今、あたしは古びた廃墟の前にテレビのスタッフ達と共にいる。元々は、病院だったらしいが入院患者が次々と自殺して終いには院長までもが自殺。そのあとは、院長の息子が跡を継いだが、経営困難になり夜逃げ。それからは、心霊スポットとして名を馳せこの状態になったそうだ。

と、いう噂がたつこの病院にこれから若手俳優さんとあたしは入るのか…致し方ない…もともと心霊系は好きな方だけど、いざホラーを見るとなると目を背けるタイプなんだよね、あたし。




【噂の心霊スポット廃病院に潜入!!恐怖は、あなたのすぐ後ろに…!!!】

こんな感じのテロップで、今日の撮影をするらしい。

芸能界に入ってから初の心霊調査だ。自分で言うのもなんなんだが、最近あたし超売れてるっぽい。テレビに沢山出させてもらってお友達も沢山できた。オッケーウフフハーイと頬を膨らませているハーフのモデルは親友だ。マブダチだよマブダチ。

そう、私たちはマブダチなの〜!ウフフ、は〜い!


「あ、なまえさん!スタンバイお願いしま〜す」

「ウフフ、もうスタンバイオッケーだよ〜!!ぷいんぷいん!!」

「…え?なまえさん…いや、ローラさん?」

「あ、いやすいません。本当にすみませんスタンバイオーケーです」

「見なかったことにしておきます…」

なんて良いスタッフだ

「はい、そうしていただけると助かります…」





――――――この時、私はあんな恐怖が襲いかかるなんて思ってもみなかった。




「じゃあこれから廃墟に入るんで一回病院の前で撮影します」

「はい、よろしくおねがいします」

そんな感じで着々と撮影は始まっていって中に入ろうとしたときに、なにげなく二階の窓を見ていたら男の人が通った、気がした。

中にもスタッフさんいるのかな?



中に入り廊下を進む。今日は、稲川淳二氏も共に付いてきてくれるらしい。

「ここは思ったよりもみょ〜〜な感じがするねぇ〜…いやだな〜怖いな〜」

稲川淳二氏はそう言ったが私は霊感が0なもので、ぜんっぜんよくわからんのだ。

でも、やっぱり少し気味が悪いな…鳥肌も立ってき…て…ってあれ?

あれ?あれあれ?

みんな何処行ったの?

一瞬辺りが暗くなって懐中電灯の明かりが点いたときには、私一人だった。おかしいな、さっきまで稲川淳二氏が横に居た気がするんだけどなぁ。

「みんな、お茶目だな〜…みんなして迷子だなんて…へへっワロリンコ〜

集団迷子なんて、前代未聞だよ…。とりあえず、迷子のみんなを探さなきゃ!!

「病院のなか広いなぁ…しかも怖いし…探しても探しても誰もいない!…もしかして、私今異世界に居たりして…アダッ!!!!

歩いていたら、足に何かが当たった。

「え、なにこれ…」

懐中電灯を照らしてみると

「か、金棒?」

落ちていたのはそれはもう立派な黒い金棒だった。


え、なに?もしかしてこの病院やばい商売でもしてたんじゃないかな!?

と、心霊の恐怖とは違う恐怖を味わいながらも考える。なんでこんなとこに金棒が落ちているんだろう?スタッフさんに金棒なんか持ってる人なんか居なかったしなぁ…

「やっぱり誰かの落し物かな?よし、あとで警察に届けよう」

そう言って金棒を持ち上げた。

その時、廊下の奥の方から小さな灯りが見える。

あ、もしかしてみんなあっちにいるのかも、と思い走り出す。

「すいませ〜ん!!」

近付いて行くたびにハッキリしてくる人影。周りに人が居る気配もないし…スタッフさん達ではなさそうだ…。もしかしてあの人も迷子かな?

「こんばんわ〜。すみません、何してるんですか?」

と、声をかけてみた。あ、このキャスケット…さっき外から見た時に窓を通ったのはこの人か。切れ長の目をした顔立ちの綺麗な人だったが、着流しにキャスケットという世にも奇妙な格好をしているせいで台無しだ。

もし、言えるものなら言いたい

あんた、何があったんだって

「おや、来たんですねこんばんわ。今探し物をしているんです」

まるで来ることが最初から分かっていたという様な言い方に少し疑問を抱いたが話を続ける。

「ほんとですか?私も今迷子を探してるんです。急にみんな居なくなっちゃってて…ほんと困った人たちですよね〜」

「それ世間一般的にはあなたの事を迷子というんですよ」

「……??私が迷子?ウフフ冗談がお上手ですね

「いえ、冗談を言ったつもりはないです」

「ところで、どうしてこんな廃墟に?あ、もしかして…残念ですがこの病院もうやっていませんよ…?」

「何を勘違いしているんですか、私は廃墟を巡るのが趣味なんです」

ふ〜ん…なんかそれって…すごい趣味だな

「しゅ、趣味ですか、へぇ〜そういえば何探してるんですか?」

「金棒です」

もしかして…え、まさか…

「これですか?」

と、金棒を掲げてみた。

「おや、これです。有難うございます」

あ。この人、絶対ヤバイ人だ

「さっき歩いていたら拾ったもので…」

と、いいながら持ち主に金棒を返す。

「有難うございます、やはり、金棒を持てたんですね」

「?はい、持ちましたよ金棒」

「この金棒生きてる人間は持てないはずなんですがね」





あぁ、どうしようこの人絶対やばい人だ

しかも、ちょっと頭にエラーが発生しっちゃってる人だ。



ちょっと…いやかなり中二病を患っている人だ…。今まで中二病患者を近くで見てきたから分かる、


彼はもう手遅れだ



うん、逃げよう!!!唯一あったアイテムの金棒もあげちゃったし魔法なんて使えないし逃げるしか助かる方法はない!!レベルなんて明日上げればいい!!逃げよう!なまえちゃん!

「ははっ…アソコカラコエガキコエルー!オムカエガキタンダ!ソレデハシツレイシマス」

そういってぺこりと頭を下げて逃げようとしたとき

「おっと、そうは行きませんよ。この金棒が認めたという事は、もしかすると私の嫁になるお方かもしれません」

「な、なにをいって……」

「何処にも行かせませんよ」

そういって、さっきのキャスケットは何処にいったのか私の手を掴んだ男の額には角が一つ生えていた。






鬼灯は思った。


全て計画通り





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