森に戻ってから、ずっとネスは落ち込んだままだった。
確かに目の前で助けたい人物達が助からなかったんだ。

ネスが何かをつぶやいている。


「…ぜったいに…ポーキーを連れ戻さないとね…」


強い覚悟だった。
人間の身に戻れなくなってもギーグを倒さなきゃいけない使命を自分で受け入れた時と同じ。


「ジェフはどうするの?」
「僕は…こいつの整備を…」
「そう…なら…僕は手がかりを探しに村に戻るね?」


さっきの暗い表情とは裏腹に笑顔を見せてる。
ジェフに伝えたいことを伝えて、さっさと森を去る。

ネスが森を通り、村に出た。
いつものようにヨクバが演説をして、家や宿泊施設、店、向こうの路地から人々が行き来している。
しかし心なしか人が少なくなっているように感じる。
もちろんコーバで働きに行ったりもしてるけど、でもいつもいる人が見かけない。
電車とかを利用してどこか遠出でもしているのかわからない。

クロスロード駅と呼ばれたところに足を運び、掲示板を眺めている。
ちょうど視野に二人の老人がせっせとわらを崖の出っ張ったところにこれでもかと思うくらいに積んでいた。


「あ、あの…一体何をしてるんです?」
「おお!旅の方!夢でリュカの母方にここにわらを積むようにと夢でそう私とウエスに伝えていたのじゃよ!」


ネスやジェフはもう旅の方で定着して、村になじんでいる。
それよりもリュカのお母さんに夢で?何のためにこのわらを?


「アレック!何をサボっておる!早く次から次へと積まねばならんのだぞ!」


ウエスと呼ばれた老人が活を入れる。
そうして次々とわらを積むのだ。


「あ!?」


ネスはわらの山を見上げていると、上から何かが落ちていくのが見えた。
上手い具合にわらの山に落ち、落下の衝撃を吸収し、そのままネスのほうに落ちる。
ネスは上手にキャッチする。人の温もりを感じ、眩しい金髪が目に映る。


「リュカ!!」


リュカがここにいたことに、驚きを隠せずにはいられなかった。
ウエスもアレックもリュカがそこにいることに安心する。
だがリュカには意識がなかった。


「リュカ!大丈夫!?しっかりして!僕だよ!ネスだよ!!」


身体を揺さぶって必死にリュカを呼び戻す。
パニック状態に陥るネスに対し、ウエスはリュカの様子をしっかりと診る。


「大丈夫じゃ。リュカは気を失っているだけじゃ。しばらく安静にさせよう。」












「しかし旅の方…ネスと申したな?あの時にリュカとボニーとともにトンネルに入ったのを見たが…」


ウエスがリュカの眠るベットのそばにある椅子に腰かける。
ネスはリュカを見つめ、じっと心配しながら答える。


「はい、どうも探している人を探しに行くと言っていたので…」
「そうじゃ、それはダスターというあほでな、本当は場所をなんとか特定してはいたのじゃが、
わしはちとブタマスクたちに目を付けられていてな、動けなかったのじゃ。
だからリュカたちに頼んだのじゃが…」


まさかこんな目に遭ってしまうとは…とウエスは頭を抱えて嘆く。
自分のせいでこんな事になってしまったとひどく悔やんでいた。


「しかしウエス…わしらはもう年なんじゃ…ウエスがむかってどこかで倒れてしまっては…
それこそリュカたちに申し訳が立たんだろ…」


アレックが横槍に話す。
同じく無事であったボニーの頭を優しくなでている。


「あの…そのダスターって一体…どういった人なんです?」


ネスがその人について質問する。
もしかしたら、リュカと離れた際に見た人かもしれないと…


「ああ…茶色い髪をして、青い服を着ていたのじゃが…」
「あ…それならリュカと赤い髪の女の人と一緒にいました!」
「本当か?!よかった…姫も無事であったか…!」


『その時』無事であった二人の安否に安心していた。
しかし、その後のいきさつは、ここにいるネスにしか分からなかった。
ネスがその二人の後を話そうとしたときに、リュカが目を覚ましたのだ。


「リュカ!」
「ん…あれ…ネスさん?どうして…僕は…」
「リュカ!ウエスさんとアレックさんが一生懸命リュカを助けようとわらを山積みにしてたんだよ!」


頭がまだ混乱しているのか、リュカにはどうしてそういう所までたどり着いたのか理解できなかった。


「リュカ…姫とあのあほは…」


見かけないあの二人の行方について、リュカは事情を話した。
そしてウエスは再び落ち込みを見せる。


「でも!きっと無事だと僕は信じます!きっとクラブにいた時みたいに元気にしてますよ!」


リュカが必死に励ます。
あきらめないその気持ちにウエスも元気を取り戻す。














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