Clap
拍手御礼。現在一つです。
(アニーの場合)
ーーゼロスさんとクラトスさんですか?
あの二人って……やっぱり仲が悪いんでしょうか…。
この間ユージーンも一緒に四人で依頼を受けに行ったんですが、そのときに私とクラトスさんが怪我を負ってしまったんです。レベルからしてもそこまで強い敵ではなかったんですが、私もクラトスさんもTPを使い切ってしまっていて……。そこでゼロスさんが私にファーストエイドを掛けてくれたんです。ですが私だけだったんです。彼には何も……。
ユージーンは回復魔法を扱えませんし、PT内で今唯一使えるのがゼロスさんだけだったんですが……。
「ーーあの、ゼロスさん。回復させてもらっていておこがましいかもしれないんですが…」
「え〜?なになにどったの〜?おこがましいなんてそんなのあり得ないって!あ、もしかしてまだ傷が癒えてなかったとか?」
「あ、いいえ!ありがとうございました。私は大丈夫です。……ですが、あの……クラトスさんには掛けないんですか…?」
「クラトス?」
そこでまるで初めてクラトスさんも傷を負ったことに気付いたような素振りを見せました。……多分わざとだと思います。本当はわかっていたと思います…多分。
そしてクラトスさんを横目で見るとすぐに私の方へ戻して、「アイツは大丈夫っしょ。アニーちゃんみたいに女の子じゃないし」
「で、でも!些細な傷でも早く治療しないと傷口が化膿してしまいます……」
「ーーアニー」
今まで静かにしていたクラトスさんが私の肩を軽く叩き、首を横に振ったんです。
「心配してくれてありがとう。だが、私なら平気だ」
ーーそのとき初めて見ました。クラトスさんが優しく温かく微笑んでいたのを。
しかしその直後に殺気と言うんでしょうか…、とにかく凄い量の冷気を背後から感じました。振り返るとゼロスさんが今までに見たことがないかのような恐ろしい表情でクラトスさんを睨んでいたんです。いつも笑っている人があんな顔になると本当に背筋が凍りそうで……思い出すだけで寒気が…。
ーーと、とにかく。ゼロスさんとクラトスさんは私から見てもやっぱり仲が良くないように思えます……。
*
(ユーリの場合)
ーーゼロスとクラトス?
あー、あれは仲が悪いんだろうなあ。けど、お互いが嫌っているってわけでもなさそうだぜ?ありゃあ、ゼロスが一方的に嫌ってるだけだろ。クラトスなんて軽く躱してるし。…いや、相手にもして無ぇな。とにかく、ゼロスはクラトスのことを気に入ってない。それだけだろ、理由なんて。
ーーは?何でそう思うんだって?
んなの簡単なことじゃねぇか。ステータスが似過ぎなんだよ、ステータスが。魔法剣士ってのも同じだし、取得してる技だって大体同じだろ?どっちも前衛にも後衛にもなれる。……けど、まあ、経験と知性はクラトスの方が断然上だから難易度が高い依頼は全部クラトスの方に声が掛かることが多いだろ。この間だって俺がクラトスを誘っただけでスゲー睨まれたぞ。
……ま、そういうのも含めて気に入らねぇんじゃねぇの?だから俺らからしたら二人いっぺんにはよっぽどのことがない限り、PTに入れることはない。こっちまでギスギスしちまうからよ。
ーークラトスのことどう思ってるって?
なんだよ急に。俺がクラトスをどう思うかなんて今は関係無いだろ。あ?関係あるって……まあ、いいや。
クラトス…クラトスねぇ……。まあ、確かに最初は堅苦しそうなヤツだなぁって思ったよ。生き辛そうな性格だなーって。けど、依頼を何個か一緒にやっていくうちに変なヤツだって印象が変わったわ。いやいや、ふざけてるわけじゃねぇよ。ーー変っつーか、抜けてるというか。……そうそう、天然ってやつだな。あと恐ろしくマイペース。俺より年上なのは分かってんだけど世話を焼きたくなるっていうか。父性が揺すぶられるっつーか。
ーークラトスに世話を焼くのは俺の役目……って、おい!何処に行くんだよ!……ったく、話振るだけ振っといて一体何だったんだよ……ロイドのヤツ。
*
(ロイドの場合)
「ーーゼロス」
俺たちに割り当てられた部屋へ戻り、外をぼんやりと眺めていたゼロスの頭を軽く叩く。痛っ、と言って叩かれた場所を摩りながら俺の方へと振り向いた。ニヤニヤした顔をしやがって。
「どーしたのよ、ハニー」
「どーしたもこーしたも無ぇよ。……みんな勘違いしてるぞ。お前とクラトスのこと」
ついさっき。たまたまホームに居たアニーとユーリになんとなくゼロスとクラトスのことを訊いてみた。そしたら案の定二人は仲が悪いって思われてて、あーあってやっぱりなって思ったんだよ。
確かに二人は仲が悪いよ。ーー表面上は。
二人の本当の関係は俺たちしか知らない。別にギスギスなんてしてない。じゃなきゃ、コレットと俺を交えてどんじゃらなんてやんないだろ。
「ふーん。ーーま、いいんじゃねぇの?」
「いいんじゃねぇのって……ま、いいや。クラトスも別に気にして無いみたいだし」
「それよりロイドくんよぉ、天使さまとプレセアちゃん呼んで依頼行こーぜ」
「いいけど…何でプレセアなんだ?いつもならコレットとかしいなとかなのに」
するとゼロスは外を指差した。
今は地上に停泊していたから行き交う人々が見える。その中にプレセアとクラトスが仲よさ気に話しているのが見えた。お互いに顔の筋肉が働いてないって思われてるから、これ他のメンバーが見たら驚くだろうな。
「最近プレセアちゃんと天使さま、仲良くなったみたいでよぉ。今みたいによく二人でいるのを見かけるのよ」
「へぇ…二人って雰囲気似てるし、なんか親子みたいだよなぁ」
「……それ、ロイドくんが言う?」
小さい女の子を優しく見守るお父さんみたいでさ。
「ーーでも、クラトスは俺の父さんだから。例えプレセアでも渡さない」
勿論ゼロス。お前にも、な。
ーーへいへい。肝に銘じておきますよ。
*
(プレセアの場合)
ーーゼロスくんとクラトスさん、ですか?
