ティアルはシグを初めて見た時
「女の子?」なんて思い…
それをクルシグで
若干腐向け?クルークのキャラ少し崩れてるかも
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クラス替えをしたときにふと彼と出会う。
快晴の空色をした髪に、深い海の色の瞳。
全体的に袖口の大きい緩やかな服をして、ななめかけのカバンにプリンプの校章。
眠そうにしている瞳。
うわの空で、何事にも興味のなさそうな無表情。
だが呪いをかけられてしまったかのような紅い左目に、人間の手より少し大きな紅い左手。
すらっとした細身に、きれいな肌をして、はじめ見たときは女の子だと思っていた。
こんな人もいるんだと、クルークはその人物像に気を取られていた。
新学期早々のホームルームは気になっていた彼の隣だった。
「やあ。初めて見る顔だね。ボクはクルーク。キミの名は?」
「…シグ」
初めて聞いた声は、気力のない返事だった。
クルークの質問にただただ返事をするばかりで、逆に聞いてみようとする気持ちは見受けられない。
紅い左のことも、彼は「知らない」だけだった。
そんなこんなで放課後。
結局シグは何も話すことなんてなかった。
クルークはカバンに持ち帰るものを詰めて、肩にカバンをかける。
「ね、帰っちゃうの?」
初めて声をかけた。
正直驚いてどうしたらいいかわからなくなった。
「あ、ああ…そうだけど今日は特別宿題もないし…帰っても何もすることないけどね。」
「じゃあ一緒にムシとりしよ」
「はぁ?」
発言は意外過ぎて、思わずなんだこいつなんて思ったけど、どうせ暇だし、またいろいろ話せるだろうから付き合うことにした。
よくシグはナーエの森でムシとりをするそうだ。
最近は寄ることもないから久々に探索しようとはしたけど、森だし何にも変わってはいないだろうとただ彼についてゆく。
「ムシ…好きなんだ?」
「うん。ムシはかっこいいし。」
「じゃあくわしいの?」
「うーん…細かい名前はわかんない」
背を向けて目的もなく歩くシグは、口数が多くなったのにこちらを見てくれることはなかった。
「シグはいつも何してるんだい?」
「んー…ムシ探して…それから…寝る。」
「え!?宿題とかは?」
「わかんないからできない。よく先生に怒られたけど…」
クルークにとっては非常にありえなくてあきれる。
でも勉強ができないとかの意味で見ればアミティやタルタルだって同じだろうけど。
「…わかんないところがあったら教えてやるよ…今日は宿題ないけど」
「ほんと?」
初めてシグが振り返る。
眠そうな目が少し見開いていた。
しっかり開けば、大きくてかわいらしいのに…そう感じる。
「だけど、ちゃんと自分もしっかり考えてだからな?一から百までなんて教えてやれないからな?」
そこでふと気づいたのだ。
なんだかシグに尽くしているみたいだ。
まだ初めて会ったばかりだっていうのに、さっきはかわいらしいのになんて感じてしまったし。
「ねぇ、歩き疲れたよ。」
「…じゃあここで休憩する?」
休憩といったって、足元は雑草が多くて靴が見えない。
周りを見渡せば限りなく木々が広がる。
「無茶言うなよ…ここで休憩だなんて…」
ここで休憩するほうが余計につかれる。
「もうちょっとなの。ムシがいっぱいいるとこ」
シグはクルークの手を引いて、足早に案内しようと歩を進める。
大きな左手は、ちゃんと人間のぬくもりを感じる。…なぜだろう?
「ほら。」
うっとうしい茂みを抜ければそこには空間があって、日が当たってる。
蝶々が飛んでいて、きっとシグにとっての楽園だった。
「いつもここで昼寝してるの。」
シグの手には一羽の蝶が止まった。
嬉しそうに笑顔を見せる。
あの学校での無表情はいったいなんだろう。
まるで別人みたいに、無邪気にしているシグの姿。
クルークも、不思議と笑みがこぼれている。
「楽しかったかい?」
「うん!」
初めて聞いたあの気力のない声より、少し気持ちがこもって、少し明るい。
さっきはクルークの前を歩いていたのに、今は横に並んで歩いていた。
シグの指先にはテントウムシが。
また明日になればやる気のないシグなんだろうなと少々落ち込む。
「女の子だったらよかったのに。」
「…?」
クルークのボソッとした発言に、シグはきょとんとしている。
「いや、なんでもない。」
きっとシグが女の子だったら本気で好きになってたかもしれない。
だけどシグは少年という現実。
理想は現実になんてならないで、郷の中にすぎなかった。
「じゃあ、また明日ね。」
そういってシグは手を振ってクルークのもとから去って行った。