「ウォンジュニヒョン?」
名前を呼んでみても、周りをキョロキョロと見渡してみてもお目当ての人物はどこにも見当たらない。
おかしいな、なんて思いながらも近くに居たソヌヒョンに声を掛けてみたけど、どうやらソヌヒョンもウォンジュンヒョンを見ていないらしくて反応は薄いものだった。
うーん、ウォンジュンヒョンはどこに消えたんだろうか。
いつもなら事務所のソファーに寝ているのに、今日はそのいつもの特等席に居ないし。
もしかして、飲み物でも買いに行ったのだろうか。
「ミンスヒョン、ウォンジュニヒョンなら僕見ましたよ。」
「え、それどこ?」
「事務所出てすぐの庭です。日差しが良いから、休憩がてら日向ぼっこでもして昼寝してるんじゃないですかね。解らないですけど。」
ヒョンが行きそうな場所は行ったつもりだし他に行きそうなところは…と、頭を捻らせていたときだった。
スウンが困り果てている俺を見かねたのかなんなのか、ウォンジュンヒョンを見たのだと申し出る。
そんなスウンが言う場所は、事務所から出てすぐにある庭。
確かに、あそこは日当たりも良く、昼寝するにはピッタリの場所。
けれど、人目につきやすい。
スウンの憶測通りだろうと踏んだ俺はスウンに礼を言って、入れ違いにならないようにウォンジュンヒョン探しから戻って以降出なかった練習室をあとにした。
「…本当に居た。」
スウンの言う通り、ウォンジュンヒョンは外に居て、寝ていた。
俺の読みも外れていないらしく、未だに爆睡している様子。
まったく。
どうしてこの人は、こんなにも無用心なんだか…。
隙があり過ぎる。
チラッと腕時計を確認すると休憩終了まではあともう少し時間がある。
普段リーダーとして頑張ってくれているヒョンを起こす気にもなれなくて、ウォンジュンヒョンが寝ているすぐそばに腰をおろした。
そよぐ風がウォンジュンヒョンの髪の毛をイタズラに流す。
サラサラと顔に掛かる髪の毛をふわりと退けてやると、ウォンジュンヒョンがもぞっと動いた。
「ミン、ス…。」
ヤバい、起こしたかな。
そんなことを思ったのとほぼ同時にウォンジュンヒョンの口から、俺の名前が飛び出して来た。
たったそれだけのことに跳ねてしまうこの心臓。
鼓動までもが煩いし、顔が熱くなってきた気がする。
ああ、もう、ヒョンはズルい。
反則でしょ、と呟きながら無防備に晒されたその唇に俺のを重ねる。
一瞬で唇を離し、ウォンジュンヒョンの顔を見るとヒョンは幸せそうに微笑みを浮かべていた。
…この人、寝てるんだよね?
「ミンス………すき…。」
「…どんな夢を見てんだか。」
零れた寝言が可愛くて、つい頬が緩んでしまう。
口では呆れたようなことしか言えないけど、心は幸せに包まれていて。
やっぱりウォンジュンヒョンが好きだなぁ、と思い知らされた。
もう一度、唇を重ねる。
重ね合わせた唇からはなんとなくだけど幸せな気持ちが伝わって来た。
ウォンジュンヒョンも、幸せだったら嬉しいのに。
そう思いながら、時計を再度確認して俺も瞼を閉じた。