「あ、鬼灯様!」
「おやなまえさん、どうしましたか」
「この書類に判子お願いします。今日も鬼灯様は素敵ですね」
「分かりました。なまえさん他の男に言う時は気を付けた方がいいですよまったく」
やれやれ、と呆れる鬼灯様。私は、素敵だなんて言葉は鬼灯様にしか使わないのに。
好きになってくれる人を好きになれればいいのに、と何度思った事か。
「有難うございます。あ!これからお香ちゃんとお昼食べるんですけど一緒に来ます?」
どうせなら好きな人と一秒でも一緒に居たい。
「お香さんと?そうですね、仕事も片付きましたし行きますか」
仕事で仲良くなったお香ちゃんと、お香ちゃん関係で知り合った鬼灯様。三人でよく一緒に居るようになった。
「なまえちゃ〜んこっちよォ〜」
食堂に着きキョロキョロと辺りを見ていると綺麗で落ち着いた声が聞こえ、定食を頼み声がした方へと私と鬼灯さんの足は進む。
「鬼灯様もいらっしゃったのねェ」
と、頬を少し赤らめるお香ちゃん。あぁ、なんて可愛いんだろう。
「はい、なまえさんに誘われたので」
「ふふふ、嬉しいわァ〜」
口元に手を添え綺麗に笑う彼女を、私は到底真似できないと思った。それを見た、鬼灯様も表情に出しては居ないが満更でもなさそう。
「さァ、鬼灯様なまえちゃん食べましょう」
そのあと三人で他愛もない話をした。時々私がボケをかまし鬼灯様のデコピンをくらう様を見て、お香ちゃんは笑ってた。
恐らく二人は、想い合っているのかもしれない。もしかしたら、皆に内緒で付き合っているのかもしれない。なんて、誰かを好きになるとネガティブ思考になってしまうのは悪い癖。
あのあと、衆合にある自分の持ち場に戻り仕事をこなしていく。
「あれ!なまえちゃんじゃな〜い!今日はお店やってるの?」
「あ、白澤様!こんばんわ。お店やってますよ」
「じゃあ今日もなまえちゃん指名で行こうかな」
「本当ですか?嬉しいです白澤様」
「なまえちゃんのためなら僕はいつだって来るよ〜?」
白澤様は、私の唯一の癒しだ。少し変態な所もあるけど。ニコニコと話す白澤様の話を聞きながら座敷に通す。白澤様はなんでも話せる仲だ。
そして、
「あんな朴念仁やめなよ」
私が鬼灯様を好いている事を、唯一知ってる人。
「そんなすぐに諦められるんだったら悩まないですよ」
そう、できるならすぐに想いなんかとめたい。どうせ叶わないのだから。と、思いながら白澤様にお酌する。
「あんな奴の事なんかやめて僕にすればいいのに」
「ふふ、本当ですね。白澤様を好きなってたら何か変わってたのかもしれない」
そんなとき、失礼しますと声と共に障子が開かれる。
「なまえさん、」
部下の獄卒が焦りを隠しきれない顔で私の名前を呼ぶ。お客様がいる部屋に来るという事は、何かが起きたのだろうか、と白澤様が居る部屋から一旦出る。
「何かありました?」
「お香さんが……」
焦りながらも慎重に話してくれた部下の話を聞き、私は走って店を飛び出した。後ろでなまえさん、と呼ぶ部下の声が聞こえたが足は止まらない。
「お香ちゃん……っ……何処にいるの……」
話によると、お香ちゃんが亡者に誘拐されたとゆう。みんなで探し回ると亡者が逃げる為烏天狗にお願いをしたと言っていたが、大人しく待てるはずがない。
お香ちゃんの事を羨ましく思う事も妬む事もあった。だけど、私の中でお香ちゃんはいつまでも大好きな人に変わりないのだ。
お香ちゃんを誘拐した亡者が許せない、そんな事したら鬼灯様と私が許さないんだから。
そんな事を思いながら走っていると、衆合からかなり離れている廃墟らしき建物から男の声がする。もしかして、と廃墟に向かって走る。すると手足を縛られた状態のお香ちゃんを発見した。
だが、走った足音で亡者にばれて酷く激しい暴力をうけたせいで意識が遠のく。
身体中に走る激痛と、手足に違和感を感じながら私の名前を呼ぶ声で目が覚める。
「お香…ちゃん?」
「なまえちゃん…起きたのね…なまえちゃん…怪我を…私ったらなんて事を…」
どうやら、助けに来た私が捕まってしまったらしい。手と足が縛られてて思うように動かない。
「ううん、いいのお香ちゃんの為だったら骨の一つや二つどうってことないよ」
