【は〜なこさん遊びましょう】

【…………………】

【なんだやっぱり花子さんなんて噂じゃん。帰ろ帰ろ!】

【そうだね、カラオケでも行こう!】

【………は〜あ〜い〜】

【…え?なに?冗談やめてよ】

【今のあたしじゃないよ…!!!】

【じゃあ誰なのよ!?】

【…ッ…キャーーー!!!!】




トイレの花子さん。


花子さんの話は誰もが聞いた事のある学校の怪談。三番目のトイレにノックをして声をかけると誰も居るはずのないトイレの中から声が聞こえその声の主花子さんに引きずりこまれるという。



「花子さんやってもいい?」

「ですが、女子トイレに私達は入れません」

「僕が入ってあげようか」

「ほんと!?白澤くん!」

「セクハラですよ」

う〜ん、困ったなぁ…私一人じゃ検証ができない。

「なんの話をしてるのォ?」

と、そこに来たのは同じクラスのお香だった。

「お香!」

「お香ちゃ〜ん!今ねトイレの花子さんをやるかやらないか話をしていたんだ」

「そうなの?おもしろそうねェ。やってみたいわァ」

「「「あ……」」」

「…?」






そんな訳で、トイレの花子さんは私とお香でする事になった。

マキちゃんとミキちゃんも誘ったけど、この後雑誌の撮影とかなんかで残念ながら一緒にやる事ができなかった。

「やっぱり君達二人じゃ心配だから僕も行くよ」

そう言いながら女子トイレの中に一歩踏み出した白澤君の首元のシャツを鬼灯君が力強く引っ張る。

「あなたは、この私と一緒に待つんです。…ななしさん危険と感じたらすぐに私達を呼んでください。必ず」

「そうだよ、すぐに僕達が駆けつけるからね」

「うん!有難う」

「気を付けてくださいね、ななしさん」

「大丈夫、お香も居るし!いざとなったらあたしがお香を守る!」

「あらァ、頼もしいわァ」

「よし、じゃあやろっか!お香」

「そうねェ、行きましょうか」

私とお香は三番目のトイレの前に立つ。なんだか、緊張するけどもし何かあったら私がお香を守る!私から言い出したし!

「…じゃ、じゃあ行くよ」

「…そ、そうね」

コンコンコン

「花子さん居ますか」

「………」

「………」

「………」

「………」

「………」

「…へ、返事がない屍のようだ

「…やっぱり花子さんって居ないのかしらねェ」


「………うん、そうだね。出よっか…」

これまで田中君や金ちゃんと出逢えたように花子さんとも出逢えるかと思ったけど、そう簡単に行くわけないよねぇ…

「そうねェ」

返事は待てども待てども返ってこないので、私とお香は出口へと足を進めた。

「やっぱりさ、花子さんも都市伝説にすぎないよね…」

「…噂はそう簡単に信じたらいけないわねェ」

「花子さんはやっぱり存在しないんだね」







「……いるよ

出口まであと一歩の時その声は聞こえた。

「…え?今の…お香?」

「…私じゃないわよ…?」

「…え…?…それじゃあ…」

確かに聞こえた声。私のでもなくお香でもないその声は背後から聞こえた。ゆっくりと、それはまるでホラー映画かのように振り向く。

トイレには私達しか居なかったはず。だから、声が聞こえるわけがないんだ。


もし、あるんだとしたらその声の主は………




「まじさ、花子さん花子さんってうるさいのよあんた達。こっちだってゆったりたっぷりのんびりしたい時だってあんのよ。なのにあんた達ときたら名前連呼するし、ドアノックしまくるわでぜーんぜんっ休む暇がないのよ!どんだけ好きなのよあたしの事。」

「………」

「………」

「でも……来てくれるのは少しだけ嬉しいわ。…あ、…べ、べつにあんた達の事好きで嬉しいと思ってる訳じゃないんだからねっ……」

そこに立っていたのは、赤いスカートを履いたおかっぱ頭のおとなしそうな美少女だった。

しかし、これが花子さんか、という驚きと顔と言ってる事がマッチしないという事につい私とお香は口をあんぐり開けて…いや、あんぐりしていたのは私だけだったけど二人して少女を凝視してしまった。

……う〜ん…ここは、ツンデレか!って突っ込みした方がいいのかな……こ、心なしか花子さんの突っ込んで欲しいという期待の目を向けられている気がする…

ここは日頃から突っ込み役として定着している私が突っ込むべきだよね…

「つ、ツンデレか!」

「……ところであんた達何しにきたのよ、あたし今から太郎とデートだから早めに済ませてほしいんだけど…」

あれ?おかしいな…あたし今無視…された…?目から涙がこんにちわしちゃったよ…………てゆうか太郎誰。

「あら、忙しいところごめんなさいねェ…私達は花子さんの都市伝説を確かめに来たのよ」

「…ふむ、そーなんす」

「いるわよ、てゆうか都市伝説にしてもらっても困るのよねぇ。そのせいで家族の名前だって知れ渡ってるみたいだし。名誉毀損よね、いい迷惑よ」

「まァ…それは酷い話だわァ…」

「え、花子姐さん家族居るんですか」

「姐さん?やめてよ、しかも、見たとおりあんたの顔の方が上じゃない」

うっ…今のはちょっと傷付いた…花子姐さんつえー…

「まぁ私だって家族くらい居るわよ。彼氏だって居るし」

「ふふ、羨ましいわァ」

「か、彼氏も居るんですか花子姐さん!」

どうやら、花子姐さんはどこにでも居る普通の少女だった。

「だからその姐さんってのやめなさいよ。彼氏は太郎っていうの。バスケが上手いのよ。夜中に体育館でやってるから今度見に来たら?」

「是非見に行きたいわァ」

「あ、あたしも行きたい!」

「ふふ、じゃあ私もう時間だから行くわね。あ、私いつもここに居るから遊びにくる時は三番目ノックしてよネ」

「はい!楽しんできてください花子姐さん!」

「また遊びにくるわねェ」


花子姐さんは少し気が強いけど本当は心根の優しい少女だった。白澤君と鬼灯君にも会わせたかったけど、彼女はまだ支度があるからと行ってトイレに戻ってしまった。

「ふ〜ん、僕も会ってみたかったな花子ちゃん」

「本当に居たんですね、花子さん」

「うん!今度このメンバーと花子姐さんカップルで遊ぼうね!お香も絶対遊ぼうね!」

「ふふ、楽しみだわァ」

あ、その時は田中君と金ちゃんも呼ぼう。






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