俺の(一応)恋人であるハギョンはなんと言うか、学習出来ていない。
アルコールは確かに強いと思うが、調子に乗って飲みまくるから後あとが面倒になるんだ。
「てぐなぁ〜。ぼくのぉ、かわいーいてぐなぁ〜。どーこーぉ?」
「………はぁ。」
今日も調子に乗り過ぎて飲みまくったらしく帰宅するなりこんな調子。
飲んで帰るから遅くなる、という報告を受けていたので寝ていたというのに、この酔っ払いが騒がしいせいですっかり目が覚めてしまった。
玄関で横になり、てぐなぁ、てぐなぁ、と呂律が朧げなまま俺の名前を何度も呼ぶハギョン。
馬鹿だろ、とか、飲み過ぎるなってあれほど言っただろ、とか。
言いたいことはたくさんあったが、どうせここまで泥酔しているのだ、言ったところですべて無駄だろう。
めんどくさいな、と思いながらも両脇に腕を突っ込んで、そのまま持ち上げることなく、ズルズルと廊下を乱暴に引きずる。
うー、とか、ぅあー、とかわけの解らない言葉は、この際無視だ。
やっとの思いでリビングに到着し、そこのカーペットに寝かせる。
あのまま玄関で放置したって良かったのだが、それはそれで風邪を引かれては困るから此処へ移動させた。
泥酔状態のハギョンは、カーペットで横にした途端寝息を立て始める。
本格的に寝たのを確認し、俺とハギョンの部屋に行ってハギョンの毛布を持ち、身体に掛けてあげた。
弟たちに手伝ってもらい、ベッドに寝かせることは簡単。
だが、時刻は夜中の3時で、折角かなりの時間寝れるというのに、このダメなリーダーのせいで起こす気になんてサラサラなれず。
結局は、このまま放置、という選択肢を選ぶことにした。
恐らく朝に騒ぐんだろうが…。
まあ、自業自得だ、とでも言っておけば大丈夫だろう。
「てぐ、なぁ…。」
アルコールを含み妙に艶のある声。
その声がなんとなく行為中のハギョンの声を彷彿とさせ、身体に熱を感じたがそれを抑え込む。
−−−なに酔っ払いを相手に盛っているんだ、俺は。
心に住まうもうひとりの自分が、俺に対して制止を掛ける。
でももうひとりが、ハギョンのあの声を訊きたいのだと、強く訴えた。
俺は、どうしたらいい…?
「っ!?」
立ったまま悶々と悩んでいると、突然強い力で後ろ手に引っ張られる。
慌ててその方向を向けば、先程まで寝ていたはずのハギョンは起きており、しかも満面の笑みを浮かべながら俺のことを見つめていた。
「てぐなぁ、すき、だいすき。」
相変わらず、呂律の回ってない声。
肩に顎を乗せて話すものだから、熱くて艶のある吐息が耳にかかり、望んでもいないのに中心にドクドクと悪い熱が集まりだす。
普段のハギョンならば、目敏いが故にすぐ気付くだろう。
けれど今のハギョンと言えば、もはやただの酔っ払い状態。
どうせこの状態に気が付くことは無いんだろうから、ハギョンが落ち着くまでな大人しくしていてやれば良い(流石に酔っ払い相手に乱暴な真似はしないさ)。
「?…おい、ハギョナ、そろそろ自分のところで寝…、っ!?」
さっさと寝ろ、と思っていると、ハギョンの手がもぞもぞと動き出す。
なにしてる、と睨みで伝えながら寝ろと言おうとしたとき、ハギョンの手が、確かに俺の下肢へと触れた。
それも、緩く反応しているそこに。
ビクッと身体を揺らし、反応したことが良かったのか、耳元で、くふ、と笑い声が聞こえてくる。
てぐなぁ、と相変わらずな声で俺の名前を呼びながら、ぎゅうっと握ってくるこいつは多分、思ったほど酔っ払ってるわけではなさそうだ。
「てぐなぁ、僕ときもちいこと、またしない?」
そう呟いた直後に、耳朶を甘噛みしてくるハギョン。
身体とは素直なもので、久しぶりの甘い快感に期待しているのかふるふると震えることしか出来なかった。
何も言わない俺を見て肯定と捉えたのか、ソファーに押し倒される。
見えるのは天井と、ハギョンのいやらしい表情のみ。
今日もまた、流されるのか。
流されやすい自分には呆れる部分もあるが、まあ、嫌いではない。
ゆっくりと瞼を閉じれば、ハギョンの唇がゆっくりと重なってきた。
この際、ハギョンがアルコール臭いのは無視する。
結局俺は、ハギョンにされるがまま食われることになってしまった。
朝になり、起きていたのかなんなのかメンバーから、リビングでヤらないで下さいよ、と言われ、やたらスッキリとしているハギョンを蹴飛ばしてやったのは…。
まあ、言うまでもなく、伝わるだろう。