轟音がして、ただでさえ耳が壊れてもおかしくないような大きな音だって言うのに、
なぜかもう一度聞こえた。
そして地面が揺れ始め、上から瓦礫が次々と降ってくる。
あまりの出来事にリュカは足がすくんで身動きが取れない。
このままじゃまずいとダスターは二人と一匹を連れて下へ逃げ込んだ。
下にはヨクバがいるのは知ってるが、今は命を守るのが一番大事だと判断した。
ずいぶんと床が頑丈にできていたせいなのか、
それとも大して床に負担がかからないくらいの瓦礫で済んだのか、下はわりと安全ではあった。
しかしヨクバが今頃現れ、更にもう一度上に逃げ出す。
幸い上に上がるためのスペースはあったため、瓦礫でも避けて見つかるまでの時間稼ぎができる。
その間に逃げる作戦とかを思いつくくらいはできるはず。
何があったのかというと、スカイウォーカーの外でネスがいたため、あの塔の雷を食らうことがなかった。
食らうどころか、雷はネスすら触れない。
なぜなら帽子にあの「フランクリンバッジ」をつけていたから、雷を通すことなく跳ね返した。
ネスはその瞬間を見逃したりはしなかった。
あんな巨大なものは今までに破壊したことはなかった。
砲台は雷を食らい、壮大な爆発を起こしてその瓦礫のほとんどが下に落下して行った。
内装が見えるくらいに外装がはがれている。
火の粉が辺りを舞って、砲台があったところは炎がちらほらと見える。
「ネス!ほら、君の作戦は成功したんだ!早く戻って!」
ジェフはドアから手を伸ばし、ネスを引き戻す。
作戦は成功したのに、どうもネスの表情が浮かない。
「どうしたの?」
「確かに塔は壊れた…でも…リュカたちが…」
「……大丈夫さ…他に仲間がいたんだろう?
それに…この爆発で上手く免れるよ…そう信じよう…」
「大事なシステムをよくもやってくれたな…!」
ついにヨクバたちに追い詰められた。
もう逃げる道なんて落下しかない。
ここでおとなしく捕まるしかないのだろうか…
そこで、ヨクバの懐にあるトランシーバーから音が鳴る。
それに反応してヨクバはそこから聞こえる声の主と会話を始める。
「さすが…キングP様はやることが違うな…」
ヨクバが不敵に笑いながら、トランシーバーをしまいこむ。
その表情を崩さないままこちらを睨み、続ける。
「この塔ごと、お前らを始末するつもりだ…
この塔はもう使い物にならん…」
背後の外から大きな影が入り込む。
そこには巨大な飛行物体が留まっている。
ヨクバがリュカたちに歩み寄り、好物のバナナを口にする。そしてその場に捨てる。
「あ、あれは!?」
自分達の乗るスカイウォーカーよりもはるかに大きい飛行物体が目の前に現れ、思わず口にする。
飛行物体は破壊された塔の近くに近寄り、再び止まる。
そうだ…きっとリュカたちも捕まってしまったんだと二人はそう思い込む。
飛行物体から縄はしごが垂れて、そこから次々とブタマスクたちが乗り込んでいくのは見えた。
ジェフはネスの表情を伺うと、何もできない悔しさに歯がゆさを感じている。
別の格好をした男が縄はしごに手をかけた瞬間、足を滑らせ、無残にも落下していくのが確認できた。
それと同時に、黄色いなにかも同時に空中を舞っている…あれは…バナナの皮?
すこしずつ飛行物体が塔から離れる。
しかし塔にはリュカたちが取り残されてるのだ。
「…!」
ネスは塔の下のほうから爆発が起こっているのが確認できた。
そして叫ぶ。
「リュカ達ごと、この塔を破壊するつもりだ!!」
ジェフも驚き、スカイウォーカーを動かす。
リュカ達を見守るネスは、不安でいっぱいだった。
リュカと一緒にいた男の人が、赤い鞭のようなものを取り出し、縄はしごに先を投げる。
上手くこの塔から逃げるつもりだ。
その鞭を紐にし、男の人がそれに捕まって塔から身を投げ出し、リュカたちも同じように男の人にしがみつく。
だけどどうやっても危険極まりない。
助かったにしてもあの飛行物体はブタマスクたちのもの。
助からなかったら…助からないの文字通りだ。
「ジェフ!早く!リュカたちを助けなきゃ!!」
「でも!近づいたら近づいたらで危ないんだ!機体の風で吹き飛ばしてしまう!」
「だけど…そしたらリュカたちは…!」
ネスがドアを開けて、届かないリュカたちのもとに、必死に手を伸ばす。
だかそこで、赤い紐のようなものが、縄はしごから離れ、リュカたちは空へと放り込まれた。
ネスは悲痛な叫びを上げる。