「なまえちゃん…」
「さっきね、鬼灯様に電話して話したらすごく焦ってたんだよ?やっぱりお香ちゃんの事になると鬼灯様は変わるね」
走っている途中鬼灯様に電話でお香ちゃんの事を伝えた時、少し声が震えてるような気がしたんだ。
「なまえちゃん…」
「だから、あともう少しで助けにくるよ。安心してねお香ちゃん。あたしもそばに居るから」
はっきりしない頭で安心するようお香ちゃんに伝える。くそっ、あの亡者のやつ少しは加減してよ、意識が飛びそうだ、けど鬼灯様が来るまで我慢だ。
「お香ちゃんが辛いと鬼灯様も私も悲しむんだよ?」
と、言ったあと、建物が壊れる音がした。
あぁ、来たんだなお香ちゃんの王子様。
金棒片手に黒い着流しを身に纏った鬼はこちらへ向かってくる。
そして
「お香さん!!」
彼女の名前を呼ぶんだ。ひどいよね。私の方が怪我してるのに、私の事なんて眼中にないんだ。あの人の目に映るのは、この子だけなんだ。
私は二人とも大切だけど、鬼灯様に大切な人なんて一人しか居なかったんだ。
手足の縄は、後から来た獄卒の人に解いてもらった。そのまま縛られてたら鬼灯様は縄を解いてくれたかな。
鬼灯様は壊れ物を扱うかのようにお香ちゃんを抱きしめている。
そんな二人を見て、視界が歪む。
「なまえちゃん?」
そんな時に現れた私のもう一人の大切な人。
「白澤…様」
「心配したよ、いきなり出て行くから」
横にしゃがんだ白澤様の優しい声を聞いた瞬間酷く安心した。
あぁ、そういえば仕事中だったな色々ありすぎて忘れた。
私がこうして考えている間、お香ちゃんは鬼灯様に連れられタクシーに乗っていた。
「まったく、君って子は一人で抱え込みすぎなんじゃないかな。さっきだって誰にも言わずに出て行ってさ?」
「だって……」
「でも、それだからなまえちゃんは目が離せないんだよ」
「今は僕となまえちゃんしか居ないんだから我慢してたモノ全部吐き出しちゃえばいいよ」
やめて、
「一人で泣くなまえちゃんの姿なんてみたくないよ」
やめて、
「泣けばいいよ。僕が胸を貸すから」
そんな私を白澤様は、鬼灯様がお香ちゃんにするように優しく抱きしめてくれた。
「なまえちゃん…良く頑張ったね。」
今までの思いが涙になって溢れたような気がした。
とまらない、とまらない、とまらない、
涙が枯れないように、私が鬼灯様を想う気持ちは枯れない。
「ほんとうに……ッ…ほおずき様は…私の事なんか…ッ…1ミリも気にしてないんだよッ…」
「さっきだって…さっきだって…一回も私の事……見てくれなかったんだよッ……ッ」
白澤様は、頭を撫でてくれながらうんうん、と話を聞いてくれている。
鬼灯様がお香ちゃんに向けた優しい目が、手が、酷く羨ましい。
「好きなのに……ッ」
私にもして欲しかった。お願いだから気付いて欲しかったんだよ?鬼灯様。
「だい、好きなのに…ッ……」
思い出すのは、鬼灯様と居た日々。
お香ちゃんだけじゃなく
少しだけでもいいから私も見て欲しかった
最初から叶わない恋だった
気づいてほしかった
でも、気付かれちゃいけない恋だった。
もし、
もしも、
次があるとするなら
鬼灯様、私だけを見てください
おわり
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2日?もかかってしまい申し訳ありません(z_z)初のリクエスト作品如何でしたか?お名前がわからなかったので名無し様と記しましたすみません(z_z)こんなにも早くリクエストを頂いて凄く嬉しいです!!!
なんだか、自分が満足できないお話になってしまいました……肝心の鬼灯があまり出ていないという…私はなんて事を……すみませんm(_ _)m
また、リクエストしてくだされば次は今の作品よりましな話が書けるかもしれません!もし、宜しければシチュエーションやらなんやらリクエストして頂ければご希望通りの作品になると思います!
日々精進して行くので、これからもよろしくお願い致しますm(_ _)m
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