体がだるいと思い熱を測ってみると、あろう事か私は熱を出してしまった。恋は盲目、とはよくいったものだ。鬼灯様を想っては眠れぬ夜が続き食欲も日に日に湧かなくなった。それが、原因で免疫力が低下していたのかも。…私は少女漫画の主人公か!
「今日は仕事休まなきゃ…」
鬼灯様に憧れて入社し、晴れて私は閻魔殿で働けることになった。それももう数百年も前の事。しかし、数百年も働いていたのに恋心に気付いたのは最近のことだ。
「…はぁ…喉痛い…」
私は携帯を手に取って上司である鬼灯様に電話をする。クラクラする頭に無機質なコール音が響く。
《はい》
「あ、もしもし…おはようございます。鬼灯様今日は私具合が悪くて…お休みを頂いてもいいですか?」
「わかりました」
「有難うございます。お仕事中すいません…では、失礼します」
「はい」
大丈夫の一言くらいくれたっていいのに…鬼灯様のケチ…。
なんか…寂しいなぁ…
……もう少し鬼灯様の声聞いていたかったな
「はぁ…寝よ!」
コンコン
「失礼します」
「…え?鬼灯様!?」
声が聞きたい、なんて先程思ってはいたけれどこんなにも早く声が聞けるとは思ってもみなかった。
「具合はどうですか」
そういいながら、ベッドの横にあった椅子に腰掛ける。
「それが…さっき体温計で測ってみたら39度あって…」
「熱があるんですか」
「はい…お休み頂いて申し訳ないです」
「仕方ないですよ、お気になさらないでください」
「すいません…有難うございます」
「一人では辛いでしょう、たまに見に来ます」
熱があるせいか優しさが目に沁みる。今来てくれた事だけでもとても嬉しいのに。
「いえ、私は一人で大丈夫ですので休んでる私が言える立場じゃないですけど鬼灯様はお仕事頑張ってください」
「そうですか?わかりました。ではそろそろ戻ります」
「はい、頑張ってください」
「では悪化するといけないので静かに寝ていてくださいね」
なんだか、お母さんみたい…鬼灯様。
「ふふ、はい有難うございます」
部屋から出て行く背中をとめたい、けどそんな事をしたら鬼灯様も困るんだろうな。
数百年前は気にしていなかった事も、今では気になって仕方がない。鬼灯様の事がもっと知りたい、私の事も知って欲しいなどの欲も生まれ、
私の事を好きになって欲しい、なんて欲も出てくる。
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「なまえさん」
「起きてください、なまえさん」
心地のよい低い声が私を夢の世界から現実へと引き戻す。
「なまえさんおかゆ作ったんで食べてください」
「…ほーずき、さま?」
鬼灯様が起こしてくれるなんて夢みたいな感覚。熱のせいもあって感覚もふわふわしている。
どうやら、鬼灯様は私の為におかゆを作ってくれたらしい。味覚があまりハッキリしていないけど、美味しくて優しい味がした。
私が、食べ終わり薬を飲んだのを確認してから鬼灯様は仕事へ戻って行った。
鬼灯様ともっと一緒に居たい。仕事だけじゃなく、仕事関係以外でも。
どうしよう、
さっき別れたばかりなのに、もう会いたいよ鬼灯様
コンコン
「失礼します」
「鬼灯様…」
「具合はどうですか」
「おかげで少しよくなりました」
「でもまだありますね」
私のおでこに手を当てて熱を確認する鬼灯様。
私は鬼灯様の手に自分の手を重ねた。
手が触れ合ったその時、私の中のなにかが、好きの気持ちで溢れてしまったんだ。
「なまえさん?」
「………鬼灯様、好きです」
「………」
「私…鬼灯様の特別になりたいっ…」
「……なまえさん、付き合う事はできませんが」
「……」
「私にとって貴方は既に女性として特別な方です。その時が来るまで待っててください」
鬼灯様が出した答えは酷く曖昧なものだった。けど、距離は昨日よりも短くなった気がする。もし告白せずにいたら、関係はずっと変わって居なかったと思う。
もし、"その時"が来るとしたらちゃんと言って欲しいな。
でも、あまりにも遅過ぎたら私目移りしちゃうかもよ、鬼灯様。
ずーっと待ってますからね、鬼灯様
あとがき
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リクエスト有難うございますm(_ _)m
切甘という要素がひとつもない……!(笑)
ご期待に添えれなかったらごめんなさいまし
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