あまりの寝苦しさに目を覚ますと僕の上に豚が跨がっていると思ったら、女が跨がっていました。 顔は確か整っていたのですが、浅ましく涎を垂らしていましたから美しいだなんて微塵も思いませんでした。起きた瞬間に誰かが自分に跨がってるなんて不快でしかないでしょう? だから僕、無理矢理退かせて蹴飛ばしたんです。そしたらまた下品な泣き声を上げて逃げていきました。 ああこれでやっと眠れる、と思ったんです。そしたらそれ程遠くない所から何だか変な音が聴こえてきて。何かと思って身体を起こしたんです。そしたら分厚い硝子の向こう側で、殴られていました。 あの人と、彼女が。 豚は相変わらず涎を垂らしたまま、でも人間の腕で二人を交互に殴ったり蹴ったりしてました。 僕は黙ってそれをずっと見ていました。殴られて、刔られて、潰れていく二人はずうっと僕を見つめていました。僕は硝子の壁に血だとか汁が飛び散るのを黙って見ていました。黙って、ずっと。 まあきっと誰かの夢でしょうから僕には関係ないんですけど、ね。 ×
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