ほとんど明かりの無いトンネル。
まだ入ったばかりのうちは外のわずかな光が頼り。
でもそれが奥に入っていけば真っ暗かもしれない。
なんにしろ見たことの無い場所であるから…

足元に何かがぶつかる。
そこにネスは目を向けると、頭がニワトリで体が蛇の生物に何体か出会う。
一度驚きに退くもしっかりとバットを握る。
リュカはひっと声を小さく上げるがネスの頼もしい姿を見習い怯えながらもぼうっきれを握る。

でも一瞬の出来事のように見えた。
一体をバットで打ち、そのままもう一体を薙ぎ払う。
そのまま片手でバットを操り3匹目を叩き、空いた片手から何か光が飛び、4匹目にそれが命中すると火柱が立つ。

あまりの出来事にリュカは口をぽっかりと開けたままだった。
それと同時に何か妙な事を考え出した。
この人どこから来たんだろう…そういえば自分の住む村にこんな人いなかった。
どうしてこの人はこんな奇妙な生物に慣れているんだろう。
いろんな思想がぐるぐるしている。


「大丈夫?さぁ行こう、電車が来る前にね。」


ネスは至って普通に振舞ってリュカたちを導く。
でもこんなに優しくて強いならどこから来たとかどうでもよかった。


「強いんですね。」
「う〜ん…僕はいっぱい冒険していたから、慣れたのかな。」


そのネスの台詞を聞いて、この人はこの村にはいないって確信した。
もしかしてこの村の変化とこの人たち関係あるのかな。

線路沿いに、ネスの背を見つめながら歩み、そう思った。


「リュカ!後ろ!」
「?」


後ろからさっきの頭がニワトリの奇妙な蛇が足元に近寄ってきた。
あわててとっさにぼうっきれで叩く。
そのままそいつは動かなくなった。


「あ、あぶなかった…ネスさん、よく気づきましたね…」
「いや、たまたま後ろ見たら近寄ってきたから…
 それにしても大丈夫だった?」


心配をかけるネスに対してリュカは大丈夫と答えた。
そういえば今は偶然やっつけることが出来たけどこのままネスがいなかったら今頃どうなっていただろう…
想像したくなかった。


二人で会話をしていた。
昔のことを聞いたりとか、リュカのお兄さんの話。
そして母のこと。
自分が旅で辛い思いをしたときより以上にリュカは辛いことを乗り越えてきた。



どのぐらい歩いていたかもう忘れた。
少し暗くなってきたところでまた明るくなってきた。
もう外なのかと少し安心した。
トンネルを抜けるとそこは何だか渓谷みたいな場所に着いた。

そしてネスにとってはとても懐かしさを覚えるマジックバタフライが数匹も飛び交っていた。
この時代にもいるんだとネスはマジックバタフライに触れて力を癒す。
と、目を離すといつの間にかリュカがいないことに気づく。
あれ!?置いてかれた!?と慌てて見回すと崖際にはしごがかけてある。
そこにちょうどリュカが上っていたところだった。
その上にはなにやら湯気が立ち込めている。温泉でもあるのだろうか。


「ん?」


はしごのすぐ近くになにやら女物の洋服が脱ぎ捨てられている。
ネスは青ざめる。女の人が入ってるんだから下手したら覗きだよ!
リュカが上りきったところを確認してしまった。
しかしそこで聞こえるのは女性の叫び声ではない。
むしろなにか声がなにやら女のような…変にしゃべり方が女性らしい。


「…もしかしてオカマって人…?」


会話がよく聞こえないけど何か話をしている。
すると急に叫びに変わる。


「暴れないの!」


オカマらしきひとがそう叫ぶのがよく聞こえる。
一体なにをしているのかあんまり想像したくない。


しばらくするとリュカが降りてきた。
一体何をされたの?と質問したけど答えない。
よっぽど嫌なことでもされたのだろうか…


「でもね、ネスさん、僕何かに目覚めたような感じがしたんです。」
「なにか?」
「さっきネスさんはなにか不思議な力で火を出したでしょう?もしかしてそれと同じ力かもしれないんです。」


リュカにもその力が使えるようになれば心強くなる。
でもその力を一体どう使うかが重要になる。


「その力はね、PSIといってね、不思議な力なんだ。
 火を出したり雷を起こしたり、さらには傷を癒したりすることも出来るんだ。」


ネスは自分でPSIの力を見せ、リュカに説明する。
でもこの力も、扱うのは難しかったりして。
自分の想像する力によっては自分にしか扱えないものもある。

そこでしつこいほどにニワトリヘビに会う。
リュカが前線に立つ。
どうやら目覚めた力を使ってみようとする。
けどやはりどうすればいいかわからずに戸惑ってしまう。
もう少しでリュカが怪我をしてしまう。
リュカの前に立とうと一歩踏み出したとき、なにかすごい力を感じた。
青白い閃光が迸り、まばゆく照らし出すとそこにはもう何も無かった。

ネスは何も言葉が出なかった。
自分にしか使えない強力なPSIと同じ位に強力。

リュカは目覚めたPSIを使ったものの、その力で少しふらついた。


「大丈夫!?」
「あ、平気です、自分の力を見て少しびっくりしたかもしれないし…」


これも力の内だということは気づいていない。
PSIはココロのちから。普通の日常で使う力で体力を使うように、PSIも同じように、頭に負担をかけるのだ。


「あまり使うのもよくないからね。無理しちゃダメだよ?」
「はい…ありがとうございます。」


その時、出会いたくないものに出会った。
背後からすごいスピードで電車が走ってきた。
ボニーは素早く避け、ネスは少しふらついてるリュカを引き、線路から離れた。


「うわっ!」


その拍子にネスはバランスを崩して転ぶ。
ひざに痛みによる痺れが走る。
どうやらすりむいてしまったようだ。


「だ、大丈夫ですか!?」
「このくらい平気だよ、すぐ治せるよ。」


ネスはリュカを安心させると怪我をしたひざに手を翳(かざ)した。
そこから優しい光がひざの怪我を包み込み、あっという間に治したのだ。


「すごい…これもPSIの力なんですね…」
「そうだよ。治してあげる、癒してあげる気持ちを強ければ強いほどたくさん治せるんだ。」


よいしょとネスは立ち上がり、周りの安全を確認して先を進む。



また明かりが見えた。再びトンネルを抜けたのだ。
やはりさっきと地形の造りが似ている。
でも駅が見える。到着したんだ。


「ここがコーバなんです。その先の高いところにある建物がクラブ・チチブーといって…そこに僕の探している人がいるだとか…」


リュカの言うとおり、なにやら崖の上に派手な建物がある。
一刻も早くそこにたどり着きたいものだがなにやら文鳥の頭をした棒が地面から生えているのだ。
一見雑魚そうに見えても案外恐ろしかったりするものである。ネスが今までで出会ってそういった敵は…ゆだんロボかな?

警戒を覚えながらも、ネスはバットを握り締めた。
















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