留置所から帰ると、満足そうにネウロは笑っていた
「何?」
「いつも、に戻りつつあるな。」
「………ええ。でもまだわからない」
「そうか。とりあえず、もう我が輩がいない間、護衛を頼む必要はなさそうだ。」
「えぇ。今までありがとう。」
「気にするな。一週間後だったな。結論を出す日は。」
「!?何で知って…!!」
「貴様に魔界の盗聴器をつけていた。」
「………………成る程」
クラウンに会う前、武器や盗聴器類は検査されたが何もでなかった。
人間が作り出した機械、は。
「色々考えるがいい。」
「ええ」
◇41◇
夜、バーに行ってお酒を飲んだ。
ここは國春と一度だけ飲んだ場所
昔を、本当の昔を思い出し、懐かしみたかった。
今日はそんな気分。
あの時頼んだマティーニを再び頼み、そして隣にxyzを置く。
あの時彼が頼んだものを。
「千夏じゃん!」
「忍!どうしてここに?」
「いやここ俺の行きつけ。最近だけどさ。」
「そう……ここ、國春と私のデート場所だったの」
「マジ?」
「唯一のね。」
「だから隣にお酒置いてたんだ…」
「ええ。このお酒知ってる?」
「いや、知らねぇ」
「xyzっていうの。このカクテルの意味、これで終わり、なのに國春ったら一番に頼んだの。」
「そうなのか?」
「ええ。xyzから始めるのが俺の主義とか言って。本当バカだわ」
「ははっ!まず社長さんがカクテルなんて洒落たもの似合うわけねーし。……でもちゃんとデートしてたんだな。」
「一回だけだけどね。カクテルが飲みたくなって、それを言ったら國春がここへ連れて来てくれたの」
「へー」
「それが、最初で最後のデート……もしかしたら國春、それをわかってxyzを頼んだのかなってさっき考えてたのだけど」
「や、意味知らなかっただけだな」
「そうね」
お互い、笑いあう
「千夏…お前どうしたんだ?」
「え?」
「過去を振り返るなんてらしくねぇって思ってさ。何かあったのか?」
「………」
「…………ま、たまには振り返るのも悪くねーか。社長の話できる奴ら、もう東京にはいないからさ」
「あぁ……あの人達全員東京離れたんだ…」
「あぁ。皆地元で再就職したって連絡きた。」
「そっか。よかったわね。」
「よかったけどちょっと寂しくてさー。あの時代の話できる機会減ったし。」
「そうね…じゃあ今日は國春について語り合いましょっか!」
「あぁ!」
xyzを挟んで、グラスを置いた二人。
xyzが少し揺れた気がした。