淡い色が似合いそうな桜貝の爪に群青が塗られていたあの日から、ずっと好きだったのだ。ずっと好きだったのだ。 種を撒いて当たり前のように水をやり、キャンバスに筆を乗せ、狭いキッチンで料理して、俺はあの娘の横顔を見るのがとても好きだった。とても好きだった。見事に咲いたガーベラもなにもかも当たり前に愛していた。花が好きだ、愛した分応えるように咲いてくれるから。 例え何も返さなくても彼女が存在するだけで全てに意味があった。種を撒いて、次は何を咲かせようか。 カラカラと硝子の雨、千切れたコード、少しの血痕。 空室の朝は酷くながい。 誰も居ないこの部屋からどうやって愛を見出だそうか。 ×
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