ネスが離れて、クマトラとダスターが加わり、『ヒトシラズのたに』を上がっていった。
ハイウェイと呼ばれた高く、長い道路が空を横切っている。
初めて目にするものに、リュカは思わず立ち止まったが、クマトラが呼び戻す。
その先の洞窟の入り口を越えていくと温泉があった。だけどそんなことは気にしていられない。
一刻も早く大事な探し物を見つけ出さなければと、必死になっていた。

簡単な洞窟を抜ければ何もないムラサキの森だった。
ダスターが先導し、それについていくと、いくつもの穴が地面に開けられてあった。
彼が言うには、穴が一つ始めからあったらしく、それを利用していたのだが…


「おい!それはどの穴なんだよ!」


クマトラがケンカ腰に言い放つ。リュカが気が立つクマトラを何とか落ち着かせようとするが、なかなか上手くはいかない。
ダスターも必死に思い出そうとはするが、自分のことさえも忘れているくらいだから無理もない。
仕方なく、一つに絞って落ちてみようとする。





これで落ちたのは一体何度目なんだろう
これじゃ足だって悲鳴を上げて歩くことすらままならなくなる。
幸い落ちても戻るところはあったからワンチャンスとは行かないものの、これはとても過酷だ。
どうもこのはずれの穴を掘り出したのは穴掘り好きのモグラらしく、楽しくてこんなに掘ってしまったらしい。
それにクマトラはますます気が立っているが、悪気があってやったわけではないからどうも責められない。


「そうだ!ここだ!」


まだ落ちてない穴に下りて少し進むとダスターが声を上げたのだ。
わずかな記憶が、呼び起こされたのだ。


「本当か!?なら急いで進むべきだな!」


ダスターがまたも先導し、クマトラもそれについていった。
足がへとへとなのにと思いつつも、リュカは力を振り出してあとについていった。
ようやく明かりが見え出した。
さっきとは同じ光だって言うのに、なぜか達成感を感じた。

そこにはボロボロになったネンドの人形が置き捨てられていた。
エネルギー切れを起こしてそのままにされてしまったのだろう。


「ここにタマゴを隠しておいたのさ」


そう。探していたのは光を放つタマゴ『ハミングバードのタマゴ』だった。
このタマゴには全ての秘密が詰まっている。昔の人の記憶。
これがあのブタマスクたちの手にされては、昔の秘密がばれてしまう。
そんなことはあってはならないこと。だからこうしてダスターがきっと隠したのだろう。
記憶をなくしてでも…

長い旅のようで短い旅。
これが終わったらひとまず村へ帰って、みんなに報告しなきゃ…




リュカがそう安心していると、とてつもない轟音が全てを打ち破った。
雷がネンドじんに落ちたのだ。
ネンドじんの原動力は電気…それがはるかに強い雷が直撃した…

そう。ネンドじんが暴走を起こして、逃げ出したのだ。

あまりの展開と、再びタマゴを失ったことによって、もうリュカの足の痛みなんて忘れていた。
旅の続きが始まったのだ。

だがネンドじんのスピードは速く、ボニーがいるにもかかわらず、見失った。
だけど道は一つしかなく、ここしか通れないと判断し追っていく。


何かの工場に差し掛かった。
ここにはもちろんブタマスクもいるからうかつに入れない。だけどそんなことしていたら本当にネンドじんを見失ってしまう。
PSIを使ってでもごり押しで突破するしかない。
三人と一匹はその覚悟でその工場に乗り込む。


「なんだ、お前ら。」
「なーに見てんだよ!」


予想通りブタマスクはそこにいた。リュカたちを見て不審に感じた。
やっぱりと思って武器を構える。
戦う覚悟なんてとうにできている。


「さわがしいぞ!一体何を…はっ!」


さらに奥からもう一人のブタマスクが現れて、叱りを飛ばそうとしたら、突然顔色を変えたのだ。


「これはこれは失礼しました!
 『しきかんどの』がそんなみすぼらしいカッコをなさっては部下達に示しがつきません。
 着替えを用意いたしますのですぐにお着替えください。
 お付の皆さんもお着替えを」


なにやらわけの分からないことを言い出すブタマスク。
しきかんどの?自分が?いつブタマスクのしきかんに?
なんてリュカは思いながらもとりあえずは一時的に凌げただろうと用意された服に着替える。

用意されたのは軍服だった。
他の二人と一匹はただブタマスクのマスクを用意されただけだった。
でもこの格好をしていれば、今後も他のブタマスクにばれることはないだろう。


「狂ったネンドじん?それなら裏口に走っていきました。
 早くしないとゴミ収集車に詰められて、ゴミ捨て場まで行ってしまいます。」


工場で働くブタマスクたちから情報を集めていると、頼もしい情報が入った。
しかし、それと同時に不安もよぎったのだ。
急がねばと、ブタマスクの言う裏口へ出た。

ハイウェイに出て、さっきの『ヒトシラズのたに』が今度は下に見える。

裏口を出るととんでもない光景を目にしたのだ。
あのタマゴを持ったネンドじんがゴミ収集車に乗り込んで行くのを…
そして車が走り出す。


「!!!マズいぞ!追いかけよう!!」

ダスターが走る。
そして焦りを覚えたクマトラも全速力で走り出す。


車線に入ると、ブタマスクが待ち構えている。
その近くには乗り物がある。


「これはこれは。しきかんどのでしたか。
 …見たところ、間違ってごみをお出しになってしまわれたようですね。
 ゴミ捨て場まで行かれるならこいつで追っかけてください。」


ブタマスクは相変わらず『しきかんどの』に騙されてしまっているが、そばに置いてある乗り物を差し出す。
丸い形の円盤のような乗り物。


「ゴミ捨て場ならここから北東です。
 早くあとを追いかけて、ごみに出してしまった恥ずかしいものとやらを回収してください。
 それではお気をつけて!」


ブタマスクから授かった乗り物をありがたく頂戴し、それに乗り込む。
なぜか場所も教えてくれたかは分からないが、これできっとタマゴに追いつける。
恥ずかしいものではないけど、一刻も早く取り返さねば!
















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