Re;mind(拍)





先に好きになったのは俺。告白したのも俺。今も好きなのも、俺だけ?


俺がただの仲のいい後輩だった財前に好きやと打ち明けて、同性であるにも関わらず晴れて恋人同士になったのは今から3ヵ月ほど前のことやった。ちなみに財前からの返事は「別に付き合ったってもええですよ」だ。


元々懐いてくれとる自信はあった。せやけど付き合いはじめてから俺らに進展は全くなかった。ちゅーはおろか手を繋いだことすらない。第一、財前が俺を好きやと言ってくれたことなんて一度もなかった。



初めはそれでもよかった。財前と一緒におれるだけで楽しくて幸せやった。せやけど、どんどん不安が増して、ある結論にたどり着いた。


財前は、俺のこと好きでもなんでもないんじゃないか、って。



俺たちは部活でダブルスを組んでいる。財前は、もしも自分が俺からの告白を断ったらきくしゃくしてテニスが出来なくなるんやないかって考えたのかもしれへん。そう思うようになった。もしそうやとしたら、好きな子にそんな思いさせるなんて嫌や。俺やって一応その辺のプライドくらいある。財前のことすきやからこそ、確かめたいと思った。












付き合い始める前も今も一緒に帰ることはしていた。俺のたわいない話に財前は相槌を打つ。そんな空間も大好きやけど、今日は確かめなあかんことがある。



「なぁ財前」
「なんすか」
「俺な、お前のことめっちゃすきやねん」
「…そ、すか」
「ホンマに、めちゃくちゃすきなんや」
「はぁ、どーも」
「なぁ、財前は?財前も、俺のことすきやんな?」



「はぁ、まぁ……普通に」





あぁ、財前は俺の叶うはずのない恋心に付き合ってくれてたんやなぁって分かってしもた。ごめん財前。今まで、ごめん。
もう、離してやるから。





「財前、もう終わりにしよ」
「え」
「別れよ。今まで無理させてごめんな」



ホンマは別れたくないけど、財前にいつまでもだらだらと嫌な思いをさせたくない。やっぱり好きな子には笑っていてほしいから。出来れば俺の横で、がよかったんやけどな。



財前の顔をまともに見れなくて足元に目線を落とした。喉がゴクリと鳴る。財前が何も言葉を発しないもんやから、怖くなってチラリと顔を見た。


めっちゃ驚いた。財前の大きな瞳からは、ボロボロ涙が零れている。


「ちょ、財前!お前なんでそんな泣いとんねん!」
「う、ひっく、今、ま、で、ありがと、っした、」
「や、ありがとうちゃう!ここまで泣いとるお前見てあっさりあぁそうですか〜言えるか!」



なんで財前こんなになっとんの?…そんなん、俺との別れが寂しいっちゅー解釈するで。



「なぁ財前、お前俺と別れるの寂しい?」
「っ、別、に…」
「俺ともっと一緒におりたい?」
「そんなこと、ない…」
「俺に、すきでおってほしい?」
「………アホなこと言わんといてください」


言ってることは全然可愛くないけど、ボロボロボロボロ泣きながら言われたらもう可愛くて可愛くてしゃーない。


財前は素直になれないだけやんな。自分の思ったこと言葉に出来ないだけやんな。上手く言葉に出来ないのは、きっと俺よりももどかしくてつらいはずや。ごめんな、財前。もっと早く分かってやればよかった。


周りに人がいないのにかこつけて思わずぎゅーって抱きしめてしもた。



「え、」
「財前、別れる言うたんナシな」
「なん、」
「お前が俺のことそないにすきでおってくれるんなら別れる理由なんかあらへんもん」
「………あん、た、はっ!」
「へ?」
「あんた、は、俺のこと、嫌い、に、なったん、ちゃうんです、か…」



「嫌いになんかなれるわけないやろ。むーっちゃすきやっちゅーねん。」




そう言葉をかけると財前の瞳からはますます涙が溢れてきた。




「財前、お前が上手く言葉に出来へんなら俺が代わりに全部言うたる。その代わり、嫌なことだけはちゃんと嫌って言うてくれ。お願いや」
「………はい」
「なぁ、光って呼んでええ?」
「…別に、好きにしたらええやないですか」
「ほんなら光ちゃんって呼んでもええ?」
「しね」
「ははっ!その調子や」



光がこれからも俺の隣で笑ってくれるように、無理しなくてええように、俺は光のこと誰よりも分かってやりたいと思う。それに、今までは余裕なくて分からんかったけど、今なら光がしてほしいこと、表情から何となく分かる気ぃする。まぁとりあえず、な。




「光、目ぇ閉じろ。今からお前にちゅーすんで。」





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