大体あやかしごはんの妄想
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0603 ほたるこがれる

(詠くんも大概面倒だが凛ちゃんも負けてない)



「お前のその気持ち悪い笑い方、なに」
 冷えた毒でも飲まされたような気分だった。衝撃と焦りと後ろめたさが混ざってひやりとしたものが背中を一気に駆け抜ける。詠は私を自分の領域にずかずかと入り込んでくる失礼な奴だと云うけれど、そういう詠だって無神経に私の内側に侵入してくるではないか。多分彼はその言葉で私の喉にナイフを突きつけたことに気付いていない。
 愛想笑いを咎められたのはこれが初めてだった。今まで何度作ったか知れない偽物の笑顔を誰も咎めたりはしなかった。けれど詠は違うのだ。他人に媚びて気を遣ってまで人の輪の中で生きていこうとは思っていない。上手に生きていくために誰もが身に付ける術を持たない彼だからこそ、そのナイフを握ることが許される。一つしかないはずの目がやけに力を持って言い訳は許さないと語っている。


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