夕方、國春は借金回収に出かけていた。
今からいく奴は借金常習犯。
借りては返しまた借りては返しの繰り返し。
………が、今回は少し状況が違っていた。
先月の返済を延滞していたのだ。
正直、一抹の不安を感じる。
とりあえず、アイツが必ずいるであろう時間帯にとあるアパートへ向かった。
案の定、あいつの部屋は明かりがついている。

「よぉ千夏ちゃん。今月の回収に来てやった……」

気配が突然消えた。

だが、こういう時のために合い鍵を使い手早く中に入る。
部屋を見渡すと、ベッドに不自然な膨らみ。

「かくれんぼなんてつまんねーことしてんじゃねぇよ。」

足で布団を蹴飛ばす。
が、人はいない。
ただのクッションのようだ。

ガチャッ!

「あ!しまった!!」

「ったく…余計な手間使わせるんじゃねーよ。」

「くっそ…!チェーンかけるとか卑怯すぎる…!!」

ため息をつきながら、玄関をみる國春。
そこにはドアを開け、逃げようとしていたスウェット姿の女性がいた。

「自宅にいるってバレバレなのに隠れようとするお前に言われたくねーな。ほら、早く今月分だせ。今日給料日だろ」

「ていうかあの布団トリックひっかかった?ひっかかった??」

「今月分、利子倍にしようか「すみませんすみません」…ほれ、はやく出せ」

「アリマセン」

「は?」

「スミマセン…アリマセン」

「いや、おかしいだろ、今日給料日だから。」

「いやー……引き落としされてまして……通帳に記帳したら……」

怖ず怖ずと國春に通帳を見せる

「………お前…うちだけじゃなくて余所にも借りてたのか…」

「あ…あはっ☆」

うちはまだ自動引き落とし型を導入していないから毎月こうして現金回収に行くわけだが。
わけだが。

「………………てめぇ、マジで臓器売れ。」

どういうことだ。
通帳には確かに給料が振り込まれた形跡がある、が、その後一気に引き落とされているではないか。
ガス電気水道、カルガモクレジット、ラクラククレジット………

「………俺達の取り立てが甘かったみたいだな。」

油断していた。
こいつはこんなナリをしているが看護師。
給料は十分ある。
だから一回だけなら見逃しても大丈夫かと、先月金を取り立てなかったらこの様だ。

「ちっ…バカは借りたら返すっていう常識を頭ん中に入れとくだけでいいんだよ!!」

「ひいっ!」

「よりによって余所の会社に借りるたぁどういうことだ?」

「いや〜…だってもう貸してくれないから…」

「お前が先月踏み倒さなかったら貸したよ!!!」

「だって!だってだって!先月負けまくったもん!!!」

「知るか!!」

「うー………」

「いいかてめぇ。今すぐ副業始めろ。」

「ふ…副業?」

「バイトしろ。」

「いやでも看護師ってシフト制だから時間帯が不規則で………」

「24時間開いてるコンビニがあるだろーが。そこで空いてる時間全部働け。」

「いやでも副業は」

「いやぁよかったな千夏ちゃん。俺の知り合いが店長してるコンビニが俺の会社近くにあるんだよ。今すぐ連絡いれるから着替えろ、そして働け。」

「は……はい………」




敵前逃亡の心得
生半可な覚悟でやるべきでない





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