「おいで、ミノ。」
その言葉とともに俺の身体は自然とジンギヒョンの元へと誘導される。
今、宿舎は俺とジンギヒョンだけだから、普段甘えたがらない俺もつい素直になってしまう、ってわけ。
俺はジンギヒョンの座っていたソファーの前に立ち、おいで、と両手を広げるジンギヒョンの膝の上に乗っかった。
肩に顔を埋めれば、くすぐったそうにはするものの俺のことを甘やかすかのように優しく頭を撫でるその温もりが愛しく思う。
キボムは友だちとショッピング、テミンとジョンヒョニヒョンはテミンが無理矢理ジョンヒョニヒョンを引っ張って何処かへ行ってしまった。
テミンに取られようともキボムは怒らないんだからたいしたものだな、と感心したのはついさっきのこと。
「ミノ?なに考えてるの?」
「ん…いえ、ジョンヒョニヒョンがテミナに取られたのにキボマはよくそれを怒らないなぁ、と思って。」
「あぁ、なんだ、そんなこと。」
そんなこと、って。
俺は至って真剣に考え、本気で感心したと言うのにこの人は…。
そう思っていると、不意に降ってきた甘い甘い口付け。
チュッ、とリップ音を立てて離れた唇は、なんとなく物足りなさを感じてはいたものの、胸は満足感に支配されていた。
「だってテミナには、ジョンインっていう恋人が居るでしょ?」
「え…?あのふたりって、付き合ってるんですか?」
「んー、まだだけど、雰囲気はそんな感じだし、くっ付くのも時間の問題じゃないかな。今日だって、ジョンインへのプレゼントを買いに行ったらしいし。」
ジンギヒョンの言葉に、なるほど、と思わず頷く。
そう言われてみればテミンがジョンインに対する好意は手に取るように解るし、ジョンインだってそうだ。
エスエムタウン等でいつジョンヒョニヒョンを取られるか、と酔った勢いで零していたキボムも、それを解っていたからこその黙認なんだ。
なるほど、ジョンインの存在とふたりの雰囲気の話は、キボムからしてみたら僥倖ってわけね。
マンネも恋かー、とちょっと黄昏。
いつも俺とジンギヒョン、そしてキボムとジョンヒョニヒョンを見て羨ましそうに、でもどこか寂しそうにしていたテミンも、ようやく報われるっていうことかな。
マンネの成長は少し寂しいけど、喜ばしいことに変わりはない。
「テミナも大人になりましたね。」
「ふふ、そう?僕からしてみたらまだまだ子どもだけどね。」
「それは否定しませんけど。」
「ま、僕も子どもらしいよ。」
「え?」
思ったことを素直に口にすれば、いつも優しそうに細くされている目がさらに細さを増して、優しい微笑みを浮かべた。
俺はマンネは大人になったと思ったけど、ジンギヒョンからしてみればまだまだそんなことは無いらしい。
まあ、この人はこのグループでの最年長だし、当たり前か。
ジンギヒョンの言葉を否定せずに居ると、ジンギヒョンは僕も子どもらしいよ、なんて言いながら、甘い甘い、深いキスをしてきた。
子どもはこんなディープなキスはしないよ、とは思うけど、ジンギヒョンとのキスは好きだから、甘んじてそれに応える。
−−−ああ、なんか、幸せだな。
ジョンヒョニヒョンにはキボムが居て、キボムにはジョンヒョニヒョンが居て…。
そして、今のテミンにはジョンインが居る。
俺にはジンギヒョンが居て、ジンギヒョンにも俺が居るんだ。
これがどれほど幸せを生み出すか。
きっと今のこの甘い空間が、その幸せを知らしめている。
「ジンギヒョン。」
「うん?」
「好きです。」
「ふふ、僕もミノが好きだよ。むしろ、愛してる、かな?」
愛してるという言葉とともに降ってきたのは、もう何度も受け入れているはずの甘い甘い、媚薬のような優しい口付けだった。