私のいつものお気に入りの場所であるとある廃ビルの屋上。そこから見える夕陽がとても綺麗なのだ。
ガチャリとさびついたドアをあけると先客がいた。
金髪は光り輝き、いつも彼が着ている白い服はオレンジに染まっていた。
「………久しぶり。」
「ああ…久しぶり。」
「ねえクラウン」
「何?」
「私は今の世界がつまらない。才能のない奴はみな同じ人生を歩む。そんな世界が大嫌い。」
「うん」
「そして貴方は才能がある」
「ぎゃははっ!!どんな才能だよ」
「貴方はこの世界を変えることができる才能をもっている」
「…………」
「私は貴方が羨ましい。望むままに、全てを変えられるのだから。」
しばしの沈黙。
私はどうしたのかとクラウンに近付く。
「変えられねーよ。」
「?」
「俺はアイツを逃がすことすらできなかった。」
「アイツ……?」
「俺は無力だ。仲間を護ることすらできねー」
ああやめて
「ただの人間だ。」
そんな貴方の弱音は聞きたくないの。
「クラウンは………いつものように笑っている自信家でいなきゃ気持ち悪いわ。」
「ぎゃはは……言うねぇ………」
「貴方が起こす事件は面白く、またスカッとする。」
「…………」
「今悔やんでいることもスカッとさせなさいよ。何か事件を起こして。」
「……えらい簡単に言うな………」
「貴方は不可能を可能にする、でしょ?」
「………」
「いつものように私の挑発を受けなさいよ。」
「…………」
「そして、また私を惚れさせて?」
「……はははっ……そうだな……」
クラウンは一歩進み、私のほうを向いた。
「じゃあまたお前が俺に夢中になるようにしてやるよ。」
「ええ。楽しみにしてるわ。」
「じゃーな。」
そうして白いピエロは赤いユウヒの世界に飛び込んだ。
ねぇクラウン。また惚れさせてね。
たとえ片思いとわかっていても私の世界は貴方の想いだけでダイキライからダイスキへと変わるのだから。