夢の中と違い、現実に組み敷いた身体は想像以上に官能的だった。
恥ずかしそうに顔を赤らめ声を抑える姿は夢魔にはなかった仕草で、謙也はそれだけで達しそうになったほど。
気付けば空が明るくなるまで、その身体を離すことが出来なかった。


「…ヤり過ぎ、」

枯れた声で恨みがましく呟くけれど、その中に含まれる甘さに謙也は小さく笑う。

「堪忍、…可愛過ぎてあかんかった」

触れるだけの口付けを落とし、怠そうに横たわったままの髪を撫でてやる。
腰の痛みを訴える光を抱えてシャワーを浴びさせ、新しく変えたシーツに寝かせるとそれ以降一切動かなくなった。
加減なんて出来なかったから、きっと今日は1日このまま光の下僕と化すのはわかっていても、それすら今は幸せで。

今まで気付かなかった恋心を夢魔のひかるによって気付かされ、溢れ出した想いを止められないまま、きっとこれから先もこの可愛い恋人を甘やかすだけ甘やかしてしまうのだろう、そう簡単に予想出来る自分の将来を思い描き、謙也は肩を揺らして笑った。

「謙也さん、キモいっすわ…」

突然笑い出した自分を、変わらぬ毒舌で斬り捨てる可愛い唇をまた塞ぐ。甘い時間だけが、2人の上を流れていった。






光に想いを告げ、受け入れて貰い、その身体を抱いた日から夢魔のひかるは現れなくなった。
謙也の子を孕んだのかは知らないし、もしかしたら上手くいかず他の男に乗り換えたのかも知れない。
それでも謙也はひかるに感謝していた。
例え謙也の血を受け継ぐ子を成していたとしても、それは現実の自分には関わりのないこと。
それよりもこの可愛い恋人を手に入れるきっかけをくれたのだから、これから先二度と交わることのないだろうひかるに唯一出来たプレゼントだとすら思えるようになった。








だから謙也は知らない。





それから数ヶ月の後、人間と夢魔の血を引く、ハーフのインキュバスが遠い世界で生まれたことを。






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