クルシグ
ほのぼの?を目指してみた
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「つまりこの位置に赤ぷよがあることで連鎖が成立して…」
放課後の静まり返った教室。
あいにく太陽は雲に覆われて姿は見せず、雨が降る。
「…シグ、聞いてる?」
宿題がわからないとシグがクルークに甘えて来たのに、当の本人は窓の外を見て上の空。
「…傘…もってない…」
「今そんなこといいだろ?終わってる頃には止むだろうし…」
関係ない発言に少々いらつきを感じ、それでもシグをこちらに向けようと努力する。
「…赤ぷよがここにあるから…次の青ぷよも連鎖になるの?」
ようやくノートに目を向けたシグは、しっかりとクルークの言ってることを理解していて正直クルークは目を丸くして驚く。
そしてクルークも俄然やる気が出る。
「そう。だからこの形を使えばわざわざ折り返しを組まなくても6連鎖できるし、折り返しを組めばもっと大連鎖を起こすことが出来る。」
理解してくれたのも嬉しい。何気に話を聞いていたのも嬉しい。
クルークの心の中にはそれらよりも『自分を頼ってくれている』事が何よりも喜ばしく感じている。
シグがスムーズに理解したから、案外早く宿題のお手伝いが終わった。
「…雨…止まないね…」
さっきみたいにシグは窓の外を見てため息一つ。
クルークも自分のノートをきちんと揃えるように机をトントン鳴らしてそうだねと低く返した。
「…シグもちゃんとわかってるじゃないか…これならしっかり授業を聞いて理解すればいいのに…」
普段の彼を見ているから、頬杖をついてボソリとつぶやく。
「…だって…寝たいしわからないし…」
外への視線を離さないままいつもの調子で返す。
「…ま、でもそうしてボクを頼ってくれるのはありがたいけどね。」
クルークもまたいつもの厭味な調子で余計な一言を加えた。
「…だけどボクだってやりたい事はたくさんあって、できればキミの為に時間を使いたくないんだけどね…」
やれやれと小さくため息をこぼしてそう言い放つ。そして続ける。
「シグだってわかってるならいいだろ?しっかり聞いていればいいじゃないか…がんばって起きていてさ。」
「…でも…わかんないし…めがねに教わりたいし…」
シグの意外な一言にまたしても目を丸くする。
「だってそうでもしないとめがねと一緒にいられない…めがね、すぐどっか行くんだもん…だからこうして頼りたいの…」
シグがようやくこちらに視線を合わせて微笑む。
その発言にクルークは複雑になる。
クルークだってシグと一緒にいたってまんざら悪くないと思っているし、寧ろ心地好かったりもする。
「雨、止んだ。」
「ホントだ。」
うっすらと雲が切れていき、わずかばかり日が差し込んだ。
「シグ、一緒に帰ろうか。」
「うん!やったー、めがねと一緒に帰れるー」
子供みたいなはしゃぎぶりに、クルークはくすりと笑って、二人は仲良く学校をあとにした。