すでに日は昇っているのに、リュカたちが戻ってこない。
心配ではあるが今はただ待つしかない。
ロープウェイには乗らずに待っていると、明るい声がした。
「ネスさん!」
声のする方向を見ると、リュカが元気よく手を振ってこちらに駆け寄ってくる。
無事に探していた人に会えたんだ。
「おそかったよー!心配したじゃないか!」
「ご、ごめんなさい…説得に時間がかかってしまって…」
ネスに申し訳ないとおもいつつそれをごまかそうとにこにこ笑っている。
ボニーもネスに会えて嬉しそうにしている。
「で、リュカはその探していた人を見つけてこれからどうするの?」
「はい。大事な探し物を見つけるためにこの『ヒトシラズのたに』を越えるんです。」
リュカが指し示す方向には大して高くはないが、人は上ることができないがある。
ここの人たちはそれを『ヒトシラズのたに』と呼んでいたのだ。
「あの…ネスさんは…」
リュカはまるで付いてきて欲しいと催促している。
これだけの人数はいるものの、やはりネスの力が必要なのか?
「うーん…ついて行きたいのは山々だけど…僕は一度村へ戻るよ。
ジェフをほっといているからね。」
リュカはしゅんとした。
だけどすぐに状況を飲み込んで表情を変えた。
それはそれは頼もしく勇気に満ちた目だった。
「分かりました。
でもトンネルを越えるでしょう?どうか気を付けてください…」
「うん。リュカたちも気をつけるんだよ?」
ネスは手を振って、トンネルの中へと進んでいった。
リュカ達はその反対方向の高くない崖へ進む。
ダスターがその壁に『カベホチ』を突き刺して登っていった。それにリュカたちもついていく。
トンネルに入り、リュカたちの姿が見えなくなったと確認すると、ネスは意識を集中して真っ直ぐをみた。
そして駆け出し、どんどんスピードを上げていく。やがてネスは姿を消した。
『テレポートα』。それで来たところを戻るちょっと危険なPSI。
それを使ってタツマイリ村に戻った。
初めてやってきたあの場所。
そこを思い出しつつ、敵を追い払いながら進む。
ジェフのことだからそこにいると違いないと感じたからだ。
茂みを掻き分けると、一つの空間が現れる。
そこに思惑通りにジェフがいた。
「ジェフ!ただいま!」
「ネス!一晩中戻ってこないから心配で心配で…」
ネスは一晩のことを全て話した。
リュカの探していた人物のこと。
そして大事な探し物のこと。
あの紫色をした森にあった奇妙な研究所のこと。
思い出せるだけ思い出してみた。
「そうか…研究所ねぇ…なんか気になるけど…
実はネス、こっちも妙に気になることがあってね。」
ジェフもこの一晩に何かを感じたのだ。
森を出ようとネスを案内した。
案内された所はもちろん村で、海岸の所に案内された。
そこには黒こげた建物というかテント?が置かれていた。
「昨日、ここに雷が落ちたんだ。」
「雷?そりゃ…雷が落ちるのも自然現象だから…」
「そうだよ?飽くまでも自然現象だ。
でも昨日は雲ひとつない空だったよ?」
そのジェフの分析にネスはおかしいとようやく気づく。
「そう。雷雲があってこそ、天候が悪いこそ雷が発生して落ちるものだ。
それなのに条件も整わずに雷が落ちるなんて絶対にあり得ない。」
ジェフは空を見つめる。今日も雲ひとつない空だ。
昨日も同じ空だったと皮肉につぶやく。
「それってつまりさ…『誰かの仕業』ってこと…?」
ネスは質問した。あまりの違和感に、そうとしか思えないような質問だ。
そういえばとネスは何かを思い出した。
あの時に見えた高い塔の、大きな砲台。
その話をすればジェフは一番に食い付いた。
「それってどこにあったのさ!?」
「え、あのトンネルの向こう…」
テレポートを使って、クラブの前にやってきた。
ロープウェイを使わないのにはやや気は引けたが、幸い誰もいなく、突然現れたことには気づかれてはいない。
そしてあの砲台の付いた塔を見せるために、ジェフをその方向へ導く。
ジェフがしばらくその砲台を眺め、判断した。
「行こう。」
「へ?でもどうやって?」
「スカイウォーカーはまだ整備中だから…歩いて向かうしかない…」
もどかしさを噛み締めながらその場を離れる。
ネスもテレポートを試みて、ロープウェイを離れた。
やって来たところは、村に戻る前にリュカ達と別れたところだった。
カベにはなにかおおきなホッチキスがはしごの役目を果たしているようだ。
おそらくリュカと一緒にいた誰かがやったのだろう。そしてその先に向かったに違いない。
ジェフと二人で冒険するなんて、昨日のようで懐かしい。