そんな毎日(拍)





夏真っ盛り。俺らの愛の巣のエアコンがぶっこわれました。











「暑い暑い暑い暑い暑い」
「暑い言うたら余計暑なんで」
「もうムリほんまムリ絶対ムリ!あ〜〜〜〜〜もう!」
「ちょ、扇風機回してや!謙也さんやって暑いんやで!」



今日は二人とも仕事休みやからって昨日の夜エアコンガンガンに利いた部屋でセックスして、そのまんま寝てもうて、朝目覚めたらそれは動かなくなっていた。アーメン。



修理の人に来てもらう予定やけど、それまではこの暑さを扇風機1台でやり過ごさなあかん。今日は一日家でまったりいちゃいちゃするつもりやったんになぁ…。


暑いの大嫌いな光の機嫌は最悪中の最悪で、眉間のシワの深さは半端やない。目が完璧に据わっている。どっから見てもちっこいヤンキーやで。怖い。


「誰がちっこいねんボケェ!」
「あだっ!!」



どうやら心の声が漏れてしまったようだ。光の綺麗な足が俺の背中に蹴りを入れた。痛いっちゅーねん!




「あんなぁ〜俺やって暑いねんで?同じとこにおるんやからさぁ。」
「俺のが絶対暑い」
「今の話聞いとった?」
「昔っから俺が暑いのアカンって知っとるやないですかぁ〜」



もう暑い〜〜〜!って普段はしない貧乏ゆすりが止まらん光の顔を覗き込むと、たしかに顔が真っ赤やった。…ホンマに体調悪いんかな?



「光、ちょぉベッドの上行っとって」


暑くて抵抗する気も起きないのか、光はベッドまで行ってこてん、と横になった。俺は氷いっぱい入れたグラスに麦茶を注いで、更に冷えピタを冷蔵庫から取り出す。あ、扇風機もベッドの前まで移動させんとな。



「ほれ、これ飲み」
「…」
「おでこ出して。これ貼ったるさかい」
「んぅ、」
「ん、ええ子。」



飲みきった空のグラスを受けとって、光のお腹らへんにタオルケットかけてやる。汗拭いてやって、うちわで光のこと扇ぐ。うん、さっきより顔の赤み退いた気がする。




「光大丈夫か?しんどい?」
「や、大丈夫です。」
「うん。あとでアイス買うてきたるからな〜」



光の眉間にまたシワが寄った。せやけど俺はもう何年もこいつと一緒におるから分かる。これは照れとる顔。光、照れるとき眉間にシワ寄んねん。はは、可愛くないやろ?俺にとったら可愛くってしゃーないねんけど。



「…あんた、なんでそんな俺に甘いんすか」
「え、俺甘かった?」
「めちゃくちゃ」
「やって光顔真っ赤やったんやもん。熱中症なったら大変やと思って」
「………」
「あとせっかく一緒に住み始めたんに『こんな暑いとこ嫌や!実家に帰らせていただきます!』とか言われたらたまらんしな」
「本音そっちやろ」
「あ〜こんなんやからいつも白石に怒られるんよなぁ〜俺」
「………あんた、心広いですよね」
「そうか?普通やで」
「もし謙也さんが俺みたいに暑い暑い騒いどったら俺『暑い暑いうっさいねん!お前の存在自体が暑苦しいんやハゲ!死に晒せスピードスター(笑)が!』くらいは言いますよ」
「え、そんなに言われんの?!」



光がふにゃって笑った。これ、完璧気抜いとるときだけ見せてくれる顔。俺限定。



「あんた、ホンマに俺のこと好きやな」
「おん。好きやで」
「……あ〜えっちしたくなってきた」
「え?!」
「あ、しませんよ。それこそ死ぬんで」
「ですよねー…」
「あ、あとアイス。買いに行かんくてええです」
「え、要らんの?」
「ううん、俺も行く」



光は自分から一緒に行くって言い出したくせに外に出たら出たで暑い暑い騒ぎまくって、ギャーギャー言い合いながらコンビニ着いたらそりゃもう中は涼しくて。最初からここ来ればよかったやんなんて今更気付いて思わず笑った。


ハーゲンダッツ掴もうとした光の手を叩く。拗ねた顔してガリガリ君を持ってきた光がなんだか可愛くて。



照り付ける太陽。壊れたエアコン。60円のアイス。可愛い、可愛い君。


にやける顔をごまかそうとアイスにかぶりつくと、頭がキーンとした。


平凡だけど世界一幸せな俺とこいつの生活は、これからも続いて行くのやった。





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