっただろうけど。一本、二本と順番に増やして中を広げるようにかき混ぜると少しずつ中が柔らかくなっていく気がした。
女の子とはまた違うそこは熱くて、入口が狭くて、指に吸いついてくるみたいで、入れたらどれだけ気持ちがいいのか想像もつかない。
もうとっくに我慢は限界を越えてたけどどの程度解したらいいのかとかよくわからないし、焦れた俺は一回自分で処理した。
なのに唇を噛みしめて必死に堪えている財前の顔を見たら一瞬にして復活してしまって。
自分の性欲に呆れながらも余る程に置いてあったコンドームの一つを素早く装着した。

「…財前、そろそろ入れてええ?」
「……はぁ…はっ…はい…。」

財前はもう下準備だけで大分ぐったりしていたけどもちろんやめてやることなどできない。
足を抱えあげるようにして股を大きく開き、ローションを塗りたくった自分の性器を彼の入口にあてがった。
くちゅ、と音を立てて先っぽが入っただけで眩暈がしそうになった。すごい締めつけだ。
少しずつ、ゆっくりと、指よりもかなり慎重に中に入っていこうとしたけども、抵抗が大きすぎて半分もいかないうちに止まってしまう。
やっぱり指と性器では太さも質量も違いすぎた。

「…っ…キツイわ、力抜いて…ッ…!」
「っ…ぅ…はッ……!」
「よし、えらいでっ…もうちょい、もうちょいやから…!」

一瞬だけ締めつけが緩んだ隙を見計らって強引に腰を進めると、何とか根元まで全部収まった。
一度入ってしまえば彼の身体は抵抗など見せず俺の性器をきゅうきゅうと嬉しそうに咥え込む。
財前自身は青い顔をしていて、辛そうだったけど俺はもう気持ち良すぎてこれ以上待てそうにない。

「う、わ…これアカン…良すぎるやろ…!」
「…ぁ、ちょ、そないいきなりっ……ん、ぁ、あっ…!」

財前の腰をがっしりと掴むと、今まで耐えていた分の欲望を解放して、思いのままに突き上げた。
中も気持ちいいけど入口の締めつけがやっぱりすごくて、気を抜いたらうっかり達してしまいそうだった。
彼も少しは感じてくれているのだろうか。痛みのためかすっかり萎えていたそこが勃ち上がっているのが何だか嬉しかった。
そんな風に思うのも変かもしれないけど。

うん、変なんだろうな。

自分の浅ましい欲望を満たすためだけに行われる行為のはずだった。
それなのに彼に対するこの感情はどうだ。

「…はぁ…ざいぜん、めっちゃ、気持ちええっ……!」
「け、んやさん…けんやさん…す…き…!」
「……あほっ…それめっちゃ反則や…」
「んっ、ん…んんーーーー!!」

いっつも本当に可愛くない癖に。
他の後輩と違って愛想も無いし毒ばっかり吐いて、俺が構ったって仏頂面しか見せない癖に。
こんな時にそんな可愛いことを言って可愛く笑うのは卑怯以外の何物でもないと思う。
ずるい事ばかり言う唇を塞いでやったけど、逆に興奮してしまったというか、さっきより何百倍も財前のことが愛おしく思えてしまってもう駄目だった。

「……ッく…アカン…!」
「…あっ…ん、けんやさんッ…!」
「〜〜〜〜〜〜ッ!」

一度抜いていたし、もう少し持つかと思っていたのに。思いきり最奥を穿った瞬間に俺は呆気なく絶頂を迎えてしまった。
財前もそのあとすぐに小刻みに震えて、俺の腹に精液をどくどくと吐き出した。

「…財前…かわいい…!」
「はぁっ…はぁ…う…っく…う、れしい…ッ…。」
「えっ、ちょ、おま、どないしてん!?」

汗でびっしょりと額に張り付いた前髪を分けて、そこに唇を落としてやろうとしたその時だった。
思わずぎょっとしてしまった。肩で大きく息をしながら嬉しいと繰り返す財前の目からは、ポロポロ涙が零れ落ちていたから。
身体が辛いのかと思って慌ててまだ挿入したままだった性器を引き抜いたけど、どうやら原因はそれではなかったらしい。

「すまん!へ、平気か?どっか痛いんか?」
「…うっ…う…ううん、嬉し…謙也さんが俺のこと抱いてくれるなんて…夢みたいや…。」
「……………へ!!?」
「こんなん一生叶わへんって思ってた。俺は男やから。女みたいに謙也さんの事、身体で満足させることできんと思ってた。せやけど謙也さん、俺でイってくれたから。痛かったけど、ホンマに…うれしい。」

本当に知らなかった。全くもって気が付かなかった。

確かにさっき最中に好きとかそんな事を言われたけどそれはベッドの上での睦言みたいなものかと思って本気に捉えてなかった。
今まで一切そんな素振りを見せなかった癖に、この後輩はどうやらずっと俺のことをそういう意味で慕っていたという事らしい。

それが分かった瞬間、認めまいと抑え付けていた感情が一気に溢れ出すのを感じた。

俺は財前が男だと知りながら、その身体に欲情して、実際に抱き、行為の余韻が醒めた今も何より愛おしいと感じているのだ。

「……すんません。ちょお、もう一回シャワー浴びてきますわ。」
「…………財前…」
「こんなん言われても迷惑やってな。頭冷やしてきます。戻って来たらいつもの俺に戻ってるんで、先寝とって下さい。」
「財前ッ…!!」
「…………え?」

ふらつく足でそそくさとベッドから離れようとする財前を後ろからきつく抱きしめた。
逃がしてたまるものか。いつもの彼に戻られたら困る。今日の事を無かったことにされたら俺が困る。

「…最初に言うたん、やっぱナシや。」
「……何がですか?」
「今日の事は水に流してやらん。絶対忘れへん。…ちゅーか、またしたいんやけど。アカンか?」
「…ッ…アカン訳ないです…!」

好きという言葉はまだこの場で伝えるのは早すぎる気がしたから喉の奥に引っ込めた。
財前にだって男のプライドはあるだろうに。
それを捨てて抱かれてもいいと思うくらい俺のことを好いてくれていた彼に対してこんなところで伝えるんじゃ何だか失礼な気がしたのだ。
その場の雰囲気じゃなくて、家とか、学校とか、その辺の公園とか、きっと何のロマンの欠片も無い場所でだって彼のことが好きだと言えると証明したいから。

そう決めたはずなのに。
夜中に寝ぼけて胸元にすり寄ってきた財前が可愛すぎて、思わず抱きしめて『好き』と言ってしまった。
財前は薄っすらと目を開けて笑った気がしたけどもたぶん明日には忘れているだろう。

俺は絶対に忘れないけど。





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