「……風邪ね」

「……まじ?」

「ちょ、喋んな触んな近寄んな」

「え、酷ッ」

「移しでもしたら大根おろしより悲惨な目に合わせるから」

「え、酷ッ」



センセーは保健医で

つまり俺らのセンセーなわけで

俺らの病気を治すのが仕事だよね?



「だからって何であんたの病原体の相手しなくちゃなんないの」

「え、いや、センセー……」

「カタカナで喋んな」

「……」



急に寒さが厳しくなり出した今日この頃。俺の心はその寒さに耐えられそうにありません。
教団内部はというと、お決まりのように風邪が流行していて。エクソシストであるはずの俺もほら、この通り。



「ふ、ざまぁねぇな」

「先生本当にお医者さんですか」

「何?スッチーにでも見える?」

「おゎ、それいい。萌える」

「はい、ラビくんには硫酸処方してあげて」

「先生本当にお医者さんですか」



普段非常勤の彼女もこの緊急事態に駆り出されたらしい。通りでいつもより口も機嫌も悪いんさ。



「おら、薬。早く帰れシッシッ」

「……(人間に対する行動じゃない)」

「何、医者の言うことが聞けないの?」

「……」

「お利口なジョンはいつもこれで帰るのにねー」

「ジョ、ジョンって…?」

「うちの犬」

「(人間に対する行動じゃない)」



ちょっとへこんだけど先生に診てもらえることって少ないから嬉しい方が強かったり。だからまだ帰りたくないって言うよりまだ先生とお話ししてたいんさ。だって次会えんのいつか分からないんだろ?



「まだ先生と喋りたい…」

「あたしは一秒でも早くこの場を去りたい」

「俺が帰るまでは先生帰れんもんね」

「じゃあラビを土に還してあたしは帰る」

「(土…!?)」



先生は処方箋にいたずら書きをしながらジトリと睨んでくる。
いいじゃんたまに会えたんだからもうちょい楽しそうにしてくれても

…って思うけど、先生に会えて嬉しいのはきっと俺だけ。今の先生に俺はただの病原体にしか見えてないんさ。ま、別に今に始まったことじゃねーけど。でもさ、今日はさ、



「まだ、もうちょいだけ」

「……」

「駄目…?」

「甘えんならブックマンに甘えなさいよ」

「じじいの看病なんて嫌さ」

「場合によっちゃあたしより良い看病してくれるわよ」

「えー…でもさぁ、」





俺は先生がいてくれるだけで元気になれそうなんだけど





「……」

「ね、駄目?ちょっとだけ」

「……」

「ちょっと側にいてくれるだけで良いから」

「……」

「先生…」





















風邪をひきました


(翌朝ベッドの隣の椅子に座って俺のお腹に突っ伏して寝ている彼女が)

(何よりも愛しかった)




「ちょ、何しようとしてんの」

「ち、ちゅー…」

「ふざけんな移る」

「……(風邪じゃなかったらいいんかな)」



















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風邪の時は甘えたくなるよねって話

 





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