リュカにもきっと過酷な運命が待っている。
ネスやジェフは、その運命を果たす使命に居合わせるんだ。
周りは崖が聳え立っていて、だけど木々が生い茂って自然に溢れている。
鳥の囀(さえず)りが心地よく聞こえる。
だけどどうもこの場所は見覚えがあった。
「あれ、ネス。」
「!…ジェフ?」
突然そこにジェフが現れた。
どうしてこんなところにいるんだろうと自分をことごとく疑う。
「ジェフ、どうしてここに?スカイウォーカーは??」
「スカイウォーカーならいつもの場所に…だってここはあの森を抜けたところだよ?」
見たことあるのはそのせいだったのかとネスはがっくりした。
ジェフが遠くにまでわざわざ歩き回ったのかと思ったのだ。
その時、鳥達が一斉に飛び立ち、地響きが起こった。
「なんだ!?地震!?」
バランスが崩れるくらいの揺れに、ネスはエオリアの家の扉を開けてみんなの安否を確認する。
ゆれが治まると正面にいるピンク色のアフロの人、おそらくエオリアの身体が透き通っている。
リュカはネスの存在に気づき、大丈夫でしたか?!と問う。
しかしネスの返事を聞く前に、イオニアがエオリアの異変に気づく。
「あーらぁ!エオリアちゃん!?身体が身体が身体が消えかかってるわよーっ!?」
地震が起き、消えていく身体。
きっと何かが関係するんだ。
「私が今までに護っていたオソヘ城のハリが誰かに抜かれたということ…
ハリを抜ける誰かが…とうとう現れたのね…」
エオリアが自分の身体を見つめ、切なげに、だけど誇らしげにつぶやく。
部屋の中心に置かれたテーブルが浮き上がり、そこには下へ降りるためのハシゴが現れる。
「この地下通路でオソヘ城の中庭に行けるわ。
本当にハリが抜かれているなら私はもう消えてしまうけど…知っておいたほうがいい。
闇の心を持つ者が抜いたのか、光の心を持つものが抜いたのか…」
もう殆ど背景と同化している。
存在が消えてしまうというのに、思い残すことのない笑顔。
本当に何者なんだろう。
『この時』を待っていたかのように。
「どちらかによって、世界の運命は全く変わってしまうわ。
ああ、今日が私の消える日だったのね…
イオニアちゃん、何とかちゃん、それとワンちゃん、バイビ〜」
エオリアは光となって消えてしまった。
その人のいたところには、エオリアのものであろうヒゲ剃りと口紅が。
「エオリアちゃん…。さっぱりした人だったわ…。だから気が合うの。私たち。
…さっ!ここの地下通路からオソヘ城の中庭へ行きましょう!」
イオニアたちはさっさとハシゴを降りていく。
「もしあのハリが抜いた人が闇の心を持っているならば、きっとポーキーが目をつけるに違いないんじゃないかな。」
ジェフはそう思いつめて発言する。
世界を変えるような計画なら、きっと動き出すに違いない。
もう彼はこの時代にいると確信したから。
いとも簡単に世界を変えようとできるなら、彼しかいないのだから…
「そうだね…闇の心を持っていても光の心を持っていても、世界が変わるならポーキーはその人を利用するつもりだろうし…」
「そうとなれば、リュカだって危ないよ!もしポーキーの配下になってしまったら…」
「それはないよ。リュカはそんな事しない。」
ネスはここぞとばかりにはっきりと言い張った。
リュカの優しさは知っている。
あの時のヨーヨーから始まった話から、ずっとそう思っていたから。
「リュカはこんな世界を望んじゃいないよ。他人の僕でも分かる。
そうじゃなかったら、あの雷を落とす塔なんて乗り込みに行かないし、あのブタマスクたちを敵になんて回さない!」
ネスの気迫に、ジェフはたじたじだった。
「い、いや…僕もそんな事ないとは思うよ…でもポーキーならどんな手を使ってでもやりかねないってことだよ。」
ネスは今までの旅のことを思い出してみた。
確かに色んな手を使っていろいろな人を操ってきた。
マニマニの悪魔とか、ハッピーハッピー教を創設したり。
「そうだね…なら、リュカたちを追わなきゃ。
きっとハリとかそういう物の何かを知ることができるだろうし…」
そうと決めて、ネスとジェフはハシゴを降りていく。
そこには長く続く地下通路が眼前に広がった。