At Darkness Doorに隔離しようかと思ったけどそこまでじゃないような感じですので…
戦闘描写あり、若干血表現ありの長編です
αではまだ上記の描写はありませんが一応注意ということで
くろいシグ=シグに乗り移ったエコロという俺設定になってます。
以上のことを踏まえまして許せるよ!という方だけ閲覧をお願いします
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シグを見ないって聞いて、学校のクラス中…いや、学校全体がざわついた。
いつからか姿を消していて、誰も目撃していないって。
アルルみたいに別の世界に飛んで行ってしまったか、ただ単に迷子になっていたりとか…或いは…
いや、それだけは考えるのは止そう。
アミティも、ラフィーナも、リデルも、タルタルも、アコール先生も、みんな心配している。
だから授業なんてそっちのけで、捜索に出る。
見つけたらみっちりと遅れた分教え込んでやる。自分の分も、シグの分も。
クルークはそう決めた。
彼だってみんなと同じくらい、いや、それ以上に心配してるのだ。
それぞれ手分けして、出会う人々に情報収集。
だけどみんな答えは「知らない」だった。
シグのクラスメートであるアミティやクルークは、シグの行きそうな森をくまなく探す。
森の住人である?ゴゴットに聞いてみてもやはり「知らない」であった。
アミティはあることを思い出し、海に向かっていった。
そこにはきっとさかな王子がいる。そしてしもべとなっているシグがいるに違いないとアミティはそう睨んだのだ。
クルークはその考えには反した。
なぜならいくら王子でもこんな何日もシグを束縛させるはずがない。
しかし自分も『そんなはずはない』所を想定しているのだ。
そこはもうほとんど誰も立ち寄らない場所…クルークでさえも立ち入らない場所…
歴史を感じさせる石造りの建物の前に、クルークは見上げるように立っている。
『そんなはずはない』と思っただけだったのに、まるで『誰かに導かれるように』やって来たのだ。
「そこにいるのか…?」
思わずこぼれた疑問の言葉。
それに本の中にいる紅いタマシイが答える。
(私は感じる。)
「え!?」
思わず驚きを隠すことができなかった。
同じ存在であるようなタマシイだから間違いと思うけど…
だがいても経ってもいられなくなって、駆け足で中に侵入した。
アルカ遺跡の中へ。
「シグ!!」
クルークは叫んだ。
呼び声が空しく広間の中で幾度も響き、こだまする。
人の気配なんてどこにも感じない。
「なんだよ…誰もいないじゃないか…」
(いや、いる…だが私はいつ貴様の求める者だと言った?)
「…!キミ!まさかまたボクに乗っ取ろうと…」
(何を言う…何かがいるのは事実だ。貴様が色々早とちりしただけだろう?)
紅いタマシイの言葉に落胆したが、ではここに何がいる?
感じることのできない存在感に恐怖し、嫌でも聞くしかない自分の心臓の鼓動。
立ち止まっているはずなのに、誰かの足音。
「あれ?」
他者の声に反応し、声のするほうに。
そこにはさっきまでの展開をさらに裏切る。
さんざん人に迷惑をかけておいて、そこでひょっこりと現れたのだ。
「シグ!やっぱりシグじゃないか!今までどうしていたんだよ!どうしてここにいるんだよ!」
「待ってよ、そんなにいっぺんにこたえられないよ…」
じりじりと詰め寄り、質問攻めをするクルークに対してシグは落ち着いて答える。
「ここが気になってね?ついつい何日も入り浸っていたの。なんかここ興味深くて。」
「ふん。キミにこんなところが理解できると思っているのかい?テストで0点取るようなムシ好きなキミが…」
さあ早く帰ってみんなに謝るんだって、背を向けて歩き出す。
そこでシグに腕をつかまれ進行を阻止される。
背筋がぞくっとする。
「せっかく待っていたのに…何もしないで帰るなんて…」
ぼんやりしているシグの声じゃないように聞こえる。
少しだけ元気がある。
「キミを待っていたんだよ?なのに頭の悪いような言い方して帰そうとするなんて…」
怖くてシグのほうに目線を向けられない。そこにいるのはシグじゃないような気がして。
そのつかまれた手を振りほどこうにも、体が硬直して離せない。
「来てくれたんだからその本、借りようとしたのに…」
その言葉を聞いた瞬間に、クルークに別のスイッチが入る。
明らかシグの発するセリフではない上に、何か大きなことを企んでいるに違いないと。
思いっきり手を振りほどき、勢いよくシグのほうに向き合う。
怪しい黒い影がシグの背後にあるのを感じる。
シグではなく、その背後にあるような影をクルークは鋭い目線で睨みつける。
「どうしてそんなに睨みつけるの?ただ興味あるだけなのに」
「『シグ』がボクの本に興味あるはずがないだろう?そして本になんて大して興味なんてないくせに」
びしっとシグを指してわかりきったように言い放つ。
シグは首をかしげて「何のこと?」とは返したがその裏にはまたどう欺くか考えている影が。
「そもそもヘンにしゃべるから正体がばればれなんだよね?アルルがだめなら今度はシグかい?
どうせこのグレートな僕によって計画とかそういうのが台無しになるんだから大人しくシグを返してほしいんだ」
「計画した覚えはないけど…グレートなキミが僕を阻止できるのかい?この体の力がとてもすごいことに気が付いたから、
キミで試してみるよ!」
影が濃くなった。シグ自身も影にのまれたように闇に蝕まれる。
くろいシグは片手を天に掲げた後に、暗い青色をした光が無数にクルークの周りに降り注ぐ。