風丸←半田
長いかも
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「またねー!」
「うん!また明日!」

一日の終わりにはみんな決まって一斉に教室を出て行く。
家に帰ってのんびりするものもいれば、部活にも向かう者もいる。
サッカー部に所属する半田は真っ先に部活には足を向けなかった。
まだ教室を出るための身支度が整ってはおらず、
机の中にしまってある教科書とノートを何冊かかばんの中にしまいこんでから部活に出ようとしていた。
何十人といた教室も今はすっかり静かになった。
そんなものだからてっきり自分しかいないかなと思っていたが、教室を出ようと自分の机から離れたら黒板の前に誰かがいた。
男の子のくせに髪は美しく長く、またその青色がなんとも言えなかった。
風丸一郎太。
人数の少ないサッカー部に助太刀として入部した元陸上部。
足が誰よりも速くて、昔から円堂とサッカーをしていたと知っていただけであって、結構上手い。
あっという間にボールを抜き去ってしまい、自慢の脚力で素早く攻めていく。
そんな彼は半田と同じくすぐに部活には向かわなかった。
黒板に次の日の日付と別の人の名前を書いていた。
そうか。彼は今日日直なのか。
日直の仕事はこれだけではない。
掃除したと言えど、まだ散らかっているかもしれない床掃除なども済まさなければいけない。あと日誌。

正直半田は風丸のことをよく知らなくて、でも部活も一緒になったことだから、少しは話をして相手のことを知ろうとは思っていた。
だがそれは部活にのめりこんでいて話すにも話せず、学校の休み時間でも円堂と話をしていたり、なかなか話をする機会がなかった。
だから今なら少しでも話できるかな…って考え込んでいたけど、正直その一歩が踏み出せない。

「…どうしたんだ?半田。」
「…あ?」

なんだかしばらく考え事をしていたらしく、それに気づいた風丸が声を掛けた。
急になんてものだから返事をしようとも口が上手く動かせなかった。

「あ…いや…その…」

まさか向こうから声掛けてくるなんて…とそれが頭をよぎってほんのちょっとの話題が出ない。

「あの…手伝おっか…?」

風丸は日直の仕事をしている。
だから少しでも早く終わるように手伝ってあげようか。
そう思っただけ。

「ホントに?ありがと。」

助かったよなんて笑いかけてくる。
本来なら手間はあまり必要とはしない日直の仕事だけど。
手伝うなんて言ってしまったからにはやるしかない。
とりあえず近くにあった他人の机にかばんを置いて、掃除ロッカーから箒を取り出した。
掃除は任されたのか、風丸は自分の席に座って日誌を書き始めた。
お互い別のことをやっていて何も会話がない。
これでよかったのかな…余計に気まずいだけなんだけど…。
なんでなのかな…なんで風丸のことが気になるんだろう…
ただどういう人なのかが知りたいだけなのに。
それが進化してしまったのかな?

「ねぇ、今日何かあったっけ?」

気軽に話しかけてくれて少し戸惑った。
向こうは自分とは違う気持ちでいるし。当たり前か。

「…特にないんじゃないかな?」
「そっか。ありがと。」

このくらいのことじゃ、すぐ話が途切れるだろうな。
そうやって箒を動かしていくうちに、風丸は日誌を書き終えて終わったとため息ついた。
それと同時に半田も床掃除を終えた。
中途半端なんてよく言われた自分にしてはキチっとやり遂げたと思った。

「助かったよ。ありがとうな。」

風丸はにっこりと笑ってくれた。
あんまり話したこともないのに…なんか一気に風丸に近づけた気がした。
それがちょっぴり嬉しかった。
帰りの身支度を終えて、教室を出るときに、風丸が振り返った。

「ねぇ、今日俺んちで勉強しない?」
「え?部活は?」

部活の事で頭がいっぱいの半田はきょとんとした。

「あはは…テスト期間だから部活はないよ。
サッカーやりたかったのにね。」
「え…もうそんな期間だっけ…すっかり忘れてたよ…」

せっかく楽しみにしていたのに…と半田は大きくため息ついてがっくりうなだれた。

「しょうがないさ、テスト終わったらいっぱいやればいいことだし!」
「…そうだね。」

そうして二人して教室を後にした。



さすがに河川敷には誰もいない。
偶然にも稲妻KFCも練習はしていなかった。
すると風丸は河川敷の土手を下りる。
どうやらいつも座っているベンチにサッカーボールが。
そのボールを見せてにっこり笑う。
俺にはわかる。風丸の言いたいことが。

−サッカーやろうぜ。−

始めはパスしあっていたけど、いつの間にかボールの奪い合い。
時には半田がうまくドリブルでかわし、かわしたと思いきや、
風丸が驚きのスピードでそのボールを奪っていく。
まだ日が高かったのに、いつの間にか日は紅く、空は黄昏色に染まっていた。
それでも足が止まることはない。
勉強なんか頭から飛んでいて、素直にサッカーが楽しくてしょうがなかった。




「あーあ。一番星が見えてる。」

空が深い藍に染まっていく。そこに煌く星が見える。
それだけの時間をサッカーで過ごしていたんだ。

「一緒に勉強出来なくなったな。」

そう残念そうに言う風丸。

「風丸から言ってきたんじゃんか。」
「まさかこんなにのめりこむなんて思っていなかったんだよ。」

ようやく河川敷から離れて、さっきまで帰路が同じだったのに、分かれ道が二人を離そうとする。

「じゃあ、俺、こっちだから。」

またねと手を振る風丸。
なんだかさびしく思えた。
もうちょっとだけ一緒にサッカーでも、勉強でもしたかった。

「…うん。また明日な…。」

半田も名残惜しそうに手を振った。
なんでこんなに寂しくなるんだろう。
誰か一緒にいないとだめ?
それでだったら円堂やマックスだってかまわないはず。
風丸だから?
風丸にはそんな人をひきつける力あったかな?
まぁ、いいか。
また明日会えるもんな。
今度はきっと話が出来る、もっと風丸のこと知ることができる。

その明日が長いんだよなぁ…












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