かみさまのいちばんたいせつなもの





一応謙光です
パラレル!








人の子は、母親にあたる女性によって生み出されます。しかし、命を授けるのは神様なのです。
ひとつの人間になるはずの命は、悩んでいました。わからないことが、たくさんあるのです。



ひかる、どうしたのですか?そんなところでふて腐れて。くらのすけもゆうじもこはるも、ほかの命たちも近いうちに人となり生を授かろうとしていますよ。
神様は尋ねます。ひかるは、その命の名前です。


神様、ぼくにはわからないことが多すぎるのです。このままぼくは人間になってうまく生きていけるのでしょうか。
ねぇ神様、お願いです。ぼくがわからないことをひとつずつ教えてほしいのです。
ひかるは神様に聞きました。神様が微笑み頷いたのを確認したひかるは、続けて言います。
どうして人間は言葉が使えるのですか、と。


神様は答えます。
言葉は人が人と関わる手段です。それは時に愛に満ちていて、時に凶器にも成りうるものです。辛い思いも生きていればたくさんするでしょう。だけど最後には、愛を唱えてほしいのです。


ひかるは続けて聞きます。
なぜ人は二本足で歩くのですか。イヌやネコは四本の足を使います。手を使うためですか。何故人は手を使うのですか。


神様は答えます。
人間は手を器用に使って生活しています。スポーツをするのも、食事をするのも、誰かを抱きしめるのにも手を使います。
ひかる、人は何故手を二本持つのかを、考えてください。大切なものは片手で掴んではいけないのですよ。大事に大事に、両手で包むのです。私があなたにしてきたようにね。


神様、ならば人はどうして目から涙を流すのですか。生きるとは、そんなに辛く悲しいことなのですか。
ひかるは尋ねます。


神様は答えます。
ひかるにはまだ少し難しいかもしれませんが、涙は悲しいときだけに出るわけではないのですよ。嬉しくて仕方ないときも溢れ出すのです。生きるってそういうことです。


ひかるは聞きます。
神様、結局生きるとはなんなんでしょうか。意味はあるのでしょうか。


神様は答えます。
ひかる、それは自分で考えなければならないことですよ。私にもわからないのです。意味はあるのかないのかではなく、自分で作るものだと私は思いますよ。







ひかる、本当はもう聞きたいことなど無いのでしょう?何を不安に思っているのですか?
神様はひかるを抱きしめて言いました。もちろん二本の腕で、です。



ひかるは答えます。
たしかにぼくはもう、聞きたいことはありません。わからないこともありますが、それだからこそ生を授かることはおもしろいのだということも、わかっています。


だけど、怖いのです。
ぼくは神様と離れるのが怖いのです。神様はうまれたときからずっとずっとぼくの特別なんです。あぁ神様、きっとこれが愛なのですね。


ぼくは人間になったら、今の記憶はなくなってしまうんでしょう?神様を愛おしく思っているこの気持ちもなくなってしまうんでしょう?それがとてもいやなのです。
ひかるは涙を零しました。悲しい涙でした。



それなら、私も一緒に人間になりましょう。ちょうど下界の様子が気になっていたところなのです。
神様は言いました。


ひかる、私はあなたより少しだけ早く人間になります。これであなたは何があっても世界でひとりぼっちになることはありません。だってひかるが生まれたときから私はもう存在するのですから。あなたが私を忘れても、私はあなたを忘れません。記憶は無くとも、傍にいますからね。そして私たちが一生を終えたら、ずっと一緒にいましょうね。



ひかるはまた涙を零しました。今回は、初めて流す嬉しい涙でした。
今回の行動は、神様の我が儘でした。神様も光が大切で愛しくて仕方なかったのです。神様は人間界の様子を見て、人についてさらに深く知るため、とこじつけた理由の元に天界からしばらく離れることになりました。
日数にしておよそ120日後。ひかるも、人となりました。




















「謙也さん、何してはるんですか。先行きますよ」
「ちょぉ待ってや光〜」



大丈夫ですよ。ひかるには、私がいますからね。言ったでしょう?あなたが忘れても、私は忘れません、と。
それがきっと、生きる理由です。



「ひかる、好きやで」



ひかるには、光には、私がいますからね。





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