仲、良いですよね…少し、羨ましい、です。私も最近、やっとクラトスさんと二人きりで話せるようになって……クラトスさんって笑うととても温かいんです。優しくて…温かくて……そう、そうです。
ーーパパ、みたいなんです。……こんなこと言ったらクラトスさんが困ってしまうかもしれませんが…。
……ロイドさんとクラトスさんは互いにとてもーーとても大切で、二度と失ってはいけない…そんなひとだと思っているんです。詳しいことは私たちの秘密なので言えませんが、二人の関係は一言で表せなくて、でも一言で表せられる。そんな関係なんです。
…以前、クラトスさんはその関係をロイドさんと再構築する資格が無いと言っていました。自分ではなく、もっと相応しいひとがいる。そう、言っていました。
ーーですが。ロイドさんにとっては唯一無二の存在なんです。代わりはいないんです。今まで気付かなかった。気付けなかった。知らなかった。真実を知らなかった。ーーただ、それだけなんです。それを知って、やっとロイドさんは自分の存在を知ることができたんです。
……私の止まっていた時が動き始めたのと同じように。ロイドさんの止まっていた過去が動き始めたんです。
…クラトスさんは真面目なひとです。ロイドさんが受け入れても彼は受け入れることが暫くできませんでした。ーー怖くて。嬉しくて。もう一度失うことを恐れて。
ーーそこを後押ししたのがゼロスくんでした。
ゼロスくんはクラトスさんをロイドさんよりも知っていました。ーー彼の葛藤に誰よりも気付き、傍にいました。私たちが彼のことを敵だと思い込んでいた、そのときですらも。
『ーー“今”、アンタは何をしたいんだ?
“今”、アンタは何を救いたいんだ?
……“今”、アンタが一番したいことは何だ?』
『…いま、私がしたいこと……』
『そうだ。アンタは何の為に弟子を裏切り、息子を裏切った?
ーー自分の自己満足の為だけか?違うだろ。アイツの……息子が羽ばたける世界を創る為に裏切ったんだろーが』
『…だが…そうだとしても、結局は私のただの自己満足に過ぎな』
『それでいいだろ』
『…?』
『ーーそれで十分だろ。
ミトスを救って二つの世界を一つにして息子の将来も救う。そんな欲張りなことできやしねぇよ。そんなこと矮小な人間にはできやしねぇ。それこそ自己満足ってモンだよ。
……最愛の妻との間に生まれた息子の未来を守る。ーーそれが父親ってモンでしょーが』
『ーー!』
ーーだから羨ましいんです。
あのときはきっとクラトスさんの悩みを一番に解決するのはゼロスくんだったと思います。私たちが…ロイドさんすらも気付くことができなかったから。
今はロイドさんもクラトスさんのことを知って傍にいることができているから…ロイドさんとゼロスくんのどちらでもすぐに気付くことができるんじゃないでしょうか。
ーーえ?それじゃあ、ゼロスくんとクラトスさんの仲が良いことの説明になってない、ですか?
お互いが信頼しあっている…んだと思います。お互いがお互いをしっかりと見ているんだと思います。…そうでなければ、あんな台詞は言えませんから。
「プレセアちゃーん、はっけーん」
あ、ゼロスくん。どうしたんですか?
「俺さまとロイドくんとアイツと一緒に依頼行こうぜぇ。俺さま、面白い依頼見つけてさ〜」
…面白い依頼、ですか?
「オタオタを200匹討伐するんだぜ。雑魚も数が多くなりゃ強敵になるしな。プレセアちゃんの火力が必要なのよ」
分かりました。準備してきます。
「おう!サンキューだぜ」
あ、実はーーゼロスくんって嫉妬深いんです。意外、ですよね。女性には色々と手を出すのに。
……本命には一途なんですね、きっと。
それじゃあ、失礼します。
*
(ーーアイツが作る傷も悲しみも)
(俺が…俺たちが癒せばいい)
(ーー俺たちだけで十分だ)
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