「子供が『ほぼメカライオン』に襲われてるんだ!早く助けないと!!」
「だめです!暴れ始めました!!」
子供…?まさか…!!
不安が頭によぎって、ブタマスクたちを乱暴にどかしてまでネスたちはその事件の中心に飛びつく。
そこには殆ど機械化されたライオンがこちらを睨みつけて威嚇している。
その向こうにはジェフが顔を真っ青にして息を荒くして武器を構えていた。
しかしネスたちが視界に入って、少し落ち着きを取り戻した。
「ジェフ!大丈夫かい!?」
「…なんとか…一度両腕を不自由にされたけど、何とか蹴り飛ばしたよ…」
周りのブタマスクたちも、彼らの言うほぼメカライオンに怯えてても足も出てない様子。
それでよくキマイラたちを作れたものだとネスは呆れる。
どちらにしろ、ブタマスクたちも怯えるくらいのキマイラだから、なんとかおとなしくさせて再びおサルさん探しに出るしかない。
それにしても、このほぼメカライオン、さっきからジェフばかり狙っている気がする。
ジェフは無鉄砲だから、下手したらこんなところでバズーカーを放つ可能性が高い。
これはもうおサルさんどころではない話になりかねない。
「あ、あの…あの人は機械の「におい」がするからじゃないでしょうか?」
ブタマスクがこちらに近寄ってきた。
確かにジェフは色んな機械を持っている。
でもそれが一体何の関係があるのかが分からない。
「あのライオンは殆ど機械ですから、オイルに漬け込んだ生肉しか食べないんです。」
要するに、ジェフから機械のにおいがして、お腹でも空いたから食べたいと思っているからなんだろうか。
このままじゃジェフが囮になりっぱなしだからネスは早急にそのオイルに漬け込んだ生肉を持ってくるようにと頼んだ。
するとまるで自分の言いなりのように潔い返事をして駆け込んで行った。
ほぼメカライオンはジェフしか視界に入っていないようだ。
ジェフは果敢に挑もうとしているがさっきから恐怖で攻撃が当たっていなくて相手に振り回されているばかり。
お互いが駆け回っているからブタマスクたちも応戦しようにもジェフに当たりそうで手が出せない。
ネスはこのままではよくないとジェフにシールドをかける援護をする。
その時にちょうどほぼメカライオンの攻撃を弾いて、ほぼメカライオンは怯む。
そしてジェフとの間に、生肉が投げ込まれた。
相当空腹だったのか、他のものに見向きもせず、目の前のご馳走にかぶりついた。
「いまだ!」
隙だらけのうちに、ブタマスク総勢でほぼメカライオンに飛びついて、
何をしていたのかは確認できなかったが、電流が走る音がした。
姿を確認するときにはさっきの威勢が分からないほどおとなしくなってブタマスクたちに保護された。
「お怪我はございませんか?それもそうと、あなた方がいなければ捕まえられなかったでしょう!感謝するであります!」
怪我は大丈夫と伝えると、ブタマスクの一人は敬礼をして足早に去っていった。
「さて…脅威は去ったし…改めてもう一度探そう…。あ、そういえばサルがいたんだよ!」
ジェフは身だしなみを整えて報告をすると、ネスもリュカも一気に食いついた。
しかし逃げられてから大分経つ。
そのことも踏まえて話すと二人は落ち込む。
「しかたないよ。振り出しに戻ったけど、もう一度探すしかない。」
気をなくしたように肩を落とす一行。
しかし仕方のないこと。こんな奇妙な研究所に至ってごく普通のおサルさん。
怯えて逃げるのも仕方ない。
「なんか足音しません?」
進もうとしたところでリュカが足音に気が付く。
さっきまで何事もなかったようなのに、気づいてから急に空気が張り詰める。
重たい足音。近づくようで遠ざかる。
一同は思わず固唾を呑む。